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「不必要」という「必要」。「線上のメリークリスマスII」

クリスマスソングをバックに雪は降る(消音スイッチ有り)
 ここ2~3年、国内外でパソコンのUSBポートから電源パワーだけを拝借する「洒落ガジェット」がいくつかのメーカーから発売されている。中でも、一年を通じその季節に応じて、夏にはUSB扇風機、冬にはクリスマスツリー等を例年タイミング良く発売するイーレッツ社の商品の登場は、ITワールドの隅っこで生活している我々には、どこかの「ほおずき市」や「朝顔市」、「羽子板市」等と同じように、その言葉を聞くと、自然と季節感を感じるようになるから不思議だ。

 人類が「インパルス・バイイング」(衝動買い)を起こすプロセスは専門外なのでよくわからないが、目的のガジェットを捉えた網膜が、視神経を刺激し、そのシグナルを前頭葉かどこかの脳細胞が腕の神経を刺激して、胸ポケットに入った財布から何枚かの千円札を抜き出すまでに、どのくらいの時間を必要とするのだろうか? なくても何ら困らない不必要なモノなのに、イーレッツ社の「線上のメリークリスマスII」は、ある種の人間にとっては、その衝動買いのプロセスを円滑かつ高速に行なわせる魅力を持った商品だ。

 昨年に続いてこの季節に発売された2002年冬版の「線上のメリークリスマスII」は、昨年より機能的にも多少改善されているようだ。基本機能は昨年と変わることなく、パソコンのUSBポートから、標準添付のUSBケーブルを利用して電源だけを拝借、12曲のクリスマスソングのメドレーを奏でながら、発砲スチロール製の白い軽やかな雪を心地よく透明ドームの中で降らせてくれる。一般発売に先立ち、同社のWebサイトで発売された初期ロットの100台は瞬く間に売り切れ、続いて秋葉原の何店舗かの店頭に並んだ商品も同じく一瞬のうちに売り切れてしまう。ここを逃して、どうしてもゲットしたいユーザーは、あとはオークションサイトに頼ることとなる。毎年のことだが、この「線上のメリークリスマスII」をゲットするのは大変だ。

 まず「入手しにくいこと」が「線上のメリークリスマスII」のような「他人に見せて、自慢したり、笑いをとる商品」には最重要項目だ。そのためには数多くを生産しないことが第一条件で、第二条件は、ネーミングにしろ、テクノロジーにしろ、そこに極めて崇高か、極めてバカらしい両極端の蘊蓄や思い入れが必要だ。そして最後に一番大事なのは、これらを買い求めるニッチなユーザー層の「衝動買いのストライクゾーン」に価格をうまく収めることだ。

 「線上のメリークリスマスII」はそれらの点がすべてバランス良く考慮されたIT的ガジェットだ。ただ明らかに、この商品は最愛の彼女やワイフに仰々しくプレゼントするモノではなく、せいぜいガールフレンド止まりだろう。もっとも似つかわしいのは、暮れも押し迫り、今年も年間売り上げが予想ほど伸びず、来年を考えるとちょっと沈滞気味にならざるを得ない営業オフィスなどで、オフィスのスタッフが額を寄せて、パソコンにUSBケーブルで繋がれたクリスマスツリーを見て来年を誓い合うというような光景だろう。


 市場に出回っている多くのクリスマス商品には、決して翌年まで寿命が長らえないように、西暦でその年が明示的に大きく書き込まれたモノが多い。「線上のメリークリスマスII」は年度に固執する記述のない太っ腹商品なので、普通に考えれば一度買った人間はもう買わない可能性が大だろう。2003年のクリスマスシーズンには、そんなユーザーがまたしてもディスプレイの前で、Webサイトでの発売を秒読みしながら待つ商品にして欲しいものだ。


意外と大きなドーム状の「線上のメリークリスマスII」 パソコンのUSBポートから電源だけを借用する

品名 発売元 購入価格
線上のメリークリスマスII
(すでに完売のため入手は不可能)
イーレッツ 3,980円


・ イーレッツ
  http://www.e-lets.co.jp/


(ゼロ・ハリ)
2002/12/24 15:10

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