石野純也の「スマホとお金」

ソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」が実質0円どころか、もっとおトクな理由

 0円スタートで注目を集めた楽天モバイルの「UN-LIMIT VI」が、間もなく終了します。これを受け、povo2.0やLINEMOなどのオンライン専用プランが改めて注目を集めています。一方で、音声通話ができなくてよければ、ソフトバンクにもお得な料金プランが存在します。それが、タブレットやパソコン向けに用意されている「データ通信専用3GBプラン」です。

 料金は、契約翌月から5年間990円で、データ容量は3GB。ソフトバンク社のメインブランドであるソフトバンクの料金プランではありながら、金額やデータ容量だけを見ると、オンライン専用プランのLINEMOと同額。5年後にあたる62カ月目から料金は1408円に上がってしまいますが、データ通信専用で違約金もかからないため、そのときにまだ各種割引があれば、再契約するのも手です。

ソフトバンクがタブレットやパソコン用に用意している、データ通信専用3GBプラン。どことなくビジネスマン向けのお堅い内容に見えるが、実はお得の玉手箱

990円で3GB、1時間単位で無制限になるオプションも便利

 また、 キャンペーンとして契約翌月から割引が3カ月間適用され、料金は0円 になります。かつて、ソフトバンクの元社長である孫正義氏(現・ソフトバンクグループ 代表取締役会長兼社長)が放った「0円大好きなソフトバンク」という名(迷?)言にならったのかどうかは分かりませんが、3GBが0円で利用できるのはお得。お試しで契約して、ソフトバンクのエリアやネットワーク品質をチェックするのにもうってつけと言えます。

0円大好き――2006年にヨドバシカメラの店頭でこう語った孫氏(※当時の記事)。当時は端末の話だったが、その約16年後に3カ月限定とはいえ、料金プランが0円になっているのは感慨深い。NASからこの写真を引っ張り出してくるほど、私の好きな言葉だ

 データ通信専用3GBプランがおもしろいのは、povo2.0のトッピングのように、 一時的なオプションとして、データ通信を無制限にできる ところです。povo2.0の場合は、24時間の無制限が用意されていますが、データ通信専用3GBプランはもっと細かく時間単位。1時間110円、3時間220円、6時間330円、12時間440円、24時間550円という金額が設定されています。

 時間単位の無制限オプションが用意されているのは、この料金プランがタブレットやPCでのユースケースを想定しているからでしょう。外出先で1時間だけオンライン会議をしたいときや、出張で24時間だけ集中的にデータ通信を利用したいときなどに活用できます。スマホとは異なり、タブレットやPCは常時、高速で通信している必要はありません。使う時間だけデータ容量を無制限にできるのは、合理的と言えるでしょう。

一時的に大量のデータ通信をしたいときに便利な、「時間制ギガ無制限オプション」。1時間から選択できる

 このデータ容量やオプションなら、スマホのサブ回線としても魅力的に見えます。デュアルSIM端末に挿しておいて、主回線の容量が足りなくなりそうなときに切り替えて使えるからです。ただし、公式にはタブレットとパソコン専用という位置づけになっており、ソフトバンクによると、スマホは基本的にサポート対象外とのスタンスです。SIMフリーのAndroidスマホであれば、APNを設定するだけで比較的簡単に通信ができてしまうようですが、検証済み以外の端末で利用する際には自己責任でお願いします。

 ちなみに、購入時には、使用するデバイスをiPad用、タブレット用、パソコン用の3つから選ぶ仕組みで、タブレットかパソコンにすると、端末の購入先がソフトバンクなのかそれ以外なのかをたずねられます。この回答によって、送付されるSIMカードの種類が変わってきます。iPad用はAPNが非公開で、原則として他の端末で利用できません。iPhoneに挿すだけでは、動作しないようです(あとは察してください)。

“公式の”対応機種はiPadを含むタブレットと、Wi-Fiルーターなどのモバイルデータ通信端末。15年発売の「モバイルシアター」も、なぜかここに記載されている。まだ生きてたのか……!?

 タブレットかパソコンで「その他」を選ぶと、「USIMカード(F)」と呼ばれるSIMフリー端末専用のSIMカードになります。iPad以外で利用する場合は、こちらを選択するといいでしょう。難点としては、eSIMがない点が挙げられます。中にはeSIMのみのタブレットやパソコンもあるため、利用している端末が物理的なSIMカードに対応しているかどうかは要確認。端末がない場合は、ソフトバンクから購入することもできます。

端末に合わせたSIMカードを選択する必要がある。ただし、ソフトバンクではSIMカードごとにかけた端末の制限を徐々に緩和している。夏には撤廃予定というため、今後、複雑な枝分かれはなくなる可能性もある

ソフトバンクプレミアムで発揮できる真の実力

 とは言え、このプランがお得なのは、単に金額がオンライン専用プラン並みに安いからというだけではありません。先に挙げたように、ソフトバンクブランドの料金プランというのが大きなポイントです。5年間990円という破格の料金プランにも関わらず、 ソフトバンクが提供する優待特典の「ソフトバンクプレミアム」を利用できる のが、最大の特徴と言えるでしょう。

