ケータイ Watch
連載バックナンバー
速報「着実な進化で一段と完成度を高めたiPhone 3GS」
[2009/06/24]

「去年と違う夏。」を体験させてくれるau2009年夏モデル
[2009/05/26]

19機種61色でコンテンツ利用拡大を狙うソフトバンク夏モデル
[2009/05/21]

「ひとりひとりのあなたへ」で幅広い期待に応えるドコモ夏モデル
[2009/05/20]

速報レポート~Windows Mobileの新時代を切り開く東芝「T-01A」
[2009/05/19]

決算会見で見えてきた三社三様の「ケータイのこれから」
[2009/05/12]

家庭のひかり電話でFMCが実感できる「SIPクライアント」
[2009/04/22]

ネットワークと連携するスマートフォン「BlackBerry Bold」
[2009/04/10]

デザイン力を柱にライフスタイルをデザインする「iida」
[2009/04/08]

データ通信サービスで見えてくる各社のネットワーク事情
[2009/02/26]

インターネットマシンの次を探るソフトバンク春モデル
[2009/02/02]

生活に溶け込むモデルを新名称で展開するau春モデル
[2009/01/30]


2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

モバイルセントラル
モバイルセントラル一覧へ
モバイルCatchUpタイトルLOGO
19機種61色でコンテンツ利用拡大を狙うソフトバンク夏モデル
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 5月19日、ソフトバンクは2009年夏モデルとして、同社史上最多となる19機種61色のラインアップを発表した。2年連続純増No.1を記録し、決算会見では「収穫期に入った」とする同社だが、新しいジャンルの端末を含め、ラインアップを拡充する一方、コンテンツの利用を拡大するための施策も発表した。発表会の詳細な内容は、詳細な本誌レポートが掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が発表会やタッチ&トライで試用した端末の印象を紹介しながら、ラインアップや同社の目指す方向性などについて、考えてみよう。


2年連続純増No.1を活かすために


 2009年春モデルの発表会では、お笑い芸人を起用した「バラエティショーのような新商品発表」を行い、業界内を驚かせたソフトバンク。ただ、従来のような商戦期ごとのキーワードが示されないうえ、新鮮な印象を持って見ることができる端末ラインアップも限られていたため、内容的には今ひとつ消化不良の感が残った。

 しかし、その一方で、ソフトバンクの市場での勢いは継続している。月々の新規契約数から解約数を差し引いた「純増」では、ついに24カ月連続の首位を守り、年間での集計でも2年連続の純増No.1を達成している。その理由にはさまざまな要素があり、ホワイトプランをはじめとする料金施策が効果的だったとも言われるが、ボーダフォン時代と比べ、端末ラインアップが大きく変わったことも関係している。

 元々、同社はJ-フォン、ボーダフォン時代からカメラ付きケータイや初のアナログTVチューナー搭載端末など、話題性のある端末をリリースしてきたが、3G時代に入ってからはデザインやスペック面でやや出遅れてしまった感があった。ところが、ソフトバンクがボーダフォンを買収して以来、端末のデザインや仕上げは急速に改善され、他事業者と比べてもまったく遜色ないラインアップが展開されてきた。この春にボーダフォン買収から約3年、ソフトバンクブランドで端末が発売されてから約2年半を迎えたが、もはやボーダフォン時代(特に、Vodafone 3G時代)のイメージはほぼ完全に払拭され、街中でもボーダフォンのロゴマークであるスピーチマークの付いた端末を使っている人を見かけることも少なくなりつつある(決して、いないわけではないが……)。

 端末ラインアップを充実させ、24カ月純増No.1を記録したソフトバンクだが、必ずしも事業が今後も順風満帆で、ご安泰というわけではない。4月に行われた決算会見で、孫社長は「携帯電話事業は収穫期に入った」と述べたが、毎月の契約者数が増え続けるだけでは、必ずしも十分な収穫ができるわけではない。特に、ソフトバンクの場合、ボーダフォン買収時の莫大な借金があり、それを順調に返済するためにも継続的に事業を成長させていかなければならない。


 そのカギを握っているのがデータARPUだ。本コラムの『決算会見で見えてきた三社三様の「ケータイのこれから」』でも触れたように、ソフトバンクは他社に比べ、データARPUが低い。しかし、その一方で、iPhone 3Gのようにフルインターネットとほぼ変わらないデータ量を転送されてしまうと、ネットワークに負荷が掛かり、音声サービスなどに影響が出てしまうため、ソフトバンク自身としてはあまりうれしくない。昨年11月に行われた総務省の公開ヒヤリングの席において、同社取締役専務執行役員兼CTOの宮川潤一氏が「約5万パケットで定額制上限になるが、トラフィックを増やさず、いかにうまく料金をいただくかを検討しているところ」とコメントしていたが、ソフトバンクとしてはネットワークに必要以上の負荷を掛けない程度に、パケット通信料が定額制の上限に達するような「バランスのいい使われ方」が望ましいわけだ。


 今回、ソフトバンクからは同社史上最多となる19機種61色のラインアップが発表されたが、実は多彩なラインアップ以上に注目されるのが同時に発表された「かんたんミュージック」「選べるかんたん動画」に代表されるコンテンツサービスだ。このコンテンツサービスこそが前述の「バランスのいい使われ方」をうまく具現化したものだからだ。

 いずれも基本的な仕組みは、今年1月に発表された「S-1バトル」とほぼ同じで、それぞれのサービスに申し込んだユーザーに対し、メールが送られ、メールに記載されているURLをクリックすると、それぞれのコンテンツ専用ページが表示され、コンテンツが利用できるというものだ。かんたんミュージックであれば、楽曲の試聴をしたり、着うたフルの購入ができ、選べるかんたん動画であれば、動画が登録された専用ページにアクセスし、リンクをクリックして、動画を閲覧することができるわけだ。転送する音楽データや動画はいずれもケータイ向けに最適化されたものであり、すべてのユーザーが一斉に動画を閲覧したり、着うたフルをダウンロードするわけではないので、ネットワークへの負荷もある程度、軽減できるという目論見だろう。

 いずれのサービスもメールをコンテンツにアクセスするトリガーにしているだけで、しくみとしては非常にシンプルだが、選べるかんたん動画についてはプロ野球やサッカーのJリーグ、海外サッカー、格闘技など、8ジャンル37コースが用意されており、2コースまでは月額情報料を無料で視聴できる。発表会にゲストで登場した江川卓氏や桑田真澄氏が語っていたが、動画という観点で見た場合、テレビは放映時間が決まっていて、番組の長さも限られているため、どうしても取り上げるチームが偏る傾向にある。こういったサービスであれば、自分のごひいきのチームのダイジェストだけ視聴できるので、ファンやサポーターとしてはかなり魅力的だろう。もちろん、同様のサービスは他事業者でも過去に展開されたことがあるが、しくみがシンプルであるため、ユーザーにも理解しやすく、一定の範囲内であれば、情報料も無料であるため、取っつきやすい印象を受けた。それほど派手なサービスではないものの、ソフトバンクらしい工夫のサービスと言えそうだ。



9XXシリーズ8機種を中心に魅力的な端末をラインアップ

 さて、続いてはいつものように、発表会後のタッチ&トライコーナーで実機を試用した印象について、お伝えしたいところなのだが、19日に掲載されたニュースを見てもわかるように、ソフトバンクとNTTドコモが同日発表となり、その時間差もわずかしかなかったため、いつも以上に試用時間が短く、十分な情報をお伝えできないことをお断りしておく。同時に、今回試用した端末は、いずれも開発中のものであり、出荷時には仕様や印象が変わっている可能性があることをご理解いただきたい。各機種の詳しい情報については、ぜひ本誌のレポート記事を合わせて、ご覧ください。


AQUOS SHOT 933SH(シャープ)

 昨年来、シャープが発売してきたCCD 800万画素カメラ搭載の930SHや931SH、932SHの上を行くCCD 1000万画素カメラを搭載した端末だ。910SH以来、かなり久しぶりの二軸回転式ボディを採用し、撮影時のシーン自動認識や顔検出、コンティニュアスAF&チェイスフォーカスなど、コンパクトデジタルカメラに迫る性能と使い勝手を実現している。タッチスクリーンの操作性もユーザーインターフェイスから改良されており、フラッグシップモデルらしい仕上がりとなっている。今回発表された他の9XXシリーズのシャープ製端末に共通しているが、同社のブルーレイディスクレコーダーで録画した番組をケータイに転送して、視聴することもできる。


mirumo 934SH(シャープ)

 トップパネルにサブディスプレイとして、3.0インチの大画面メモリ液晶を採用した防水端末だ。メモリ液晶は反射型液晶の一種で、常に情報が表示されるため、時計などを表示するだけでなく、お気に入りのグラフィックや写真、メール、S!速報ニュースのコンテンツなども閲覧できる。バックライトがないため、真っ暗な場所では見えないが、室内での視認性も非常に良く、常に何らかの情報が表示されているのも新鮮な印象だ。メモリ液晶以外の部分は同時発表のTHE PREMIUM WATERPROOF 935SHをベースにしており、ほぼ共通仕様となっている。


SOLAR HYBRID 936SH(シャープ)

 太陽光で充電ができるソーラーパネルをトップパネル内に装備した防水ケータイだ。ソーラーパネル部分以外は、同時発表のTHE PREMIUM WATERPROOF 935SHをベースにしており、スペックはほぼ共通となっている。今回は残念ながら、モックアップのみの展示だった。電子機器でソーラーというと、電卓などを思い浮かべてしまうが、ケータイは消費電力が大きいため、充電できるのは太陽光のみで、室内の蛍光灯などでは充電ができない。しかし、約10分の太陽光充電で、約2時間の待受延長、約1分の通話ができるため、屋外での利用が多いユーザーにとってはかなり魅力的な端末と言えそうだ。


THE PREMIUM WATERPROOF 935SH(シャープ)

 昨年発売され、各方面で好評を得た「THE PREMIUM WATERPROOF 824SH」を進化させた上位モデルだ。スリムな折りたたみデザインを採用するが、IPX5/IPX7相当の防水性能を持つ。AQUOS SHOT 933SHと比べ、カメラがCCD 800万画素になり、GPSに非対応で、タッチスクリーンではない点などが異なる。mirumo 934SHやSOLAR HYBRID 936SHのベースとなっており、その他のスペックはほぼ共通仕様となっている。


931N(NEC)

 ディスプレイ部分を90度ずつ回転させながら開くStyle Changeを採用した端末だ。ハードウェアは同日に発表されたNTTドコモのN-06Aをベースにしている。残念ながら、今回はモックアップのみの展示だった。IEEE802.11a/b/g準拠の無線LAN機能を搭載し、ソフトバンクが提供する「ケータイ無線LAN」により、自宅のブロードバンド回線経由でYahoo!ケータイなどにアクセスできるが、利用できるのは基本的にデータ通信のみで、NTTドコモが提供しているような050IP電話サービス(ホームU)は提供されない。


930N(NEC)

 13.9mmのスリムボディを実現した折りたたみデザインの端末だ。ハードウェアは同日に発表されたNTTドコモのN-08Aをベースにしている。6軸手ブレ補正やスマイルモードに対応した810万画素カメラ、端末開閉時の派手なキーイルミネーションなども継承されており、女性ユーザーを中心に人気の出そうな端末だ。


931P(パナソニック)

 930Pに引き続き、2WAYキーとWオープンスタイルを採用したVIERAケータイだ。ハードウェアは同日に発表されたNTTドコモのP-07Aをベースにしている。810万画素カメラにはLUMIXシリーズでも採用されている「おまかせiA」が搭載されており、被写体にカメラを向けるだけで、顔や風景、接写など5つのシーンを自動認識する。930Pでもプリインストールされていた「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」などがプリインストールされる。2WAYキーの一部キーのプリントに色が付けられている工夫も930Pから継承されている。


OMNIA POP 931SC(サムスン電子)

 昨年発売されたOMNIA 930SCをベースに、ボディサイズをひと回り小さくコンパクトにまとめたタッチスクリーン端末だ。女性ユーザーを意識し、ボディカラーなどのデザインをその名の通り、少しポップに仕上げている。カメラで撮影した写真にプリクラ感覚で落書きができる「お絵かきアニメ」は、メールや赤外線でも送信できる。ハードキーを持たない点やウィジェットが独自であるなど、細かい部分は気になるが、絵ゴコロのあるユーザーにはかなり遊べる端末と言えそうだ。


832P(パナソニック)

 ソフトバンク向けでは初となる薄さ10mmを実現したスリムモデルだ。ハードウェアはNTTドコモが販売するP-04Aをベースにしているが、トップパネルにイルミネーションを内蔵したオーナメントを装着したり、10個の辞書・事典を内蔵するなど、全体的にオリジナルの端末として仕上げられた印象だ。辞書機能はMULTIキーの長押しで起動できるなど、使い勝手も考えられているが、「誕生日大百科」など、今までにない新しい辞書が収録されている点も注目できる。


832SH(シャープ)

 2009年春モデルとして登場した831SHをベースに、ワンセグとおサイフケータイを省き、シンプルさを追求したモデル。シンプルとはいうものの、モバイルウィジェットなどの最新サービスにも対応し、スマートリンク辞書やカラーベールビューなどの機能も充実しており、価格次第ではかなりお買い得感の高いモデルと言えそうだ。


831N(NEC)

 歩数計やワンタッチオープンなど、使いやすさと実用性を重視した端末だ。ハードウェアはNTTドコモが販売するN-05Aをベースにしている。かんたん携帯ほど、やさしいケータイである必要はないが、ある程度、わかりやすく、使いやすい端末が欲しいというアクティブなシニアユーザー向けのモデルだ。ソフトバンクとしては初の緊急地震速報に対応する。


GENT 831SH s(シャープ)

 大人向けのケータイとして、定着してきたGENTシリーズの最新端末。2009年春モデルとして登場した831SHをベースにする。読みやすい大きな文字のメニュー画面、わかりやすい表現の文言など、GENTシリーズのコンセプトはそのまま受け継がれている。打ちやすいでおなじみのアークリッジキーも継承され、キープリントも日本語表記でわかりやすい。


かんたん携帯 832T(東芝)

 昨年発売されたかんたん携帯821Tの後継モデルだ。821Tは発表後、NTTドコモと富士通との間で、販売・製造差止訴訟も起きたが、先月に和解が成立している。ディスプレイ下のワンタッチダイヤルに自宅ボタンが追加されたり、端末を閉じる操作に連動して、1日1回メールが家族などに送信されるなど、新しい工夫も盛り込まれている。従来モデルにはなかったワインレッドがカラーバリエーションに加わっている。


740SC(サムスン電子)

 スリムでスクエアなデザインを採用した折りたたみデザインの端末だ。今回はモックアップのみの展示となった。ラインアップの位置付けとしては、2009年春モデルとして登場した731SCの後継になるが、日本のユーザーにはなじみやすい折りたたみデザインを採用し、カメラも200万画素になるなど、低価格モデルとは言え、こちらの方が売れそうな印象だ。


830SC EMPORIO ARMANIモデル(サムスン電子)

 世界的なファッションブランドとして知られるGIORGIO ARMANIのコラボレーションモデル。端末のソフトウェアは2009年春モデルの731SCをベースにするが、300万画素カメラを搭載するなど、8XXシリーズらしいスペックに仕上げられている。特徴的なのはストレートタイプのボディ側面のロゴと周囲を一周するように埋め込まれたLEDで、東京の夜を意識して、デザインされたというだけあって、発着信時などにかなり派手に光る。


Photo Vision HW001(Huawei)

 7インチのワイドディスプレイに通信モジュールを内蔵させたフォトスタンドで、受信したメールに添付されている写真を自動的に表示することができる。フォトスタンドの額の部分にタッチパネルが内蔵されており、順送りに写真を表示したり、自動的にスライドショー表示に切り替えることができる。今までありそうでなかったコンセプトの商品で、月額980円の定額プランで利用できることから、離れたところに住む家族や友だちにプレゼントする形などで普及することが期待される。標準デザインのモデルとは別に、ハローキティモデルも用意される。


