スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

ズーム性能世界最高クラスの「PowerShot SX60 HS」で遊ぶ♪

ズーム性能世界最高クラスの「PowerShot SX60 HS」で遊ぶ♪

 今回のネタはキヤノンの「PowerShot SX60 HS」(以下、SX60)。光学65倍ものズーム倍率を誇るレンズ一体型のデジカメです。2014年末の実勢価格は4万7000円前後となっています。

キヤノンの「PowerShot SX60 HS」。35mm判換算で21~1365mm相当となる光学65倍ズームレンズ搭載のコンパクトデジカメです。

 このカメラを買った理由は、「光学65倍」という凄そうなズームレンズを備えているからです。35mm判換算で光学21~1365mm相当。1365mmという超望遠レンズ、キヤノンの一眼レフカメラ用レンズのラインナップにもない倍率ですな。「EF800mm F5.6L IS USM」という超望遠単焦点レンズ(長さ約46cm、質量4.5kg)はありますが、175万円(税別)もします。まあ、SX60のレンズと比べたらその性能は別世界的に違うんでしょうけれど。

 ともあれ、通常は撮影できる機会すらない超望遠の世界。やはり「どういう世界なの?」ということで試してみたいわけです。

 ただ、以前にもこんなふうな超望遠コンパクトデジカメは経験済み。モノは富士フイルムの「FinePix S1」で、24~1200mm相当の光学ズームレンズを搭載した機種。リンク先に書いたように、このカメラで撮ると何を撮っても衝撃的であり愉快なんでした。

 恐らくSX60にも同様の楽しさがあるとは予想できますが、こちらはさらに広角性能も望遠性能も高い光学21~1365mm相当。広角側も望遠側もより強力なので、また違ったオモシロさがありそうです。

 てなわけで以降、SX60のズーム性能を中心に、その使用感などを書いてみたいと思います。が、一通り使ってみての結論を申しますと、超望遠撮影もスナップも動画撮影も、かな~り楽しめる機種だと感じました。ビデオ用三脚と組み合わせれば、プログレッシブファインズームを使った2000mm相当以上のズーム撮影も楽しく行えたりします。

SX60ってどんな感じのカメラ?

 まずはSX60のスペックなどをザッと。約1680万画素(撮像素子は1/2.3型高感度CMOS/裏面照射型)のコンパクトデジカメで、ISO感度はISO100~3200(ローライトモード時はISO6400まで増感)です。撮影モードはP/Tv/Av/Mから選べるほか、最大1980×1080(フルHD)/60fpsの動画(MP4形式)も撮影できます。

 レンズとしては、前述のとおり35mm判換算で21~1365mm相当の光学ズームレンズを搭載しています。また、プログレッシブファインズーム使用時は最大130倍(2730mm相当)、さらにデジタルズームを組み合わせれば最大260倍(5460mm相当)のズーム撮影が可能です。ちなみにマクロ撮影にも強く、最短撮影距離はマクロモード広角端で0cm、望遠端で50cmとなっています。

ワイド端とテレ端のときのレンズの様子。極端に長くなるというイメージでもなく、案外コンパクト。鏡胴上には35mm換算の焦点距離がプリントされています。

 光学式手ブレ補正機構として、撮影状況に応じて最適な手ブレ補正モードが自動選択される「マルチシーンIS」を搭載しています。レンズシフト式手ブレ補正機構で、5軸方向の手ブレを補正し、動画撮影時にも効果的とのこと。

 ファインダーとしては、バリアングル式の液晶モニター(3型/約92.2万ドット)とEVF(約92.2万ドット)を備え、ポップアップストロボも内蔵しています。サイズは幅127.6×高さ92.6×奥行き114.3mmで、使用時質量は約650g。コンパクトデジカメと言うにはけっこー大きめ重めですが、大きめのグリップがあるため安定的にホールドできます。

大きめのグリップには小指までかけられ、安定的にホールドできます。ボタン類の位置も良好です。ただ、4方向ボタンがけっこー押しにくい感じかも。

 使ってみた感じは、ホールド感の良さに加え、ボタン位置なども良好という印象。ワタクシの場合、キヤノン製コンパクトデジカメのUIにも慣れているので、使い始めからすぐにスムーズに操作していけました。

 が、一点、4方向ボタン(SETボタンを囲むリング)が非常に押しにくいと感じました。4方向ボタンの出っ張りが少ない(背が低い)ので、中央のSETボタンを誤操作することが多いです。人によっては「アリエナイ」と感じる押しにくさかもしれませんので、SX60購入を考えているならぜひ実機に触れて確かめてみてください。

 それ以外はイイ感じです。ワタクシの場合、上記4方向ボタンについて当初は確かに扱いにくく感じましたが、現在はかなり慣れ、大きなストレスなくSX60を扱えています。

ドッガーンとズームできて痛快!!

