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携帯向け周波数の検討会、各社それぞれの主張をアピール

 8日、携帯電話向けに割り当てられる予定の1.7GHz帯、2.0GHz帯、2.5GHz帯、および800MHz帯の再編に関する「携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会」の第3回会合が開催された。

 4日に行なわれた前回会合では、既存および新規参入希望の各社から、周波数の割当についてそれぞれの意見が述べられたが、今回は、それらの意見を踏まえて、「周波数は新規事業者のみに割り当てるべきかどうか」「新規事業者が使用する周波数幅はどの程度にすべきか」などの項目ごとに、有識者による検討会構成員から各社へ質問するという形になった。


800MHz帯は携帯電話事業に有利なのか

 冒頭、構成員から、2GHz帯と800MHz帯にはどのような差異があるのかという質問が投げかけられた。

 ソフトバンクBB 代表取締役社長の孫 正義氏が、「800MHz帯のほうが有利と理解している」と述べたが、KDDI代表取締役社長の小野寺 正氏は、「伝搬特性は確かに異なるが、技術的にどちらが有利なのかという点はきちんと議論されなければならない」と回答。

 また孫氏は「我々はW-CDMAか、CDMA2000のどちらかで事業展開するつもり。都市部では、1.7GHz帯や2GHz帯でも良いかもしれないが、郊外では同じ端末で800MHz帯を使えるようにするマルチバンド対応にしたい。地域によって主力の周波数帯が異なるが、これはNTTドコモも今年の3月に発表した決算資料で明らかにしている方針と同じだ」と語った。

 利用者の密度が高い都市部では、基地局の収容人数を高めるため、多くの場所に基地局が設置されているが、郊外ではさほど基地局の数は多くなくとも十分な収容人数を確保できる。しかし、800MHz帯に比べて2GHz帯は、郊外においてより細かく基地局を配置しなければならず、設備投資額が増大すると孫氏は指摘している。

 ソフトバンクBBでは、携帯電話事業を800MHz帯で展開したいとの意向を明らかにしているが、総務省では電波の有効利用施策の1つとして、まず800MHz帯を整理整頓する考えだ。この帯域は、NTTドコモのPDC方式(ムーバ端末)と、KDDIのCDMA2000方式で利用されており、再編するためには、これら既存事業者のユーザーをいったん別の周波数帯に移行させる必要がある。

 再編がある程度進行しなければ、新規・既存どちらにも800MHz帯を割り当てるのは困難と思われるが、今回の会合でもイー・アクセス代表取締役CEOの千本 倖生氏が「800MHz帯を白紙にするのは難しいのではないか」と発言したほか、NTTドコモ代表取締役社長の中村 維夫氏は「ドコモのPDCユーザーだけでも4,000万人存在している。新規事業者の参入が難しいということではないが、再編は2012年までにやろうということになっている。(既存ユーザーを)動かすのは難しく、時間がかかる」と理解を求めている。


ソフトバンクBB孫氏「800MHz帯の白紙化はマルチバンドで解決できる」

ソフトバンクBB 代表取締役社長の孫正義氏(右)と、同社取締役の宮川潤一氏(左)
 これに対して孫氏は、「ドコモもKDDIも近日中に、800MHzおよび2GHz両方に対応したデュアルバンド対応サービスを提供するとしている。特にKDDIは、現在800MHz帯でサービスを提供しているが、既に割り当てられている2GHz帯だけでも現在の全ユーザーを収容できる余裕はあるはず。マルチバンド対応にしてユーザーに機種変更を促せば、800MHz帯が逼迫していたとしても、2GHz帯を利用できれば良いのだし、帯域全体が逼迫するというのはあり得ない。ユーザーがこれから倍増するのか? 絶対数は変わらないのだから、バッファが必要なだけ。マルチバンドならフレキシブルにユーザーの着地点を用意できる」とマルチバンド対応のメリットを主張。新規事業者への800MHz帯割当を2012年まで待つのは、納得できないとした。

 なお、これまで国内の携帯電話において、複数の周波数帯域に対応する携帯電話は、NTTドコモのムーバ端末で800MHz帯と1.5GHz帯に対応する機種が存在している。また今後は、孫氏が触れたように、ドコモ・KDDIがそれぞれ800MHz帯と2GHz帯の両方に対応する機種を投入していくことを明らかにしている。

