みんなのケータイ

こんにちは5G? さようならPHS

【AQUOS zero5G basic DX SHG02】

 2020年3月に主要3社がサービスを開始し、同年9月に楽天モバイルもサービスをスタートさせた5G。「超高速」「大容量」「超低遅延」「同時多接続」などがキーワードとして挙げられ、本誌でも数多くの記事が掲載されているけど、対応エリアが限られているのが悩みどころ。対応エリアというより、対応スポットというレベルで、筆者も5G対応端末を試すとき、各社のエリアマップを見ながら、羽田空港に出向いたりしていた。

 5G対応端末は増えつつあるけど、エリアは順次、拡大を待つしかないんだよね……なんてことを考えていた年明けのある日。ふと、昨年購入した「AQUOS zero5G basic DX SHG02」の画面を見ると、アンテナピクトの隣に「5G」の文字が……。何かの間違いかと思いきや、他のauの5G対応端末をチェックすると、同じようにアンテナピクトに「5G」と表示されている。もしかして、我が家がauの5Gエリアに入ったのか!?

ん? アンテナピクトの隣に「5G」の文字が!

 auは昨年12月9日の発表会で、既存の4G LTE向けの周波数である3.5GHz帯でも5Gサービスに利用することを発表し、12月17日以降、順次利用できるようにすることを明らかにしていた。でも、3.5GHz帯で5Gサービスを利用するには、端末のアップデートが必要で、今のところ、利用できるのはGalaxy S20+ 5G SCG02など数機種のみ。「AQUOS zero5G basic DX SHG02」は2月以降に更新される予定なんだけど……。

 なぜ、こんなことが起きたのかというと、現在の5Gネットワーク構成のカラクリが絡んでいる。詳しいことは本誌の『ケータイ用語の基礎知識』の「第948回:アンカーバンドとは」でも触れられているので、そちらも参照していただきたいが、現在の5GネットワークはLTEの電波と組み合わせて動作している。この組み合わせるLTEのバンドを「アンカーバンド」「eLTE」と呼んでいる。簡単に言ってしまうと、ネットワークに接続する通信制御などにLTEの電波を使い、ユーザーが送受信するデータは5Gネットワーク(5G NR)を使うというしくみを採用している。

でも、[設定]アプリで[SIMのステータス]をチェックすると、[モバイルデータネットワークの種類]は[4G]と表示される

 ところが、5Gのエリアが狭いのに対し、eLTEは4Gと同じような少し広いエリアをカバーするため、環境によっては5Gの電波が届いていないのに、4G LTEの電波はeLTEの信号として端末に届くため、アンテナピクトが「5G」と表示されてしまうことがある。ちなみに、auのエリアマップを確認してみると、筆者宅付近では直線距離で1kmほど離れたところ、2.5km離れたところに5Gのエリア(スポット?)があり、ここと組み合わせるeLTEの信号をつかんでいるのかもしれない。

 こうした表示は5Gネットワークの仕様上、そうなってしまうようで、国内で販売される端末は、今のところ、いずれも同じように表示されるそうだ。筆者の手元にあるauの5G対応端末をひと通りチェックしてみると、AQUOS zero5G basic DX SHG02の他に、Galaxy S20 5G SCG01、Galaxy S20+ 5G SCG02、iPhone 12 Pro Maxなども「5G」と表示されていた。

 5Gと言えば、auとソフトバンクは「DSS(Dynamic Spectrum Sharing)」という技術を使い、既存の4G向け周波数帯域で5Gの電波もいっしょに吹くことで、エリアを拡大することを計画している。エリアは早く拡げられるけど、既存の4Gユーザーのトラフィックに影響が出ないように調整する必要があるうえ、仮に5Gで接続されても5G本来のパフォーマンスが得られない可能性が高いため、一部では「『なんちゃって5G』じゃないか」と揶揄されている。

