正面から見ると上下対象なIDOL 3

 ALCATEL ONETOUCH IDOL 3のデザインは、ほぼ上下対称になっていて、ホーム画面を含む全てのアプリ利用時に上下どちらでも使えるようになっている。他社にはない珍しいデザインだが、しばらく使ってみると、この「上下を問わない」というのは結構使い勝手が良いことが分かる。

 例えば、カバンやポケットから無造作にスマホを取り出すと、上下が逆なんていうこともしばしば。iPhoneだとホームボタンがあるおかげで上下逆で使えるアプリはほとんどない。でも、IDOL 3は上下逆でも問題なく使える。ホームボタンなどの画面表示はもちろんのこと、マイクとスピーカーも上下両方についているので、通話時もどちらが上でも問題ない。

イヤホン端子を上側にした状態
イヤホン端子を下側にした状態

 この機能性は、イヤホン端子や充電(Micro USB)端子の使い勝手にも大きく影響する。イヤホンケーブルを挿したままポケットに入れ、サッと取り出して操作しようとした場合、他の端末では持ち替えを強要されることがあるが、IDOL 3では何も意識する必要がない。車載ホルダーに固定して充電しながらカーナビ代わりに使おうという場合もそう。実際にスマホを使っていると地味に気になるポイントだったりするので、上下を問わないデザインにはかなり助かっている。

イヤホン端子と充電(Micro USB)端子

 芸が細かいのはサイドキーだ。さすがにデザイン的に上下左右対称というわけではないが、音量キーはどちらの向きに持っても、上側を押せば音量アップ、下側を押せば音量ダウンと、人間が端末の向きに合わせて操作するのではなく、端末が人間に合わせてくれるのだ。

 電源キーによるスリープ操作は、ジェスチャーでも代用できる。設定画面の「ジェスチャ」にある「画面をダブルクリック」の設定をオンにしておけば、消灯状態で画面をダブルタップすることでスリープの解除、ホーム画面のダブルタップでスリープへ移行できる。初期設定ではオフとなっているが、これはオンにして使いたい機能。ハードウェアキーを使わずに済むので、慣れると本当にIDOL 3の上下がどちらかを意識せずに使えるようになる。

 このほかにも、通話着信時に本体を裏返すことで着信音をミュートしたり、アラームも同様にスヌーズしたりというジェスチャー操作にも対応する。こうした便利機能をしっかり搭載しているのはありがたいポイントだ。

音量キーの上下も画面にあわせて反転する
さすがに背面のロゴやカメラ位置は上下対称になっていない

 筆者が個人的に気に入っているのが、背面のメインカメラ。上下左右対称の位置ではなく、左上に配置されている。スマホのカメラ位置は、実はこのくらい偏った位置にあった方が応用が利きやすい。

IDOL 3のカメラ位置ならでは撮影スタイル

 例えば、お皿に盛られた料理やお菓子、小さなフィギュアなど、卓上に置かれたものを撮るとき、このカメラ配置だと、机から1cmくらい高さのローアングルから撮影できる。これに対し、カメラが中央に配置されていると、最低でも机から3cmは離れないと撮影できない。たった2cmの差だが、食べ物など被写体が十分に小さいと、撮れる写真の自由度が大きく違ってくるのだ。

 「1cmのローアングル」がどんなものの撮影にも適しているわけではないが、迫力と立体感を演出しやすいので、活用すると「いいね!」を貰いやすい写真が撮りやすいだろう。

 iPhoneも左上の位置にカメラがあるため、同様の撮り方ができるのだが、Androidスマホは中央にカメラが配置されている機種が多く、この撮り方ができないものがほとんど。筆者はiPhoneでローアングル撮影に慣れていることもあって、この撮り方ができるだけでIDOL 3の評価はうなぎ登り。

1cmくらいのローアングルの作例。かなり小さいものでも、水平や見上げるように撮れる
3cmくらいの高さからだと、俯瞰する形になり、背景を入れるのが難しいなど構図に制限が生じる

 CPUのクロックやコア数などのスペックは、処理能力を最大限に引き出す必要がある一部のアプリでしか恩恵を受けられないが、こうしたデザイン面での使いやすさは、恩恵を受けられる瞬間がはるかに多い。

 そういった視点で見ると、IDOL 3は、カタログスペックこそミドルレンジだが、細かい使い勝手にも気を遣った作りになっており、メイン端末として使うと気持ちの良いスマホだと感じられる。このあたりアプローチは、さすが老舗ケータイメーカーの名前を背負っているだけのことはある。スマホを選ぶときは、スペックだけでなく、こうした使い勝手の良さを重視したいものだ。


IDOL 3は「音」に強いSIMフリースマホ
動画閲覧時など、横画面にすると左右にスピーカーが来るデザイン

 ALCATEL ONETOUCH IDOL 3の特長の一つは「音」。とにかく音に注力しているスマホだ。実際に端末に触れてみると、ハードとソフトの両面で良い音を追及していることが分かる。

 まず、フロントパネルの上端と下端にスピーカーが配置されており、横画面で動画を再生するとき、ちょうど画面の左右になるようにデザインされている。この構造により、ヘッドホンを装着しなくとも、端末一つでステレオで音声を楽しむことができる。

 側面や背面にモノラルスピーカーを配置している普通のスマホと比べると、ハッキリと違いがわかる。横画面で動画を再生するとき、普通のスマホだと映像の表示位置と音の発生位置にズレがあって違和感があるのだが、IDOL 3の場合はそういった違和感もなく、当たり前だが映像から音が出てるように聞こえる。今まで側面・背面にスピーカーのあるスマホばかり使ってきたのであまり意識したことがなかったのだが、この差はかなり大きい。

 例えば、生放送系の動画ならば画面内の人がしゃべっているような感覚が得られ、ゲームの効果音も方向と奥行きが感じられる。もちろん音楽もステレオなので、モノラルに比べると臨場感は圧倒的な違いがある。

コンパクトな筐体ながら、スピーカーはけっこう大きそう

 また、このスピーカーは、著名なスピーカーメーカー「JBL」の認証を取得しているもので、スマホ内蔵のスピーカーとしてはかなり高品質だ。人の声もこもらずによく聞こえるので、やはり生放送系の動画などでは非常にありがたい。スマホゲームや動画再生などでは、ヘッドホンや外付けスピーカーをわざわざつなぐのが面倒だなぁといつも思うのだが、IDOL 3ならば内蔵スピーカーでも十分なので、より気軽に楽しめるだろう。

 ちなみに、映像についても液晶ディスプレイには色彩技術の老舗、テクニカラーの技術が導入されており、高度な色彩表現が可能になっている。コントラストを高め、明るい場所などでも見やすく表示されるので、場面を選ばずに映像コンテンツを楽しめるのもポイントだ。

 さらに、ヘッドホンやスピーカーを接続したときの音質にもこだわっており、「JBLクラリファイ」という音響技術が搭載されている。通常、スマートフォンや音楽プレーヤーで音楽を持ち運ぶには、デジタル圧縮の際に高音や低音が失われ、生音の臨場感が上手く楽しめなかったりする。しかし、JBLクラリファイでは、失われたそれらの音を極限まで再現して音楽を再生するため、生音に近いアーティストの意図した高音質な音楽を楽しむことができるというわけだ。

音楽再生プレーヤーには「JBL」のロゴも入っている

 最近は非圧縮の高音質音源、いわゆるハイレゾ音源対応のスマホも増えつつある。しかし、ハイレゾ音源は入手方法が限られる上、ファイル容量が大きく、大容量のmicroSDカードを使用しても持ち歩ける楽曲数がかなり少なくなってしまう。実際のスマホの利用シーンでは、圧縮音源を聴くことがほとんど。

