【2013 INTERNATIONAL CES】

日本と米国の架け橋を目指すドコモUSA、日本人向けプリペイドSIMも準備中

 IT、家電製品のお披露目の場として有名な「CES」だが、米国ではAT&TやVerizonといった大手キャリアも、基調講演への参加や開発者向けのカンファレンスで存在感を発揮している。

 NTTドコモもこうした取り組みにならい、米国子会社の「NTTドコモUSA」がアプリ開発者を招いたイベントを9日(現地時間)に開催した。米国の開発者に日本市場の魅力を解説し、ドコモの新たなサービスにつなげるというのが主な狙いだ。

 ドコモUSAは、こうしたイベントでの開発者発掘だけでなく、米国在住の日本人に向け、T-MobileのMVNOとして「DOCOMO USA Wireless」という通信サービスも提供している。また、米国でのサポートデスクも、同社の主な役割だ。こうしたドコモUSAの取り組みについて、同社のPresident&CEO、前田正明氏にお話しを聞いた。

日本市場をアピールする取り組み

――日本のユーザーは、「ドコモUSA」と聞いてもピンとこないのが現状です。まずは、御社の主な役割からお話しください。

前田氏

前田氏

 私たちの会社には、いくつかのミッションがあります。1つがドコモの大使館的な役割で、今回のイベントのようにいろいろな方とお付き合いをしたり、FCC(連邦通信委員会)の動向を収集したりというのが主な仕事です。

 もう1つ力を入れているのが、日系人、日系企業のサポートです。他社ではKDDIさんも同様の取り組みを行っていますが、MVNOとして日本のお客様にサービスを提供しています。グローバルアカウントの企業に対しても、東京の本社と一緒に動いています。

 また、米国にドコモショップのようなサポートデスクを作るのも、私たちの仕事になります。ニューヨーク、ニュージャージー、シカゴ、サンノゼ、ロサンゼルス、アーバイン、あとは名前が違いますがホノルルの「ワールドカウンター」を展開しています。最近は、ローミング時のトラブルが多いので、日本人のお客様が多いところで、サポートもしています。

――CESで実施したイベントは、どのような位置づけなのでしょうか。

前田氏

 最初にお話しした、大使館的な役割ですね。いろいろな人にきてもらい、日本のマーケットを知ってもらう。これが目的です。ドコモといっても、米国では知らない人がほとんどです。日本のマーケット自体も、意外と知られていません。そのため、米国と同じかそれ以上のモバイル大国で、ビジネスを広げるのに魅力的だというメッセージを出していく必要があります。

 その上で、ドコモと何かやってもらえることがあれば、それも探していきましょうというのがイベントの趣旨になります。AT&Tも、CESでディベロッパー向けのカンファレンスをやっていますが、そういったところにヒントを得て、募集行為を始めてみました。すでに3年ほど前から始めていますが、今回はそれをよりきちんとやるということです。最初は主にAndroidアプリの製作者向けでしたが、今回は全体的に広げて、そのほかのサービスも対象にしています。

 もちろん、私たちも日常で、いろいろな方々とお付き合いはしています。ただ、その中で東京に行ってもらったり、ドコモのエグゼクティブに会ってもらったりする機会は、なかなかありません。そういったことを行う、総括的な場としても捉えています。

――日米で文化や習慣、法律なども異なりますが、そういった情報もインプットするのでしょうか。

前田氏

 そこは担当者がいて、彼が全体的な情報を整理しています。次のステップとしては、「日本にはこういった障壁があり、ここを気をつけなければいけない」、そういった情報を用意しなければいけないと考えています。

米国滞在の日本人渡航者向けサービス

――話は変わりますが、先ほどお話しに出たMVNO事業も日本のユーザーと関わりのある分野だと思います。こちらの狙いを詳しく教えてください。

前田氏

 「DOCOMO USA Wireless」というサービスで、お客様からはご好評をいただいています。主なユーザーは、こちらに駐在している日系企業の方や、留学生の方ですね。また、こちらで生まれ育った日系人の中にも、契約などの分かりづらいことは日本語でサポートしてほしいというニーズがあり、日系人の方もいます。ですからカウンターのスタッフも、「英語もできるが日本語の方が得意」という条件で募集していますからね。全体的なパイは40万人ぐらいですが、サービス開始後1年8カ月で、今のところ数パーセントのシェアは取れています。

――サービス開始後の期間を考えると、順調に契約数が伸びているということですね。

前田氏

 米国では、ポストペイドで契約するのがそもそも難しいですからね。こちらでは、SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)や、クレジットカードのヒストリーが必要で、日本から出てきて「さあ契約しよう」と思っても、できないことがあります。

 ですから私たちは日本で事前に情報を提供しておき、渡航前に手続きをしてきてくださいと言っています。特に推奨しているのは、ドコモのスマートフォンをSIMロックフリーにして、ドコモUSAのSIMを日本でオーダーすることです。

――料金プランの特徴もあるのでしょうか。

前田氏

 日本に向けて、「フリーミニッツ(無料通話)」を入れて、一番安い100分のプランでも、すべて日本への電話に使えるようにしました。日本で国際ローミングする際も、ドコモとは親子関係なので、なるべく安く使えるようにしています。

――日本のドコモから、契約年数などを引き継げるような施策はあるのでしょうか。

前田氏

 約款が違うため難しいのですが、日本でのステータスを何か引き継げないかを検討する中で、ドコモポイントをこちらで使えるようにすることは考えています。

――より短期の渡航者はいかがでしょうか。海外パケ・ホーダイがあるとはいえ、滞在期間が長くなると出費も大きくなります。米国ではプリペイドのSIMカードを用意するのもやや難易度が高いので、ニーズはありそうです。

前田氏

 実は、日本で米国渡航者用のプリペイドSIMをもうすぐ出す予定です。1週間、10日、3カ月などの期間で、チャージ(トップアップ)のような面倒なことはやめて、使い切りにする予定です。もちろん、データ通信もついてくるので、スマートフォンで使うこともできます。

 また、ルーターのレンタルビジネスも始めようと思っています。サポートデスクでも、(空港で借りた海外向けの)ルーターにどうつなげばいいのかという質問が増えていますからね。いくつかの課題が解決しそうなので、今春には出せると思います。

――それは、個人的にもぜひお願いします(笑)。本日はどうもありがとうございます。

石野 純也