 「ソフトバンクプレミアム」とは何か。既存のユーザーはご存じかもしれませんが、あらためて説明すると、PayPayやYahoo!のサービスをお得に利用できる特典のことです。

 その一例が、PayPayで配信されているクーポンです。6月のクーポンは、「スギ薬局」「ミスタードーナッツ」「ローソン」「マルエツ」の4種類で、 マルエツが20%還元、その他3店舗では50%還元 を受けられます。上限額が200円~500円までと制限はあるものの、還元率は抜群の高さです。

PayPayポイントの付与率が上がるクーポンをはじめとした、さまざまな特典が用意されている。ただし、一部は料金プラン限定で、データ通信専用3GBプランは適用外になる

 仮にこの4店で上限までPayPayポイントが付与された場合、合計額は1400円に相当します。これだけで、データ通信専用3GBプランの元が取れてしまうというわけです。毎月の料金は発生するため、0円プランではありませんが、これらの店舗を利用している人にとっては、“実質0円プラン”のように見えるかもしれません。筆者の場合、ローソンはほぼ確実、スギ薬局も利用する確率が高いため、700円相当の還元を受けられることになります。

6月のクーポンはローソンやスギ薬局、ミスタードーナッツなど

 また、PayPayモールやYahoo!ショッピングで毎週日曜日に実施されている、10%還元の対象にもなります。

 こちらは上限額が1週間につき1000円。毎週、1万円の買い物をすれば、日曜日が4日ある月で4000円、5日ある月で5000円のPayPayポイントが付与されます。 “実質0円プラン”どころか、むしろ毎月の料金を上回るポイントがもらえてしまう というわけです。

PayPayモールでの還元率も日曜日に10%アップ。特に同モールではZOZOが5000円以上で常時10%還元をしているため、筆者も愛用中。日曜日が待ち遠しい

 ただし、毎週日曜日の還元は、ソフトバンク以外のユーザーも5%、上限1000円まで受けることが可能。2万円ぶんの買い物をすれば、同額のPayPayポイントが付与されるため、元々PayPayモールのヘビーユーザーだった場合は、メリットが薄いかもしれません。毎週日曜日の還元はソフトバンクユーザーの場合、還元率が5%ほど上がり、上限に達する金額が2万円→1万円に下がると捉えた方がいいでしょう。

Yahoo!プレミアムも無料に、適用にはスマートログインの設定が必要

 これだけでも、お得度は高いのですが、ほかにも「ソフトバンクシネマ割」があり、PayPayのミニアプリで「TOHOシネマズ」の映画チケットを購入すると、何回でも200円の還元が受けられます。

 ebookjapanで毎週金曜日に実施している10%還元も対象。Yahoo!やPayPayはいわばソフトバンク経済圏のサービスですが、その中でお金を使った際の還元が非常に大きくなるのが特徴と言えます。PayPayやPayPayモールの利用頻度が高い筆者も、このSIMカードを契約してワイモバイルから乗り換えることにしました(笑)。

 ソフトバンクプレミアムの特典を利用する際に必要になるのが、「スマートログイン」です。

 これは、ソフトバンク回線経由でYahoo!にログインする場合に、IDやパスワードを不要にする回線認証のサービス。データ通信専用3GBプランも、このスマートログインに対応しているため、ソフトバンクプレミアムの対象になるというわけです。

スマートログインを設定して、回線とYahoo!のIDを紐づける必要がある

 ただし、スマートログインは設定に、スマートフォンやタブレットが必要になります。タブレットやパソコンに特化したSIMカードにも関わらず、パソコンは非対応。先に述べたように、原則としてスマホは動作保証の対象外になっているため、スマートログインを公式に設定できる端末はかなり限定されます。

 iPadやAndroidタブレットは確実なのですが、後者はソフトバンク取り扱いモデルがレノボの2機種のみ。オープンマーケットのモデルまで視野に入れれば、もう少しバリエーションは広がりますが、スマホのようなバリエーションはありません。自己責任であることが前提のため、確実なことは言えませんが、端末がない場合は手持ちのスマホで試してみるしかなさそうです。

 ちなみに、ソフトバンクプレミアムの特典ではありませんが、スマートログインを設定すると、月額508円のYahoo!プレミアム会員が無料になります。

 Yahoo!プレミアムの特典には、PayPayモールやYahoo!ショッピングの還元率が上がったり、最大5%相当のPayPayクーポンがもらえたりといったものがあります。これらが無料になるのも、インパクトが大きいと言えるでしょう。

スマートログインを設定するだけで、Yahoo!プレミアムが無料に。元々契約していた人にとっては、これだけで、料金プランの半分が還元されているようなものだ

 わずか990円ながら特典がここまで充実しているのは、データ通信専用3GBプランがソフトバンクブランドで提供されているからこそ。グループ連携、特にYahoo!との連携が手薄なオンライン専用プランのLINEMOにはない魅力と言えます。“元を取る”のは簡単なため、普段は他社の回線を使っている人はもちろん、LINEMOのミニプランを契約しているような人がサブ回線として持つのにも、お勧めできる料金プランです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya