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総務省 谷脇氏、「新競争促進プログラム2010」について説明

総務省 谷脇氏
 都内で開催された「MVNO+MVNEフォーラム2007」において、総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 料金サービス課 課長の谷脇 康彦氏は「モバイル市場の一層の活性化に向けた総務省の取り組み」と題した基調講演を行なった。


新競争促進プログラム2010とは

新競争促進プログラムの目的など
 谷脇氏はまず、「新競争促進プログラム2010」について説明する。新競争促進プログラム2010とは、「2010年台初頭までに実施する、ブロードバンド市場全体の、包括的な競争ルール見直しのためのロードマップ」だ。モバイル関連の施策としては、「MVNO事業化ガイドラインの見直し」「モバイルビジネス研究会」「IP化時代の通信端末のあり方に関する研究会」の3つがある。

 こうした施策の背景として谷脇氏は、成長が鈍化しているケータイ市場で、今後は新たな付加価値が求められていて、その付加価値を生み出しやすい市場環境を作ることが重要なテーマになっていることを説明した。


新競争促進プログラム実施に至るまでの経緯 これまで総務省(郵政省)が行なってきた競争ルールの見直し、規制緩和など

MVNO事業化ガイドラインの見直しについての概要
 「MVNO事業化ガイドラインの見直し」とは、文字通り、2002年6月に策定された「MVNO事業化ガイドライン」の内容を見直すというものだ。

 ドコモやau、ソフトバンクといった事業者をMNO(Mobile Network Operator)と呼ぶのに対し、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は、他社のネットワークやシステムを借り受け、モバイル通信サービスを提供する通信事業者のことをさす。谷脇氏は「既存のMNOは、様々なコンテンツやアプリ、ペイメントまでを含めたサービスを提供している。これは縦方向の垂直ビジネスといえる。垂直統合されたビジネスは、ユーザーの利便性から見ると結構なことで、MNO同士での競争も重要だ。しかし周波数資源は限られているので、MNOの数には限界がある。そこで既存事業者のネットワークを利用する、MVNOにスポットライトが当たる。既存のMNOが新しいビジネスを展開することもできるが、MVNOが入ってこられれば、より新しい付加価値のマーケットが生まれるのではないか、という意識がある」として、MVNOの必要性を語った。

 また、ガイドラインについては、「MVNO事業化ガイドラインは、MVNOにおいて既存法律の適用範囲を明確化したもの。法律で電気通信事業者について書かれているが、その文脈がMVNOでどのように解釈されるかを明確にしたものがガイドライン。2002年に策定されてから4年強が経過したが、第3世代の普及やデータ通信ニーズ、FMCへの関心の高まりなど、市場も変わった。そこで新競争プログラムの中で、現在の市場構造にあわせて明確化することになった」と説明。

 見直しは昨年発表された見直し案を元に、1月中に最終案が決められる予定だという。見直し案では、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler、MVNO事業構築を支援する専門の事業者)の定義が加えられ、「MVNOとMNOの関係の明確化」、「MNOがMVNOからの要求を拒否できる条件の明確化」、「MVNOとMNOの間での紛争処理手続きの整理」などが盛り込まれている。


MVNOの参入により、新規市場開拓をねらう ガイドライン見直しに至るまでの経緯

ケータイのビジネスモデルを再検証する「モバイルビジネス研究会」

モバイルビジネス研究会の概要
 続いて「モバイルビジネス研究会」について説明。「モバイルビジネス研究会」とは、ケータイのビジネスモデルを再検証する研究会のこと。第1回の研究会が1月22日に開催され、9月中旬開催予定の第8回の研究会で、報告書が決定されるスケジュールとなっている。

 谷脇氏は研究会が設置された背景として、3つの問題を指摘する。1つ目はブロードバンド化の進展だ。ブロードバンド化により、従来よりリッチなコンテンツがネットワークに流れるようになった。

 2つ目はネットワークのIP化による、水平的なサービス統合。谷脇氏は、「これまでバラバラだった音声やデータ通信は、IP化によりすべてがパケットベースとなる。IP電話により通信の距離区分もなくなる。FMC(Fixed Mobile Convergence)により、固定と移動の違いもなくなる。これらを水平サービス統合と呼んでいる。現在の総務省には、サービス内容や距離により区分を設けているが、水平サービス統合で、従来の区分が機能しなくなる。そういった意味で、総務省でも競争ルールを見直す必要がある」と語り、IP化への対応が必要とされていることを訴えた。

 3つ目は垂直的なサービス統合。同氏は「ケータイのネットワークは、垂直統合を実現した最たるもの。通信だけで収益性が次第に見込めなくなっているので、通信キャリアは次第に上のレイヤー、アプリケーションやコンテンツのレイヤーにのぼり、さまざまなコラボレーションを展開している。これが垂直的な統合」と説明する。