 前述のとおり、SX60は35mm判換算で21~1365mm相当の光学65倍ズームレンズを搭載しています。加えて、キャノン版の超解像技術と思われるプログレッシブファインズームを使用すれば2730mm相当(130倍ズーム)、さらにデジタルズームを使えば最大5460mm相当(260倍ズーム)の超~望遠撮影が可能です。

 実際、どのような画像が得られるのか? また、画質はどうなのか? とりあえず、それら要素を写真で見てみましょう。

 それぞれの写真は、1枚目が広角端(21mm相当)、2枚目が65倍光学ズーム端(1365mm相当)、3枚目がプログレッシブファインズーム端(2730mm相当)、デジタルズーム端(5460mm相当)です。赤丸の部分にズームアップしていきました。画質設定は、JPEG/Lサイズ(4608×3072ピクセル)/スーパーファイン(低圧縮)です。

 また、写真は2枚1セットで、左が元画像を縮小したもの、右が等倍(ドットバイドット)です。写真全体の画質およびディテイルの精細さのご参考になさってください。なお、リサイズやトリミング以外の画像処理は施していません。

広角端(21mm相当)。「超」を付けてもいいくらいの広角です。曇天下でやや低照度でしたが、色鮮やかに撮れました。
65倍光学ズーム端(1365mm相当)。遠くの被写体を一気に引き寄せられます。ディテールもクリアに撮れているようです。
プログレッシブファインズーム端(2730mm相当)。等倍で見ると荒れていますが、画像全体ではあまり不自然さが感じられません。
デジタルズーム端(5460mm相当)。等倍では画質劣化が目立ちますが、全体としてはまずまずイイ感じの画質だと感じられました。
広角端(21mm相当)。観覧車の一部を狙ってみました。
65倍光学ズーム端(1365mm相当)。人が乗っていたら顔がわかるレベルですな。
プログレッシブファインズーム端(2730mm相当)。細部のパーツまで見えます。
デジタルズーム端(5460mm相当)。画質はともかく、5460mm相当って凄いですね~。
広角端(21mm相当)。冬のラクダ。
65倍光学ズーム端(1365mm相当)。体毛もクリアに写りました。
プログレッシブファインズーム端(2730mm相当)。細部もなかなかよく描写されています。
デジタルズーム端(5460mm相当)。被写体によってはデジタルズームを使っても大きな違和感となりませんな。

 画質について個人的に思うに、プログレッシブファインズームやデジタルズーム、十分ツカエルという気が。もちろん撮影意図や被写体にもよるわけですが、「遠くの被写体に思いっ切り寄れる」ということと「そうしてもまずまずの画質が得られる」という点で、非常に大きなインパクトがありつつ画質的実用性もあると感じられました。

 さておき、65倍光学ズーム(1365mm相当)という時点で「うわ凄い!!」と驚けるのに加え、プログレッシブファインズーム端の2730mm相当やデジタルズーム端5460mm相当って、凄まじいですな。SX60の驚異的なズーム性能は、やはり何を撮ってもとりあえず「すっっげぇ~!!」と楽しめます。

 おもしろがりつつイロイロと撮ってきましたので、以降、超高倍率ズーム撮影結果を少々掲載いたします。4枚セットで、広角端(21mm相当)、65倍光学ズーム端(1365mm相当)、プログレッシブファインズーム端(2730mm相当)、デジタルズーム端(5460mm相当)の順で並べています。例によって赤丸の部分をズームアップ。リサイズ処理のみ施してあります。

撮影しにくい位置に集まってしまっているペリカンにズームアップ。
日向ぼっこ中の雌ライオンにズームアップ。肉眼で存在をギリギリ確認できる程度遠くにいます。
さらに遠くで日向ぼっこをしている雌ライオンにズームアップ。十分な視力がある人でも目視しにくい距離です。
身近なスズメを撮るのも楽しいですな♪
65倍光学ズーム端(1365mm相当)でもレンズ先端より1.8mからピントが合いますので、室内での超望遠撮影も現実的です。

 目視すら困難な距離にある被写体に対し、思いっ切りズームアップして撮れるのは非常に愉快。しかも片手で余裕で持てるサイズのデジカメでそーゆーコトができちゃうなんて、やはり凄いですね~。

 それから、SX60はAFも高速(約0.21秒)で、撮影タイムラグも短く(約0.23秒)、連写も得意。毎秒約6.4枚の高速連写が可能です。ワタクシの場合、いつもは高速連写は必要としないのですが、たまたま「あー連写性能高くて良かった~」と思える写真が撮れたので、ちょいと掲載。

前述の「さらに遠くの雌ライオン」を撮影中、あくびをし始めたので連続してリモコンのシャッターを押しました。連写モードではないのですが、シャッター押下にキビキビ反応してライオンのあくびの瞬間を撮ることができました。