 JBLクラリファイは、原音に近づけるというものなので、256kbpsくらいの高ビットレートだと効果は小さく、低ビットレート音源ほど効果が高くなる。最近流行りの音楽の定額配信サービスは、環境によって64kbpsくらいの低ビットレートになるので、そうした環境で特に効果を発揮してくれるのがありがたい。パケット節約のために、外出時はあえて低ビットレート固定にして聴く、といった使い方でも役に立ちそうだ。

 そんな音への自信もあってか、IDOL 3のパッケージにはJBL製のイヤホンが同梱されている。ちゃんとサイズ違いのイヤピースも付属するカナル型だ。さすがに数万円クラスの高級イヤホンとは比較しにくいが、音質はスマホの付属品とは思えないほどしっかりしているので、イヤホンを買い足す必要はなさそうだ。

 カナル型はサイズを合わせてちゃんと装着すれば音漏れしにくいので、電車の中などでも利用しやすい。また、リモコンとマイクも付いているので、ハンズフリー通話などにも使える。筆者はよく移動中に音楽を聴いたりするので、これは非常に役に立っている。

JBL製のイヤホン。オマケとは思えない高品質

 ちょっと面白いのは、標準でオリジナルのDJアプリ「ONETOUCH MIX」が搭載されていることだ。2つの音楽ファイルをミックスさせて再生したり、エフェクトやイコライザーを使ったり、サンプリング音を鳴らしたり、円盤を動かして「キュコキュコ」いわせることもできる。

ONETOUCH MIXの画面
発表会でDJプレイを披露した☆Taku Takahashi氏(右)

 正直、筆者はDJのことがよくわからないので詳しく解説はできないが、IDOL 3の発表会でm-floなどで知られるゲストの☆Taku Takahashi氏によるデモプレイを見た感想としては、そのままクラブで使えるんじゃないかというレベルだった(※関連記事)。腕前さえ伴えば、プロレベルのDJプレイができそうだ。筆者には到底無理そうだが……。

 SIMフリースマホというと、コストパフォーマンス重視であまり特徴のないものも多いが、IDOL 3は「音楽」という面で個性を出している点が面白い。JBLの音響技術も使っているので、その品質はなかなか本格的。日常的にスマホで音楽を楽しむのに最適な端末だ。


iPhoneユーザーから見た「アルカテル」ブランドのスマホ
ALCATEL ONETOUCH IDOL 3

 筆者は普段、iPhoneをメインに使っている。2008年発売のiPhone 3Gから使っているので、もう7年目だ。しかし、Androidスマホも毎年何台か買って使っている。もちろん仕事でAndroidも必要というのが最大の理由ではあるが、iPhoneと違ってAndroidスマホにはさまざまなモデルがあるので、その個性を楽しんだりもしている。

 とくに最近はSIMロックフリーのスマホの種類が豊富なので、選ぶ楽しみが増している。今年はその中でも、「ALCATEL ONETOUCH IDOL 3」がちょっと面白い。

背面のALCATELロゴ

 古くから本誌を愛読している読者なら、ALCATEL(アルカテル)というブランドには見覚えがあるはずだ(関連記事:ALCATEL、ファッションショーで「ELLE N°3」を紹介ALCATEL、薄型ストレートの“PLAYBOYケータイ”)。

 元々フランスの老舗通信機器メーカーなのだが、中国メーカーTCLと移動機分野で合弁企業を作り、現在はTCL Communicationが「ALCATEL ONETOUCH」ブランドのスマートフォンを世界展開している。アルカテルの移動機部門を引き継いでいることもあり、丸みを帯びた欧州テイストの端末デザインと通信機器会社由来の高い技術力、そして中国メーカーのコストパフォーマンスを併せ持っているのが特徴で、IDOL 3もそんなALCATEL ONETOUCHの特徴を体現している。

 ALCATEL ONETOUCHブランドへの憧れがIDOL 3を手に取ったきっかけではあるが、注目したいのは、ハイエンドとまでは行かないまでも、かなりリッチなスペックを実現しながら、直販価格で3万9800円(税別)で販売されているところ。“格安スマホ”というほどではないが、iPhoneやハイエンドのAndroidスマホに比べると半分くらいの価格である。

