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ソフトバンク、「フェムトセル」実験を公開

 ソフトバンクは2日、屋内をカバーする小型基地局「フェムトセル」を用いた実証実験を行なうことにあわせ、報道関係者向け説明会を開催した。


実験の概要

モトローラのフェムトセル

モトローラのフェムトセル

左は今後開発される商用版フェムトセル、右は実験で用いるプロトタイプ

左は今後開発される商用版フェムトセル、右は実験で用いるプロトタイプ
 フェムトセルとは、わずかなエリアをカバーする小型基地局で、家庭内やオフィス内の固定網に接続し、室内をカバーすることが想定されている。同社が行なうフェムトセルの実験では、宅内のADSLや光ファイバーにフェムトセルを接続し、そのフェムトセル経由で携帯電話から音声通話やテレビ電話、データ通信などを行ない、さまざまなアプリケーションを試す。また、通常の基地局(マクロセル)側との干渉問題なども検証される。フェムトセルと携帯電話のコアネットワークの間は、インターネットを経由することになる。

 デモで利用された携帯電話は市販されているものと同等だが、SIMカードに記録された電話番号は実験専用に割り当てられた特殊な番号が用いられている。そのため、実験用の携帯電話が周囲のマクロセルに接続することはない。

 出力は20mW以下で、フェムトセル1台に対して、同時に4台分の通話・データ通信が利用できる。機能的には電話番号などを用いたユーザー認証を取り入れており、アクセスできる端末を限定できるようになっている。

 実験は当初、6つの基地局、12台の携帯電話を用いられるが、今年12月以降には同社では、社員をモニターとした万単位のフェムトセルを用いた実験も行なう考え。


電話などのアプリケーションを検証 フェムトセル経由でのテレビ電話
電話などのアプリケーションを検証 フェムトセル経由でのテレビ電話

ソフトバンクの狙い

プレゼンを行なった宮川氏

プレゼンを行なった宮川氏
 まず、ソフトバンクモバイル取締役専務執行役員 兼 CTO 技術統括 兼 インドアソリューション本部長の宮川 潤一氏から実験の目的などの説明が行なわれた。同氏は「これは、1.7GHz帯の割当をもらうまえから進めていたプロジェクト。最近はビル内などに設置するピコセルが出てきているが、フェムトセルはさらに小さい基地局になる。技術的にある程度、出そろったことから、今回公開することにした」と述べ、フェムトセルにはじっくりと取り組んできたことを明らかにした。

 フェムトセルを導入する目的とはいったい何か。宮川氏は「エリアの充実」を挙げる。同氏は「今日の時点で、ソフトバンクモバイルの基地局数は42,000局になっている。1年間に2万局の設置は手こずったが、それでエリアカバーが完成したと言えない。ユーザーにとっては、常に繋がって当たり前。アンケート調査すると(電界強度表示の)アンテナが3本になって満足と言ってもらえる。エリアカバーは果てしない戦い。3Gで用いられている2GHz帯は屋内に届きにくく、フェムトセルによってエリア充実をはかる」とした。

 また、ユーザー1人1人に対する基地局、という形にすることで、実際の通信速度が理論値に近くなり、電波利用効率の改善が見込めるとした。同氏は「トラフィックをアウトドアからインドアにするという形。また、高さ50mの鉄塔をたてるには半年程度かかるが、それでは数が増やせないため、これまでは20~25m程度の鉄塔にした。これでは基地局1カ所あたりのエリアが小さくなるが、セル単位を小さくしたことでスピード・キャパシティは向上している。この究極の形がフェムトセル」とも述べていた。


将来的にはホームサーバーに ファームウェアの更新による性能向上も
将来的にはホームサーバーに ファームウェアの更新による性能向上も

 将来的な目標として、「ソフトバンクBBがADSLを展開する際、店頭で500万台のADSLモデムを配ったが、当時はADSLモデムをホームサーバーにしたかった。しかし、メモリもあまり搭載できなかったし、コストからすればHDDを搭載することもできなかった。2度と同じ失敗はしない、ということでフェムトセルは将来を見据えた設計にしている」と述べた。

 具体的には、今後、HSDPAの最高速度が3.6Mbpsから7.2Mbpsへあがったり、HSUPAが導入されたりした場合、フェムトセル側はファームウェアのアップデートによって、最新の通信方式に対応できるようにするという。

 フェムトセルを家庭内の中枢に据えるという考えを実現するためには、端末価格が気になるところだが、宮川氏は「我々からユーザーにお願いして置いてもらえませんか、とお願いすることになるだろう。従って、フェムトセルは基本的に無料という形にしていきたい」と述べ、フェムトセル1台の価格を安価にすることで、ユーザーに配布できる形にするという。


フェムトセルの課題

いくつかの課題があるという

いくつかの課題があるという

フェムトセル実現には、法制度の改正も求められる

フェムトセル実現には、法制度の改正も求められる
 屋内に設置するという形から、ホームアンテナのような利用イメージが想定されるフェムトセルだが、実際は基地局であるため、ユーザー自身の手では設置できないなど、法制面での課題がある。