 ただ、超望遠撮影を楽しむなら、やはりビデオ撮影用のフルード雲台付き三脚は必須のように思います。スチル撮影用の三脚でも力不足な感じ。

 というのは、効率良く的確なフレーミングを決めるためです。65倍光学ズーム端(1365mm相当)あたりでは、ほんの少しカメラが動いただけで、被写体がフレームから出てしまいます。一般的なスチル用の三脚でも、頑張ればフレーミングの微調整をできないことはありませんが、多くのケースで苦労しがち。手ブレを防止するためだけならスチル用のある程度頑丈な三脚でも大丈夫なんですが……。

 その点、ある程度しっかりしたビデオ用フルード雲台付き三脚なら、微妙なフレーミング調整も可能です。パンもチルトも「ヌル~」という感じで微量ずつ操作できるんですな。また滑らかなパン操作などをしつつ、超望遠で動く被写体を追いつつ撮影することもできます。逆に、そういった機材がないと、SX60に対して「確かに望遠倍率は凄いけど……撮影もフレーミングも難し過ぎて実用性がない」てな結論が出てしまいがちです。

 また、できればリモコンを使ったほうがいいと思います。超望遠撮影時、カメラを三脚にシッカリとセットしていても、半押し~シャッター押下の振動がブレを呼びがちだからです。

 なお、ワタクシの場合はリモコンとしてキヤノンの「リモートスイッチ RS-60E3」を、ビデオ撮影用のフルード雲台付き三脚としてはリーベックの「ALLEX KIT」を使っています。後者はビデオ撮影用としては比較的に簡易な三脚&ヘッドですが、SX60などのコンパクトデジカメやミラーレス一眼などで使うぶんには十分頑丈。カウンターバランスは取れませんが、ビデオ用にもスチル用にも汎用でき、比較的に軽量で、実勢価格が4万1000円弱というあたりも魅力です。

超望遠ズーム撮影も楽しいっ♪

 SX60で試してみて「案外イイ!!」と思ったのは、動画撮影です。フルHD(1920×1080ピクセル)の動画を60p(60コマ/秒)で撮れます。で、これを光学のみの超望遠、プログレッシブファインズーム、さらにデジタルズームまで使って撮ってみましたが、なかなかイケます。

 サンプルとして前述の静止画でも登場したペリカンを撮ってみました。まずはその距離感を静止画で掴んでみてください。

左が広角端(21mm相当)。右が65倍光学ズーム端(1365mm相当)。30mくらい向こうにいる感じでしょうか。肉眼だと「白い鳥? が居る」くらいしかわかりません。
左がプログレッシブファインズーム端(2730mm相当)。右がデジタルズーム端(5460mm相当)。

 上の静止画と同等の倍率でフルHD動画を撮影してみました。撮影設定はカメラ任せのオートです。

【動画01】広角端(21mm相当)で撮影。
【動画02】65倍光学ズーム端(1365mm相当)で撮影。光学ズームの最大倍率です。風がカメラの微妙なブレにつながっていますが、画質はクリアで良好ですな。
【動画03】プログレッシブファインズーム端(2730mm相当)での撮影。少々画質が荒れていますが、まずまず「観られる動画」だと思います。
【動画04】デジタルズーム端(5460mm相当)での撮影。さすがに荒れ荒れで、資料動画としてならどうにか使えるという感じでしょうか。

 デジタルズームまで使うと鑑賞には向かない画質となってしまいますが、ほかはなかなか好印象。また、前述のビデオ用フルード雲台付き三脚を使うと、超望遠で被写体を追いつつの動画撮影もわりとスムーズにできます。以下にそんな動画を。

【動画05】広角端から歩くキリンを追ってみました。AFも良好。超望遠動画も楽しいですネ♪
【動画06】AF追従のサンプルです。動画後半(8秒くらい)のところでキリンがフレームアウトしますが、直後、背景の壁に素早くフォーカスが合います。

 動画性能も十分なSX60。音もよく拾ってますな。超望遠の動画撮影を巧く使うと、これまでになかった動画表現を楽しめるようになるかもしれません。

 てな感じの超望遠コンパクトデジカメ「PowerShot SX60 HS」。超望遠カメラという側面を重視して使ってきましたが、広角側21mm相当から撮影でき、AFも高速で手ブレ補正も強力、ノイズ僅少のキヤノンらしい画質ということで、スナップ撮影にもしっかり強いカメラだったりもします。ミラーレスカメラ全盛な感じの現在においては、撮像素子の小ささ(1/2.3型)には若干の不満は残りますが、動画まで含め「これ1台でいろいろカバーできる」という優れた汎用性は大きな魅力。実際、使っていて非常に楽しいカメラですので、興味のある方はぜひ一度チェックしてみてください。

【編集部より】YouTubeにアップロードしたストリーミング動画は、オリジナルの動画ファイルより画質が低下します。オリジナルの動画ファイルは以下のリンクからダウンロードできます。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。