IP化の進展に伴う競争環境の変化について 現行のモバイルビジネスモデルと、想定されるビジネスモデル2.0

 これらをふまえ谷脇氏は、垂直的な統合と水平的な統合に柔軟に対応できる市場環境、「ビジネスモデル2.0」について説明。「現在は端末も通信キャリアが売り、認証課金なども通信キャリアが提供している。これは典型的な垂直統合だが、通信キャリアがすべてのイニシアティブをとっているという意味では、ややクローズドなビジネスモデルといえる。一方ビジネスモデル2.0では、FMCによりネットワークは移動通信と固定通信の違いがなくなる。さらに端末も、パソコンのようなものもあれば、ケータイのようなものもあり、さらに家電がつながるという形態も考えられる。ここまで多様性が出てくると、通信キャリアだけでは対応できないので、これからは多様なコラボレーションが可能な市場環境が必要となる」と話した。

 その一方で、「現在のクローズドなビジネスモデルも、利用者にメリットがあるので、否定はしない。しかしそれがすべてではなく、多様性を生み出すことが重要。クローズドな垂直統合に加え、オープンなビジネスモデルがあってもよいのではないか」とし、必ずしも現在のビジネスモデルを否定するものではないことを強調した。


モバイルビジネス研究会の検討スケジュール
 モバイルビジネス研究会では、ビジネスモデルの変化の中で、モバイルビジネスを活性化させることをねらう。谷脇氏は、その中で現行のクローズドなビジネスモデルのメリット・デメリットを改めて検証する必要があると述べ、仮にビジネスモデルの見直しを図るとすると、いくつかの着目点があるとした。

 MVNOの新規参入の促進について、谷脇氏は「日本にもMVNOにはいろいろな可能性がある」と述べ、「MVNOというと大規模なものを想像してしまうが、大規模である必要はない。サッカーファンクラブ限定のケータイや使い捨てのケータイなど、様々な可能性を既存事業者にも考えてもらって、WIN-WINの関係を作ることを考えたい」と語った。

 また、ケータイの課金・認証プラットフォームについて、「日本はブロードバンド大国。しかしこれはインフラが発達したというだけ。ハイウェイが作られて、その上をコンテンツが走るだけでは意味がなく、お金を取らないといけない。料金所が必要。これがうまくできれば、車がたくさん走り、お金が徴収できて、さらにインフラを整備できるという好循環が生まれる」と説明した。

 その一方、「誤解しないで欲しいのは、規制して課金プラットフォーム開放を義務化するわけではない。課金プラットフォームの開放に、どんな課題があるかを検討している。ケータイのプレゼンス情報は新しいビジネスを生み出す可能性があるので、その可能性を阻むものがないかを検討している」とも述べた。

 さらに、販売奨励金(インセンティブもしくはコミッション)とSIMロックをはじめとする、現行のビジネスモデルについて、「販売奨励金のあり方や、本来あるはずのSIMロックフリー端末などについて、利用者の公平性をどうやって保つかを検討する必要がある。端末販売形式の多様性が重要だ。キャリア主導の端末販売はあってしかるべきだが、それ以外の販売形式はできないのか。センシティブな話題を含んでいることはわかっているが、ここからモバイル市場の閉塞感を打ち破れないか、と期待している。販売奨励金を法律でなくす、とは言わない。1つの端末を2つの価格で売れ、とも言わない。しかし、低機能の端末でも、ある程度のバリューがあれば高く売れるのでは、と考えている。これらについて研究会で、関係者の議論を進めていきたい」と語った。


 モバイルビジネス研究会だけではなく、移動・固定両方のIP化ネットワークについて検討する「IP化時代の通信端末に関する研究会」も設置されている。さらに、新競争促進プログラムに基づいて、「ネットワークの中立性に関する懇談会」も設置されている。懇談会では、ネットワークの相互接続インターフェイスのオープン化、P2Pの普及によって不足している帯域のコスト問題をどうするかといったことが検討されている。P2Pについては、「P2PというとWinnyなど悪いイメージもあるが、うまく活用すれば、ネット混雑を解消できる。否定するのではなく、包括的に議論していきたい」と述べた。

 最後に谷脇氏は、「新競争促進プログラムが目標とする、国内モバイルビジネス産業の活性化により、国際競争力向上にもつながるだろう。本日紹介したような内容については、総務大臣以下総務省をあげて、問題意識を持って取り組んでいるので、みなさんのご協力をいただきたい」と講演を締めくくった。


IP化時代の通信端末に関する研究会について IP化時代の通信端末に関する研究会の主要な検討項目


URL
  総務省
  http://www.soumu.go.jp/
  新競争促進プログラム2010年台初頭までに実施する
  http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060919_4.html
  モバイルビジネス研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/
  MVNO+MVNEフォーラム2007 Winter
  http://www.ric.co.jp/expo/mvno2007/

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(白根 雅彦)
2007/01/26 19:29

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