 ちなみに、公式オンラインショップではMXモバイリングのSIMとセット購入で月額2780円から使用でき、動画か音楽が視聴し放題などの特典もついてくるキャンペーンなどが実施されており、さらにお得感が増している。

左からiPhone 6s、IDOL 3、iPhone 6s Plus。IDOL 3はiPhone 6s Plusと同じ画面サイズながら、重さはiPhone 6sよりやや軽い

 ディスプレイはフルHD(1920×1080ピクセル)の5.5インチと、ちょうどiPhone 6s Plusと同じ、いわゆる“ファブレット”のサイズだ。ディスプレイのサイズや解像度はiPhone 6s Plusと同じだが、重さを比べると、iPhone 6s Plusが192gなのに対して、IDOL 3は141gと約50gも軽い。さらに、4.7インチのiPhone 6s(143g)よりも軽く、5.5インチクラスとしては破格な軽さと言える。この軽さでもバッテリー容量は2900mAhと大容量なのもなかなか凄い。

 実際に使ってみるとよく分かるのだが、通常、5.5インチというディスプレイサイズは片手操作だと画面上部がややタップしにくくなるのだが、IDOL 3は非常に軽いので、手のひらに載せるように持つことで片手でも容易に操作できる。ホームボタンが画面内にあるため、指の移動範囲がやや狭いことも、iPhoneとの大きな違いだ。

 筆者は電子書籍をよく読むのだが、このサイズ感は電子書籍、とりわけ電子コミックを楽しみやすい。さすがに見開き2ページ表示は実用的とは言いがたいが、1ページ単位ならば、表示を拡大しなくとも吹き出しのセリフの漢字が潰れることもなく、難なく読めるところが嬉しい。単行本と変わらない感覚だ。

 もちろん映像コンテンツにもディスプレイサイズが大きいことは有利で、映画などの彩色技術の老舗テクニカラー社の技術が導入されているディスプレイとともにJBLの認証を受けたフロントステレオスピーカーもポイントだ。

 搭載するプロセッサーはミドルクラスで、Snapdragon 615(MSM8939、最大1.5GHzのオクタコア)。システムメモリーの容量は2GBとなっている。カタログスペック上はハイエンドモデルよりも少し劣るが、普通に使うならば、このくらいのスペックが最もバランスが良い。

 というのも、プロセッサーはハイスペック端末向けの3Dゲームや多数のタスク実行といったことをしなければ、パワー不足を感じることはない。ブラウザや地図、SNSアプリなど、普段使うようなアプリにはミドルクラスのプロセッサーで十分。このプロセッサーでもパワーが足りないと感じるようなアプリは、ハイエンドモデルで使うにしてもバッテリー消費が大きいので、もともと常用には向いていないだろう。

筆者愛用のIDOL 3はメタリックシルバー
側面の仕上げも美しい

 こうした必要十分なスペックを持っていながら価格が約4万円というのは、実に良いバランスだと思う。最新のハイエンドスマホを購入しようとすると、10万円前後の負担になるので、それと比較するとかなり安上がり。

 スマホは普段持ち歩くものなので、常に破損や紛失のリスクがつきまとうが、価格が安ければそうした事故が起きたときの損失も抑えられる。IDOL 3の場合、保証期間内なら不具合が発生してもピックアップサービスが送料無料で利用できるほか、代替機の手配も依頼できるので、いざという時も安心だ。

 スマホの価格は性能の向上とともに年々上昇する傾向にあり、総務省のタスクフォースまわりの動きを眺めていると、今後は大きな割引も期待できないかもしれない。そんな中、買い替えの負担を減らしたいと思うなら、IDOL 3のような端末に乗り換えるのは効果的だ。また、筆者のように、iPhoneユーザーがAndroidスマホやMVNOのサービスを試すために最初に手に取り、iPhoneと併用するような使い方でも、IDOL 3はオススメだ。