ケータイ Watch
連載バックナンバー
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水の中でもバッチリ撮影ができる
ソニー サイバーショットU DSC-U60
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極楽テレビ生活再び
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ウイングスタイルはどう進化したのか
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小さい、軽い、安い!
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アップルコンピュータ 「iPod 15GBモデル」
[2003/06/11]

ボールペンで書いたメモがそのまま画像データに!
ゼブラ「手書きリンク」
[2003/05/28]

小さくても性能はバツグン
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[2003/05/14]

新しくなったシグマリオン
NTTドコモ 「sigmarionIII」
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指紋認証機能搭載のPocket PC
日本ヒューレット・パッカード「iPAQ h5450」
[2003/04/23]

家の中でもモバイル環境を実現
FMV-DESKPOWER L20C/S
[2003/04/16]

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[2003/04/09]

Graffitiが苦手でも安心
ソニー CLIE「PEG-TG50」
[2003/03/26]

大人気の英語トレーニングソフトを試す
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[2003/03/13]

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[2003/03/07]

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[2003/02/26]

ドッキング可能なタブレットPC
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[2003/02/12]

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[2003/01/29]

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[2003/01/16]


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おとなのおもちゃタイトルGIF
指紋認証機能搭載のPocket PC
日本ヒューレット・パッカード「iPAQ h5450」
広野忠敏 広野忠敏
昭和37年新潟に生まれる。仕事はライターとプログラマの2足のわらじを履いている状態。どちらかといえばハードウェアよりはソフトウェアや技術的なものが得意である。ちなみに、2足はきこなしているかどうかはちょっと疑問。また、怪しげな小さいものと怪しげなプログラムと新しいものには目がないけど最近はちょっとパワーが落ちてきているかな。
(写真:若林直樹)


iPAQ h5450
 ここのところ、PDA、とりわけPocket PCに市場では目立った動きはなかった。しかし、いよいよ指紋認証を搭載したPocket PCである日本ヒューレット・パッカードの「iPAQ h5450」が登場する。「h5450」は指紋認証の搭載というだけではなく、Bluetooth、無線LANの搭載など今までのPocket PC搭載PDAの集大成ともいえるものでもある。

 発売は5月中旬なのだが、実際のところコレを待ち望んでいるPocket PCファンも多いのではないだろうか。今回は発売に先駆け、「h5450」の実機をお借りすることができたので、注目の指紋認証システムを中心にレビューしてみよう。なお、発売前の製品ということで、実際に発売される製品とは異なる場合もある。このあたりはあらかじめ了承していただきたい。


パーソナルデバイスも個人認証の時代だ!

 まずは、こんなシーンを頭に思い浮かべて欲しい。たとえば、会社の極秘データがたくさん入ったPDAをうっかり置き忘れてしまったらどうだろうか。あるいは、怪しい女性関係のデータがたっぷり詰まったPDAを彼女や奥さんに見られてしまったら? PDAをうっかり置き忘れてしまったために、社内の重要データが流出してしまう可能性もあるし、また、他人(身内も含む)に見られたら困るパーソナルデータを見られてしまい、人間関係に修復不可能なエラーが生じる、なんてこともまったくないとは言えない。笑い話で終わってしまえば問題ないのだが、笑って済ますことができなくて血の雨が降ってしまうこともあるハズだ。

 こうした問題が起きないようにするための明確な回答が、個人を認証するためのシステムだといえる。個人を認証するシステムは、データを保護するだけではなく、その人個人をも保護してくれる強力なシステムなのである。たとえば、自分の使っているPDAやケータイのデータを他人に見られないようにするには、自分だけがそうした機器を使えるようにしてしまえばいいわけだ。

 そして、個人を識別するためのスマートな方法の一つが指紋認証システム。多くのPDAやケータイではパスワードで情報を保護することができる。しかし、簡単なパスワードならば推測が可能だし完全ではない。また、複雑なパスワードを設定すると、設定した本人が忘れてしまうという笑えない状況が起きる可能性もある。しかし、指紋認証ならば、ほぼ個人を特定できるので、本当の意味で自分だけしか使えないデバイスにすることができるのである。そうなれば、先ほどのようなトラブルも発生しない。自分しか使えないから、他人にデータを見られることは決して起きないのだ。


まさに全部いりのiPAQ

 h5450を一口で表現すると、デジタルカメラ以外全部入り、ってことになる。まずは軽くスペックを紹介してみよう。本体には標準でblootoothと無線LAN(IEEE802.11b)の2つの通信機能を搭載。内蔵メモリは、RAMが64MB、ROMが48MB。ディスプレイは、65,536色表示が可能な3.8インチ、240×320ドットの半透過型TFTカラー液晶。CPUにはIntel PXA250 400MHzを搭載。さらに、SDIOに対応したSDカードスロットを本体上部に備えている。

 このように、非常に多彩な機能を備えながらも、本体のサイズは初代iPAQとほぼ同じなのは驚きだ。

 もちろん、ジャケットシステムも従来どおりで、iPAQ用にリリースされているさまざまなジャケットを利用することも可能だ。ただ、h5450は元々できることが多いので、「どうしてもPCカードを使いたい!」とか、「絶対にCFカードじゃなきゃイヤだ!」という人以外は、ジャケットを使う必要はないかもしれない。