 今回のアンテナピクトに表示された「5G」は、これとは別の『なんちゃって5G』とも言えるけど、ネットワーク構成のことがわかると、それだけ5Gが身近に迫ってきてるという解釈もできる。もっとも筆者宅付近のauの4G LTEネットワークは、夜間や早朝など、空いている時間帯なら、軽く100Mbpsオーバーを記録するので、パフォーマンス的には今のままでも十分なんだけど……。いずれにせよ、リアルに5Gが自宅に届く日をゆっくりと待ちたいと思います。

PHS、いよいよ

 5Gという新しい世代のサービスが展開されていく中、今月(2021年1月)は長らくユーザーに愛されてきた「PHS」の一般向けサービスがいよいよ終了する。PHSは今から四半世紀前(!)の1995年に、当時のNTTパーソナル、DDIポケット、アステルの3グループ(当時は地域別に会社が存在した)が提供を開始したサービスだ。3グループの内、実質的に生き残ったのはDDIポケットのみで、ブランド名をウィルコムに改称したものの、2010年に会社更生法の手続きを申請し、事実上、経営破綻。これをソフトバンクが受け継ぎ、イー・アクセスとの統合を経て、現在はワイモバイルのサービスとして、提供されている。

ワイモバイルのPHS回線の契約は、ウィルコム時代の京セラ製「HONEY BEE 5(WX07K)」で保持していた

 一般的に、携帯電話の技術は、10年ごとに新しい世代に進化していくと言われているけど、PHSは元々、デジタルコードレスホンの進化版という位置付けでスタートしながら、さまざまな進化を続けることで、25年以上に渡る期間、一般ユーザーに利用されてきたわけで、如何にその基本仕様が優れていたのかがよくわかる。同時に、数多くのエンジニアの熱意によって、サービスが継続されてきたことも見逃せない。

 現在、筆者が契約しているPHS回線は、サービス開始から2年後くらいに契約したもので、サブ回線として利用していたPHSは、いくつかの回線を契約したり、解約した結果、最終的にこの回線だけが生き残った。

 ちなみに、サービス終了時の移行施策(俗に言う「巻き取り施策」)は、「契約事務手数料無料」のほか、「次回の機種変更まで国内通話が無料」、「指定機種への機種変更が機種代金一括0円」が用意されている。機種については「Xperia 8」や「iPhone SE(第2世代)」などの人気機種が用意されている。ただし、オンラインでの手続きは1月15日までで、昨年12月22日に発表されたワイモバイルの新料金プランは、選ぶことができないようだ。ちょっと残念……。

 PHSについては端末にもサービスにもいろいろな思い出がある。初期の頃の「Pメール」、NTTパーソナルの「32kbps対応PIAFS」、DDIポケットの「H”」(エッジ)や「feel H”」など、いくつも思い出される。なかでも印象的だったのは、2005年にウィルコムが発表した「W-ZERO3」(シャープ)で、現在のスマートフォンの原型とも言えるエポックメイクな一台だった。

auの5G対応端末「AQUOS zero5G basic DX SHG02」(左)、NTTドコモのPDC/PHS対応端末「スーパードッチーモ SH821i」(右)。SH821iはコードレスホンの子機として、現在でも稼働中

 端末もサービスも話題が多かったPHSだけど、実は、個人的に気に入っていたのは、PHSがコードレスホンの子機として利用できたこと。残念ながら、現在はDDIポケットやウィルコム、ワイモバイルのPHS端末を子機として利用できていないけど、筆者宅の光電話には今でも パナソニックの「VE-PVC01L」 というコードレスホンが接続されていて、NTTドコモの 「スーパードッチーモ SH821i」 「Picwalk SH712m」 が子機として、登録されている。今や音声通話はほぼ携帯電話(スマートフォン)なので、これらの子機を使うことは極めて少ないけど、20年近く経った今でもちゃんと使えているのは、さすがとしか言いようがない。

 「ゆく年くる年」ならぬ、「ゆくPHSくる5G」という感じだけど、多くのユーザーに愛されたPHSに負けないように、各社はに5Gサービスにおいてもユーザーを楽しませてくれる端末やサービスの登場を期待したいですね。何はともあれ、お疲れさまでした。>PHS