【英国大使館主催ビジネスフォーラム】
BBCモバイル担当者が語るTVコンテンツの利用動向
BBC フューチャーメディア&テクノロジー部 モバイル事業 ヘッドのニック・ギャロン氏 |
駐日英国大使館は、「英国モバイル・コンテンツ&スマートフォン ビジネスフォーラム ―英国からグローバル展開の機会を探る―」と題した講演イベントを開催した。
講演では、英国の放送局BBCから、フューチャーメディア&テクノロジー部 モバイル事業 ヘッドのニック・ギャロン氏が登壇し、「BBC:TV放送コンテンツのモバイルビジネス展開について」と題した講演を行った。
ギャロン氏は、テレビ放送を中心としたBBCのコンテンツをモバイルで提供するサービスを担当している。すべてのデバイスにコンテンツを届ける、という方針を掲げる一方、技術的な面では、モバイルアプリを開発するためのプログラミング言語が主に5種類あり、異なったプラットフォームが存在することで、開発コストや規模の面で「ゼロから構築するにはお金がかかる」と課題を挙げる。
同氏は、この課題を解決する方策として、最新のブラウザの規格であるHTML5への期待を語り、「新しいデバイスと、古いデバイスを結び付けられるのではないか」と、古い端末をサポートしきれないといったこれまでのアプリがかかえる問題を、ブラウザベースのHTML5で解決できるとした。
BBCでは、英国にて「iPlayer」というスマートフォン向けアプリを提供しており、過去1週間に放送されたBBCのテレビ、ラジオといった番組を視聴できる。同アプリは、提供開始直後だけでもiPhone版は12万ダウンロード、Android版が4万ダウンロードと急速に普及している様子が紹介された。なお、英国の放送局はテレビライセンスフィーと呼ばれる料金を視聴者から徴収しており、これが直接の収入源となっている。このため、同アプリは英国内のみの提供という制限があるものの、利用は無料になっている。また、3Gネットワークへの負担や品質面を考慮し、無線LAN環境のみで利用できるアプリとなっている。英国外への提供については、権利関係がクリアになれば有料で提供する意向で、日本での展開も視野に入れているという。「夏頃までにはリリースしたい」と意気込みをみせた。
同氏はまた、「ユーザーをより関わらせていく」と、テレビを見ながらスマートフォンなどを連動させるサービスを試験的に提供している事例を紹介。オーディオウォーターマークという信号を放送に組み込むことで、番組視聴中に手元のスマートフォンやタブレット型端末を連携させる試験サービスが実施された。
同氏は、2012年にロンドンオリンピックが開催されることにも触れ、デジタルコンテンツという面でもさまざまな試みがなされると予想。「パーソナル化して情報を提供するのが重要で、共有・参加しているような体験が大事だ」と、放送と連携させたコンテンツの提供を積極的に展開していく姿勢を示している。
国による、放送局の運営形態や電波行政の違い、権利関係の処理といった、英国や放送局独自の事情が色濃く反映された同氏の解説だが、BBCは、スマートフォン向けサービスをきっかけに、日本を含む各国でサービス展開を検討しているのが印象的だ。日本にとっては、大規模な映像サービスが“輸入”される形となるのも、今後のモバイル市場を象徴する事例となるかもしれない。
■プレゼンテーション資料
(太田 亮三)
2011/3/4 22:18