■ 致命的なダメージを受けたフィルムは……
5000EDを使って声が出るほど感激したのは、フィルムスキャナとしての基本性能の高さもあるが、それ以上に前述のDigital ICEを始めとする画質向上系の処理機能がキョーレツだ。
つーかですね、フィルムのデジタル化を始めて間もなく、こりゃどーにも救いがたいってほどダメージを受けたフィルムを発見したんですな。そのフィルム、前述、一部登場したが、約40年前のカラーネガフィルムで、傷が着いてるわ褪色もしてるわカビだらけだわで、ほとんどゴミというレベルのフィルムであった。
ここまで損傷を受けてちゃたぶんダメだろ救出前に貴様は既に死んでいるあべし!! とか思ったが、ものは試しで5000EDでスキャンしてみたら、驚くべきことが起きた。以下はその結果である。
【5000EDのDigital ICEおよびDigital ROCの効果】
処理OFF |
ICE標準 |
ICE強 |
ROC適用 |
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上はそれぞれ、左から処理をOFFにしたもの、Digital ICE標準、Digital ICE強、Digital ICE標準に加えてDigital ROCを強度1(最低)で適用したスキャン結果だ。Digital ICEは前述のとおり、フィルム上のゴミや傷を除去する機能で、Digital ROC(デジタルロック)は褪色したフィルムの色を復元する機能である。
驚くべきは、あのカビと傷とホコリってドコ行っちゃったのぉ~マジェスティ(←マジですかの錯乱形by寺田克也氏ら)!! という点なのであって、てゅーかぁてゅーかぁ、このスキャン結果、マジ驚異的じゃないスか!? この画質向上機能っつーかフィルム情報美化機能を知った日から、もーカビたフィルム大好きかも俺~!! みたいな。
ただ、このフィルムにおいては、褪色補正機能であるDigital ROCがイマイチうまく効かなかったように思う。上段の写真は彩度上がり過ぎで、フィルムは富士フイルム製なのに、なんか色味がコダック? てな印象に。下の写真は緑がかっちまいましたな。これらフィルムでのDigital ROC適用強度は最低レベルで、適用強度を上げていくともっとヘンな色・彩度・明度になった。まあこーゆーケースでは、他の色調整機能を使ったり、後にレタッチソフトで修正するのが良さそうだ。にしても、あのゴミ的フィルムをここまで復元してくれるとは大したモンである。
なお、F-3200にもフィルムスキャン時のホコリ除去機能があり、それに加えてフィルムやプリントの褪色を補正する機能がある。以下は上と同じフィルムにそれらの機能を適用したものだ。
【F-3200のホコリ除去機能の効果】
処理OFF |
ホコリ除去弱 |
ホコリ除去中 |
ホコリ除去強 |
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拡大画像6.00MB |
拡大画像6.03MB |
拡大画像6.04MB |
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拡大画像6.57MB |
拡大画像6.56MB |
拡大画像6.59MB |
拡大画像6.63MB |
【F-3200のホコリ除去機能+褪色復元機能の効果】
ホコリ除去中+褪色復元 |
ホコリ除去中+褪色復元 |
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拡大画像6.00MB |
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F-3200の場合、ホコリ除去機能の強度を上げていくと、フィルム上の細部のイメージが大きく書き換わってしまうのは前述したとおりだ。とりわけ、細かな模様の部分は強い違和感を伴う変換が行なわれてしまう。ただ、フィルム上のディテイルを非常に大きなサイズでデジタル化する、というような目的でなければ、良好なホコリ除去を行なってくれているように感じる。カビた写真をスキャンしてL版とかにプリントして楽しむ、というような用途なら十分実用的だろう。
それから、F-3200の褪色復元機能だが、このフィルムではどれも緑がかってしまった。やはりこのよーにスゲー古くてチョー褪色してるフィルムの色合いは、機械任せじゃなくてドライバ上で手動調整したり、後にレタッチソフトで調整するのがいいのかもしれない。
■ 予想以上に快適な5000ED
最後に、画質や機能ってトコロ以外での5000EDの使用感をば。
このフィルムスキャナ、思った以上に高速でスキャンしてくれて快適である。具体的には、35mmフィルムを全面、ビットデプス(AD変換ビット)16bit・3200dpiにてスキャンすると、約18秒~40秒程度でスキャンできる。時間に差があるのは、Digital ICEやDigital ROC等の処理・ポストプロセッシングを行なうとその分時間がかかるからだ。無処理ならマジで20秒以内でスキャン完了って感じですな。
また、速度面では、照明光源がLEDってコトで、一般的なスキャナにはありがちな“ウォームアップ時間”がナイってのが快適。例えばF-3200は、使用開始時にだいたい1分とか1分半のウォームアップ時間が要るし、使用中でも間が空くとそのたびに15~30秒程度のウォームアップ時間を必要とする。この待ち時間が全然ない5000EDは非常にテンポ良く使えて快適だ。
それから、5000EDのドライバはNikon Scan 4となるが、コレ、ヘビーにスキャナを使う向きには便利だ。無骨だがシンプル。余計な飾り・誘導はないが、使い込むにおいては邪魔がなくていい。ただ、F-3200のドライバのような親切さはほとんどないって感じ。硬派な作りはニコンっぽくてイイが、非常に高性能なスキャナをラクに活用できるウィザード的な“お手軽モード”みたいなのも欲し……いような気がしなくもない。
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Nikon Scan 4.0の画面。見た目はムツカシソーだが、ていうかスキャン初心者にはムツカシーわけだが、シンプルな構成は使い込むにナイス。でも初心者を拒まないよーなお手軽モードが欲しい!?
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てなわけで、死に行くフィルムをスキャンして救い出せ!! そして永久保存するッ!! という俺的目的において、ことフィルムスキャン時にドすげぇ実力を発揮してくれているニコンSUPER COOLSCAN 5000 ED。今回はムリヤリにF-3200と比較してオモシロがってみたが、本腰入れてフィルムとデジタルを融合させつつ活用するには非常に便利だし使い込めるハードウェアだと感じた。
■ URL
ニコン「SUPER COOLSCAN 5000 ED」製品情報
http://www.nikon-image.com/jpn/products/scanner/scoolscan_5000_ed/
エプソン「カラリオスキャナF-3200」製品情報
http://www.i-love-epson.co.jp/products/scanner/f3200/f32001.htm
2004/11/30 11:03
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