本体上部にSDカードスロットなど。スタイラスは、一度押し込んで取り出す仕組み 本体底部。ジャケットやクレードルと接続する外部端子が配されている

パッケージには本体を保護するカバージャケットが同梱されている

やはり指紋認証はステキだ

ナビゲーションボタンの下に配置されている指紋認証のセンサー。非常にコンパクトでスマートだ
 h5450の最大の特徴は、なんといっても指紋認証。h5450で指紋認証を有効にしていると、電源を投入したときにパスワードのダイアログボックスが表示され、指紋が認証されない限り、h5450を使うことはできない。指紋認証のセンサーは、ナビゲーションボタンの下に配置されていて、センサー部分に指をあて、下に滑らせるように移動して指紋を検出させる仕組みだ。いままでの指紋認証というと、比較的大きなセンサに指を置いて認証させるという方式が多かったが、h5450が採用している方式は、それらに比べ非常にコンパクトでスマートだ。

 ちなみに、認証にかかる時間は2秒程度なので、それほど待たされるという感じではない。また、指紋による認証だけではなく、4桁の数字(PINコード)やパスワードによる認証も可能。さらに、PINコードやパスワードと指紋認証を併用することもできたり、指紋またはPINコード、指紋またはパスワードといった設定も可能だ。たとえば、パスワードと指紋認証を両方有効にしていると、正しい指紋が検出されただけではだめで、さらにパスワードの入力も必要になる。まさに鉄壁のセキュリティだといえるだろう。

 指紋の登録は非常に簡単。[設定]の[パスワード]を利用する。ちなみに、すでに指紋が登録されていたり、パスワードやPINコードが設定されているときに[パスワード]を起動すると、ダイアログが表示され、認証に成功しない限り指紋の登録や変更、パスワードの変更はできない仕組みになっている。

 登録できる指紋は1人のみで、複数人の指紋を登録して、h5450を使いまわしするといったことはできない。登録する指紋は両手の人差し指を使う。登録時に8回指紋をスキャンし、そのうち6回の読み取りができたときにだけ、先のプロセスに進むことができる。登録の次のプロセスでは、指紋の確認のためやはり8回指紋をスキャンする。8回のうち7回以上指紋が一致したら、さらに右手、左手両方の人差し指での指紋の確認を行ない、指紋の登録は終了する。このプロセスは素早くやっても、3分程度は必要。しかし、一度登録してしまえば特別な理由がないかぎり変更する必要はない。

 また、認証が必要になるタイミングは、電源をオンにしたときだけではなく、一定時間Pocket PCに何も入力がないときに認証をさせることも可能だ。そのため、うっかりどこかに置き忘れたという場合でも、他人がh5450を使ってデータを参照する可能性は非常に低いといえる。


認証時の画面
 指紋を登録する指は人差し指を使うのは先に書いたが、電源投入時や認証のダイアログが表示されたときに使う指紋も、登録したときと同じように人差し指を使う。登録時には左右の人差し指で登録するため、認証をするときはどちらの左右どちらの人差し指でもかまわない。ただし、別の指では認証パスさせることはできない。実際に、人差し指の指紋を登録してから、別の指で認証をしたが、指紋が一致することはなかった。

 指紋認証を採用したデバイスでは、指にケガをしたときなどで指紋が一致せずに認証をパスできないということもある。しかし、h5450では両手の人差し指の指紋を登録するため、両方の人差し指にケガをするといったケース以外では、特に不自由なく使うことができるだろう。

 なお、指紋を登録したのだけれども、どうしても認証ができない場合の救済措置も存在する。どうしても認証ができないときは、ハードウェアリセットを実行して、h5450を工場出荷時の状態に戻せばよい。ちなみに、ハードウェアリセットをすると本体のメモリはすべて消去されてしまうので、いずれにしても個人の重要なデータの漏洩は防ぐことができるというわけだ。

 このように、h5450は指紋認証を搭載したことにより、極めて個人的なデバイスとして位置づけることができる。一度指紋を登録してしまえば、登録した本人以外が使うことができない。たとえどんなに重要なデータが格納されていたとしても安心だ。まさにh5450は、本当の意味でのパーソナル・データ・アシスタント(PDA)ということができるだろう。

評価(最高点は★5つ)

イバリ度 ★★★★★  そりゃもうイバるしかないでしょう、というくらい素晴らしい製品です。
実用性 ★★★★★  普段PDAを常用していて、見られたら困るデータをたくさん入力している人は、絶対にこれを購入すべきです。もちろん、セキュリティ的にも安心だけど、さらにセキュアなものを使っているという心理的安心感をも与えてくれる素晴らしい製品だといえるでしょう。
お値段 ★★★★★  安心感がこの値段で買えるのは安いものです。
価格 69,800円  こうした認証システムが一般に普及するのに2年くらいはかかるだろうと予測して、利用期間は2年としました。さて、h5450はとても近い未来を感じさせる製品の一つだといえます。特に、指紋認証のためのセンサーが非常にコンパクトなのに驚きました。これならPDAだけじゃなくケータイにだって、ノートパソコンにだって搭載できそう。近い将来は、PDAに限らず個人が個人的に所有するデバイスは、こうした認証システムが必ず搭載されるようになるでしょう。ちなみに、私個人はもうずいぶんPalmユーザーをしているので、Palmじゃないのが残念。でも、コレはきっと買っちゃうだろうなあ。
利用期間 2年くらい
1日あたり単価 95円



URL
  ニュースリリース
  http://www.jpn.hp.com/info/pr/fy2003/fy03-080.htm
  製品情報
  http://www1.jpn.hp.com/products/handhelds/pocketpc/h5400/feature.html

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(広野忠敏)
2003/04/23 11:06

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