ケータイ用語の基礎知識

第825回:シェアリングエコノミー とは

所有するのではなく「みんなで使う」

 「シェアリングエコノミー」とは、英語で分け合うを意味する“share”、経済を意味する“economy”から来ています。簡単に言うと、各々が自分でモノを持つのではなく、個人や企業が持っているモノを貸し借りしたり、交換したりすることで利用していく、新しい経済の動きのことです。特に従来とは違って個人対個人の取引が大きくなっていることが特長です。その新たな動きの影には、インターネット、そしてスマートフォンの普及や発展があります。

 かつて、たとえば自動車は「マイカーブーム」のように自分でモノを保有することがトレンドでした。モノを好きなときに使うには購入し、自分で保有するのが当然だ、というわけです。しかし、保有していても、常に利用しているとは限りません。それならば「使いたいときだけ使えればいい」、つまり保有していなくても借りたり、共同で所有したりした方がコストも低く抑えられるのではないか。そこで「カーシェアリング」のように、必要なときにだけ自動車を借りて使う手段が登場しました。

 自動車の場合、以前から「レンタカー」という貸し出しシステムがありましたが、シェアリングエコノミーでは、ネットやスマートフォン、IoTといった技術で、より手軽に利用できることが挙げられます。利用効率が高まれば、その分、利用コストも下がります。

 こうした考え方のものと、自動車だけではなく、洋服やオフィス、民泊など、さまざまなものがシェアリングの対象となっています。また、知識や技能の提供といったクラウドソーシングや、お金をベンチャーに出し合うクラウドファンディングといったサービスもその概念に含む場合もあります。

 モノのレンタルや技能やお金の貸し借り自体は昔からありましたが、その対象がスマートフォンなどの普及によって、インターネットを使って貸す側/借りる側ともその対象が大きく広がったのが、今どきの「シェアリングエコノミー」の特徴と言えます。

米国から先駆け

 2017年現在のシェアリングエコノミーが流行する先駈けとなったのは米国からでした。Airbnbという、空き部屋などを貸したい人と、そうした部屋を借りたい人をマッチングするサービスが2008年に開始されました。借り手のいない部屋を持っている大家や、長期出張などで家を空ける人など貸し手側と、旅行や出張での宿泊先として部屋を借りたい借り手と、法人個人を問わずにマッチングしたのです。

 Airbnbは、過去のユーザーの評価が見られる「レビュー制度」、Facebookなどの外部の認証を利用できる「SNSコネクト」などが利用できることも評価され、爆発的にヒットしました。そして世界中の国で宿が提供されるようになり、2017年現在では190カ国100部屋以上と、ホテルを何倍も上回る規模で宿が貸し出されるようになりました。

 同じく米国から始まったUberも、シェアリングエコノミーが広がるきっかけとなった代表的なサービスです。個人のドライバーや地域のタクシー会社などと提携して、自動車を配車、運送します。簡単に言えばタクシーの配車サービスなのですが、タクシーだけでなく個人が運転する自動車に乗せてもらうこともできる「シェアライドサービス」であることがUberの特長です。ちなみに日本国内では、自家用車に営利で人を乗せることは、いわゆる「白タク」行為になるためできません。

 Uberを初めとしたシェアライドサービスは、利用者がスマートフォンを利用しすることで、配車が非常に手軽にできること、またあらかじめ登録しておいたクレジットカードを使ってキャッシュレスで利用できることも大きな特徴でしょう。

 また中国発祥の「Mobike」は、サービス会社自らが自転車を貸し出しています。この自転車には、IoT向け通信モジュールと一体化したロック機構が取り付けられています。ユーザーがスマートフォンアプリから自転車に付いているQRコードを読み取ると、ロックが解除され貸し出されるという仕組みになっています。Mobikeでは、スマートフォンで空いている自転車を探せる機能もあります。ロック解除やIoT通信による返却、支払いなど、どこでも持ち運ぶスマートフォンとの親和性の高いサービスです。

 シェアリングサービスの普及には、このようにインターネットやスマートフォンの普及や、キャッシュレスで支払える仕組みの拡がりとの深い関わりがあると言えるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)