【IFA2015】
時計としてのデザインとさり気ないスマホ連携が魅力の「wena wrist」
(2015/9/9 12:39)
ASUSの「ZenWatch 2」や、サムスンの「Gear S2」など、スマートウォッチの発表、出展も多かったIFA。こうした端末は、スマートフォンと連携し、情報を腕のディスプレイに表示できるのが大きな特徴だ。一方で、これらとは真逆のアプローチのスマートウォッチも発表され、話題を集めた。それが、ソニーの「wena wrist」だ。
ソニーの新規事業創出プログラムから生まれたスマホ連携ウォッチ
wena wristは、ソニーが新規事業を創出するために用意した「シードアクセラレータープログラム」から生まれた商品となる。プロジェクトの代表は、入社2年目の新人、對馬哲平氏。「人々にもっと自然に、違和感なく、ウェアラブルデバイスを身に着けて欲しい」というのが、この時計のコンセプトだ。
ケースの種類は「Three Hands」と「Chronograph」の2つで、それぞれにシルバーとブラックの2色が用意される。
一見、品のいいアナログ時計に見えるwena wristだが、“スマートウォッチ”と呼ばれるゆえんは、リストバンド部分に搭載されたLEDとFeliCaチップにある。スマートフォン側に通知が届いた際に、留め金部分に仕込まれたLEDを点灯させることができるほか、おサイフケータイとして「楽天Edy」や「iD」といった各種サービスを利用可能だ。おサイフケータイには、ドコモから発売中の「おサイフケータイ ジャケット01」に採用される「おサイフリンク」の仕組みを応用しており、iPhoneから各種サービスの設定を行える。
一方で、wena wristは時計としても、本格的な作りを目指したという。ヘッド部分は、ムーブメントから外観までを、シチズンが設計、製造。デザインはソニー内部で行っているが、デザイナーには時計のデザイン経験を持つ者を起用した。時計としてのデザインに仕上がっているのも、そのためだ。
デザイナーによると、フィット感にもこだわりを持ち、ケースを囲むラグ部分にしっかりとしたアールをつけているという。一般的なスマートウォッチは、直線的な作りのものが多く、腕に着けると角が手や腕に当たってしまう。こうした部分にまで、“時計としてのこだわり”を貫いたというわけだ。
試着してみての印象は?
このwena wristをIFAのブースで試着してみたが、筆者の腕にもピタリとはまった。フィット感は非常に良好。スマートウォッチを着けたときの、収まりの悪さはどこにもない。wena wristの存在を知らない人が見たら、これがスマートフォンと連携する時計だとは気づかないだろう。そのくらい、日常生活に溶け込んだデザインを実現している。ケース部分、バンド部分、ともに質感が高く、着けたときに満足感も得られる。
對馬氏によると、時計のケース部分は交換が可能になっており、継続してバリエーションを広げていきたい構えだ。ケース部分を製造できるメーカーとのコラボレーションも、模索していきたいという。現状のラインナップは、ケース部分がすべてクオーツ式だが、自動巻きなどの機械式にも挑戦していきたいという。
装着感もよかったwena wristだが、時計を左腕にする場合は、おサイフケータイ利用時に注意が必要だと感じた。iDなどの決済ではあまり問題にならないかもしれないが、ANAの「スキップサービス」では、リーダ・ライターが人に向かって右側に設置されていることが多い。持つ手を変えるだけのスマートフォンとは違い、時計を逆の腕に着けなおすのは少々面倒。この点では、利用するサービスを選ぶ形状と言えるかもしれない。
wena wristはソニーが用意したクラウドファンディングの仕組みである「First Flight」で出資を募っており、本稿執筆時点ですでに7000万円近い資金を集めている。目標額の1000万円を大幅に上回っており、新規事業としては大成功と言えるだろう。また、IFAでも、がジェット系メディアのTrusted Reviewsから「Best of IFA 2015」が贈られており、デビューに花を添えた。
wena wristの日本でのお披露目は、9月15日から18日にソニー本社で開催されるタッチ&トライイベントになる。出資する前にデザインや質感をチェックしておきたい人は、ぜひ立ち寄っておきたい。