【MWC19 Barcelona】

OPPO担当者が語る「ロスレス10倍ズーム」と「5G」

 2月23日(現地時間)に開催されたプレスカンファレンスで、「ロスレス10倍ズーム」や「5Gスマートフォン」を発表したOPPOだが、翌24日にはそれぞれの責任者が報道陣からの質問に答え、その詳細を明かした。

ロスレス10倍ズームの仕組みは?

 各国の報道陣からの質問が集中したのが、どのような方法でロスレス10倍ズームを実現しているかということだ。ズームのユーザーインターフェイスが、スライダーを動かすと1倍から20倍までが0.1倍刻みでシームレスに切り替わるため、その技術的な背景に関心が集まった様子が伺える。

OPPOのプロダクトマネージャー、Chuck Wang氏

 プレスカンファレンスでカメラ技術の詳細を解説したプロダクトマネージャーのChuck Wang氏によると、「ロスレス」とは、「1倍から10倍まですべての焦点距離で8メガピクセルの写真を撮ることができ、高いクオリティを維持できること」を指しているという。

 「3つのカメラで、1倍から10倍までをリレーする」と述べていたとおり、各カメラの焦点距離は固定で、その間の倍率は切り出しや解像感を上げる技術を組み合わせているようだ。メインカメラは48メガピクセルのため、仕上がりを8メガピクセルに抑えれば、切り出しで拡大率を稼げる。一眼レフカメラなどに使われる望遠レンズのように、各カメラの焦点距離が光学的に変わるわけではない。

3つのカメラが自動的に切り替わっていく仕組みで、あたかもズームレンズで焦点距離を変えているかのように操作できる

 ちなみに、10倍ズーム用のテレフォトカメラには、8.1倍で切り替わる。8.1倍という表示は、35mm判換算で16mm相当のウルトラワイドカメラを基準にしているため、テレフォトカメラの画角は換算約130mm相当という計算になる。8.1倍から10倍まではデジタルズームを組み合わせているが、OPPOは上記のような理由でクオリティが十分保てていると判断しロスレスをうたっているようだ。

10倍だが、基準値はウルトラワイドカメラの16mm
8.1倍でテレフォトカメラに切り替わり、10倍まではデジタルズームを組み合わせているという

 テレフォトカメラに関しては、ペリスコープ構造やDカットデザインを採用し、15mmのサイズに抑えたという。「商用化にあたっては、カメラモジュールのダウンサイジングが必要だった」という。従来端末同様のスリムさなども求められるためで、「実装するには、すべての要素を考慮しなければならなかった」。

小型化と両立するため、ペリスコープ構造などを採用

 OPPOは、2017年のMobile World Congress(現MWC)でも5倍のズーム技術を発表していたが、これが製品に採用されることはなかった。理由の1つはユーザーの需要にこたえるためで、OPPO側の視点では、5倍ズームでは「ユーザーにとっての十分な価値を見出すことができなかった」という。技術的にも成熟しておらず、商用機への実装にはさまざまな困難もあったことも語られた。デザイン的にスリムなものが求められていたのも、採用を見送った理由だ。逆にいえば、ロスレス10倍ズームはこうした課題を解決したものといえる。

5Gがもたらす新たなアプリケーションとOPPOの5Gスマートフォン

 5Gの技術に関する質問には、標準化担当ディレクター兼標準化リサーチセンターの責任者を務めるHenry Tang氏が答えた。

5G担当のHenry Tang氏

 5Gによって何が変わるのかという質問には、「動画やAR、VR、クラウドゲーミングなど、さまざまな新サービスが生まれる。新しいIoTの可能性も広がり、経験が変わる」と回答。OPPOも、「新しいモバイルインテリジェントデバイスを開発している。モバイルフォンとは異なるもので、すぐにそれを目にすることができるようになる」という。

 プレスカンファレンスでは、5G対応スマートフォンをチラ見せしたOPPOだが、写真を見る限り、従来の端末と同じかやや大きいサイズに納まっている。この実現には、さまざまな困難があったという。たとえば、「より複雑で多くの半導体を、小型の基板の上に実装しなければならなかった」ことがその1つ。熱を拡散させる方法にも課題があり、「多くの戦いがあった」という。対応周波数帯も増えるため、干渉対策にも苦労したそうだ。

プレスカンファレンスでは、初の5Gスマートフォンが披露された

 5G対応スマートフォンの細かな仕様は明かされなかったが、「今はsub 6に対応している」といい、ミリ波には非対応の可能性がある。ミリ波は直進性が非常に強く、スマートフォンを持つ場所がアンテナをふさいでしまうと、電波を受信できなくなったり、スループットが極端に低下してしまうおそれもある。Tang氏は、モデムからアンテナデザイン、端末の素材まで「さまざまなデザイン的な考慮が必要になる」のが課題だとした。

 プレスカンファレンスにクアルコムのCristiano Amon社長が登壇したように、OPPOは同社のチップセットを採用し、5Gに対応した。Tang氏も、「期待値を超える経験を提供するため、クアルコムやメディテックとは密接に協業している」と語った。

クアルコムとは密接に連携しているという。プレスカンファレンスにもCristiano Amon社長が5GのTシャツを着て登壇した

 一方で、OPPOの競合にあたるファーウェイは、自身でモデムを含めたチップセットまで開発している。OPPOはチップセットを自社開発する可能性はあるのか。この質問についてTang氏は、「チップセットはとても複雑で、モデムは特に難しい」と述べ、自社開発の可能性を否定した。5Gに関する研究開発を強化しているOPPOだが、チップセットベンダーと連携する方針は変えていないようだ。