 マルチバンド対応が今後の主流になっていく可能性はあるものの、その結果、端末価格が高くなる懸念もある。これについて孫氏は「部品メーカーに確認したところ、数百万台規模であれば、マルチバンド対応チップは1つ3ドル程度になると聞いている」と述べ、コスト高に繋がらないとした。

 それに対してKDDI小野寺氏は「当社で予定している800MHz・2GHzのデュアルバンド端末は、現時点で2GHzから800MHzへの切り替えしかできない。チップを載せるだけではなく、ソフトウェア側での制御も必要」と語り、コストアップに繋がる要因が存在するとした。しかし、孫氏はソフトウェア開発にかかる投資額は「誤差の範囲」と一蹴した。

 また、ボーダフォン執行役の津田 志郎氏は「ワイヤレスの世界では低い周波数のほうが技術を実用化しやすかった。マルチバンドはあくまで限られた周波数を活用するために現実的な解ではあるが、ソフトウェアによるハンドオーバーは、周波数帯が異なると伝搬特性も異なり、非常に微妙な技術。マルチバンドの是非によって新規事業者の数を検討することはちょっと方向性が異なるのではないか」と述べた。


新たな割当はどの程度になるのか

左からKDDI 代表取締役社長 小野寺正氏、同社技術統轄本部 技術企画本部長 沖中秀夫氏、NTTドコモ代表取締役社長 中村維夫氏、同社代表取締役副社長 石川國雄氏
 既存・新規どちらに割り当てられるにせよ、電波そのものが限られた資源であるため、「1事業者に周波数をどの程度割り当てるべきか」というのは大きな課題の1つ。ドコモ中村氏は、「一般的には1MHz幅で100万人くらいのイメージ」としたほか、KDDI小野寺氏は「トラフィックのピークに対応しなければいけない。その水準は保証すべきで、水準維持のためにどの程度周波数幅が必要か申し立てている」と説明。

 イー・アクセス代表取締役COOの種野 晴夫氏は「10MHzあれば充分で、750万人ほど収容できると見ている。新規参入としては充分ではないかと思うが、今の段階でどの程度の事業規模になるか、見当をつけるのは難しい」と語った。

 またソフトバンクBB孫氏は「固定網で1,100万人のユーザーを抱えているが、携帯電話事業ではボーダフォンやKDDIと同じ程度の周波数幅が欲しい。20MHz×2あれば、とりあえずスタート時点での競争はできる」とした。

 各社の意見は、事業規模によって必要な周波数幅は異なるとの点で一致しているが、既存組は今後の需要を含んだ余裕分を求め、一方の新規組の主張は既存組の余裕は必要なく、新規事業者へ優先的に割り当てるべきとしている。


議論に必要なデータの開示を

 今回を含めて、本検討会では各社からそれぞれの根拠に基づく主張がなされている。このため構成員からは、1MHzあたりのユーザー数など客観的に判断できるデータを求める声が相次いだ。

 ボーダフォン津田氏は「スループットがどの程度なのか、という点も絡んでくる。どういう条件でのサービスなのか、はっきりしないと公平性が保てない。音声以外でどういう物差しが必要なのか、それがわからなければ共通認識下での議論が成り立たない」とした。またイー・アクセス種野氏は「電波の有効活用という点だけではなく、政策としてどうするのか。複数の新規事業者が同じ技術で参入するというのが望ましいのではないか」と語った。

 またソフトバンクBB孫氏は、「プロ野球の新規参入と時期も重なって、似ている部分はあるが、一部の既存事業者だけ、あるいは一部の周波数帯だけを除いた議論ではなく、全てを対象とした形にして欲しい」と訴えた。

 これらを踏まえ、次回会合には、NTTドコモおよびKDDIからは800MHz帯と2GHz帯で全国をカバーするために必要な基地局数と設備投資額に関する資料が、ソフトバンクBBからは携帯電話事業において800MHz帯がどの程度有利なのかという資料が、ボーダフォンからは1.5GHz帯を利用したことが何らかの障壁になったのかどうかという資料が提出される。



URL
  携帯電話用周波数の利用拡大に関する検討会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/keitai-syuha/

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(関口 聖)
2004/11/08 15:36

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