 これは、同社が展開するホームリピーターでも同様の事例があったとのことで、宮川氏は「最近では1ヶ月程度だが、当初、ホームリピーターの設置は2ヶ月かかっていた。申し込んだら翌日届く、というスピードにならなければ広がらない。さらにいざ設置しようとしたときに、ユーザーの要望で場所を変えて設置すると電波法違反になるため申請し直していた。フェムトセルについても同様で、免許申請が不要なPHS用小型基地局のレベルまで踏み込んで話をしていかなければならない」と説明した。また、小型サイズの基地局という特性を活かす利用シーンとして、出張時などにフェムトセルを持って行くという考えも示されたが、そこで緊急通報したらどうなるのか、あるいは海外出張に持って行ってよいのか、といった点も含めて、現行の法制度では実現が難しいところだという。

 フェムトセルの展開を行なう上で法制度の課題が挙げられたが、総務省側の姿勢はソフトバンクの主張に対して好意的という。宮川氏は「フェムトセルについてある程度固まった仕様を持っているのは、世界で当社だけ。海外で決まったことを受け入れるのか、それとも日本発の技術にするのか。どちらにするかは行政次第と総務省に伝えた。ではどうすればよいのか、と聞かれたので“できるだけ法の壁を取り払ってください。あとはなんとかするから”と答えた」とも語っていた。

 技術的な課題としては、いったんインターネット網に接続するため、携帯電話のコアネットワークにどう接続するのか、その方法を検討する必要があるという。なお、フェムトセルと携帯のコアネットワーク間はVPNなどセキュリティまた、品質管理(QoS)の検証も必要とされており、現在は音声通話を優先する形にしている。また、宅内のブロードバンド回線がNTTなど他社であっても、同社のフェムトセルを利用できるようにするため、検証が行なわれるという。ただ、「NTT側はどうせ話を聞いてくれない」(宮川氏)とのことで、ソフトバンク側から他社に対してフェムトセルに関する交渉はまだ行なわれていない。このほか、フェムトセルのファームウェア更新作業を行なう場合、フェムトセルがルーターに接続され、LAN内にある場合にどう識別するか、などの点が課題だという。

 フェムトセル接続時の料金なども検討課題だが、宮川氏は「技術的には一通り終わった」としており、法改正を経た上で、来春の商用化を目指す考えを明らかにした。


デモ披露

サムスン製フェムトセル。左がW-CDMA用、右がCDMA2000用

サムスン製フェムトセル。左がW-CDMA用、右がCDMA2000用
 今回の実験には、ip.access、モトローラ、Ubiquisys、日本アルカテル・ルーセント、日本エリクソン、サムスン電子、日本ソナス・ネットワークス、NECが協力企業として名を連ねている。これらの企業からフェムトセルおよびフェムトセル向けサーバーシステムが供給されると見られるが、宮川氏は「これだけの企業に参加してもらったのは、フェムトセルでよりフラットなプラットフォームを実現したいと考えているため。ファームウェア更新の難しさなど技術的な課題を含めて、フラット化を実現できる企業を選んだ」と説明した。

 プレゼンテーション終了後には、ip.access、モトローラ、Ubiquisysがそれぞれデモを披露した。いずれのデモでも、フェムトセル経由での音声通話やテレビ電話などが紹介された。関係者によれば、フェムトセルの電源をオンにした際には、周囲のマクロセルの電波などをチェックした上で、フェムトセルからの電波出力を調整する機能などが盛り込まれ、干渉を避けるようになっているという。


NEC製プロトタイプ。電波法の関係で同軸ケーブル経由での出力となっている こちらはエリクソンのフェムトセル。現時点ではモックアップ
NEC製プロトタイプ。電波法の関係で同軸ケーブル経由での出力となっている こちらはエリクソンのフェムトセル。現時点ではモックアップ

日本ソナス・ネットワークのフェムトセル。こちらもモックアップだが、コアネットワーク設備を供給する強みを活かしたいという Ubiquisysのフェムトセル(右)。丸みを帯びたボディが特徴的
日本ソナス・ネットワークのフェムトセル。こちらもモックアップだが、コアネットワーク設備を供給する強みを活かしたいという Ubiquisysのフェムトセル(右)。丸みを帯びたボディが特徴的

こちらは8月に登場する予定の次モデル Ubiquisys製フェムトセルを介したテレビ電話。シールドされた部屋でデモが披露され、フェムトセルの電源をオフにすると通話も途切れた
こちらは8月に登場する予定の次モデル Ubiquisys製フェムトセルを介したテレビ電話。シールドされた部屋でデモが披露され、フェムトセルの電源をオフにすると通話も途切れた

Yahoo!ケータイの公式サイトにアクセスしたところ HSDPA端末でデータ通信したところ。下りの速度が1Mbps程度となっていた
Yahoo!ケータイの公式サイトにアクセスしたところ HSDPA端末でデータ通信したところ。下りの速度が1Mbps程度となっていた

左上にある物体がip.accessのフェムトセル フェムトセル経由でのテレビ電話でデモ
左上にある物体がip.accessのフェムトセル フェムトセル経由でのテレビ電話でデモ


URL
  ソフトバンク
  http://www.softbank.co.jp/

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ソフトバンク、室内をカバーする「フェムトセル」の実証実験


(関口 聖)
2007/07/02 21:20

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