IdeaPad S10 通信モジュール搭載モデル(Lenovo)

 昨年末にLenovoから発売されたネットブック「IdeaPad S10」に、通信モジュールを搭載したモデルだ。プロバイダー契約などは不要で、専用ユーティリティからダイヤルすれば、すぐにソフトバンクの3Gネットワークに接続される。ただし、定額制料金プランが適用されないため、上限額のない状態で使わなければならない。おそらく、法人向けなどで、特定の用途に採用されるのだろうが、定額制プランのない状態で一般向けに販売してしまうのは、ちょっと不安も残る。ちなみに、IdeaPad S10は他のネットブックなどと違い、ディスプレイの縦の解像度が576ドットになっており、既存のアプリケーションなどがちょっと使いにくいかもしれない。


DM004SH(シャープ)

 従来モデルに比べ、少し落ち着いたデザインを採用したディズニーモバイル端末第4弾。ミッキーマウスのグラフィックなどがさりげなく使われている。ハードウェアのベースモデルはソフトバンクの2009年春モデルとして登場した831SHだが、ディズニーモバイルとして、初めてウィジェットに対応するなど、部分的には831SHを上回る仕様となっている。


ユーザーに伝えたいものは何ですか?

 読者のみなさんは、ソフトバンクにどんなイメージを持っているだろうか。置かれている立場の違いによって、いろいろなイメージがあるかもしれない。4月の決算会見において、孫社長は自ら「ソフトバンクは荒っぽい経営をする会社と捉えられることが多い」と説明していたが、サービスを利用するユーザー側から見れば、何か新しいことをやってくれるかもしれないという期待感を持たせてくれたり、ホワイトプランの月額980円のように、ユーザーが取っつきやすいわかりやすさを上手にアピールしてきた印象がある。しかし、その一方で、少し歪んだ見方をしてしまうと、「内容はともかく、話題作りや演出がうまい」という解釈をする向きも多い。実は、今回の発表も19機種61色の端末ラインアップ、コンテンツの利用を拡大するための「かんたんミュージック」や「選べるかんたん動画」など、なかなか魅力的な発表内容だったのだが、それらとは別の次元で、話題作りをしているような印象があるのだ。

 前述の通り、ソフトバンクは今回、NTTドコモの発表会と同日の午前中に発表会を催している。これにより、19日夜のニュース番組などでは両社の発表内容が報じられ、かなり露出が増えている。もう賢明な読者のみなさんなら、お気づきだろうが、こうしたテレビなどでの一時的な露出を増やすため、ソフトバンクは意図的に他社と同日発表を行っているようなのだ。本誌のバックナンバーを参照していただければわかるが、実はソフトバンクになって以来、各商戦期ごとの発表会を10回、催したのだが、その内の半数に相当する5回も他社の発表会と重なっている。「競争なんだから、ライバル会社と同じ日に発表会を当てて、何が悪い?」「同日発表で露出が増えるんなら、それでいいじゃないか」といった声もあるかもしれない。

 本誌のようなメディアが1日に2つの発表会を取材することが労力的にかなり大変であることは別にして、一時的な露出を増やすために、こういった手法で発表会を催すことが本当に正しいのかどうかは、疑問が残る。今年、NTTドコモのiモード、auのEZwebは揃って、10周年を迎えた。名称は変わってしまったが、Yahoo!ケータイの前身であるJ-スカイも10年になる。残念ながら、もうブランドは残っていないが、ソフトバンクモバイルの前身のひとつであるJ-フォンの全国統一ブランド展開もちょうど10年だ。

 この10年で国内のケータイは1億契約を突破するところまで成長し、端末やサービスも世界に類を見ないほど、進化を遂げた。時として、ガラパゴスと揶揄されることもあるが、そういった捉えられ方をされてしまう背景には、早すぎた進化に追い付けなかった人たちが持つ不満や違和感もあれば、最先端ばかりを追求してしまう業界各社の姿勢も少なからず影響を与えているように見受けられる。最近、会見では記者が「市場がシュリンク(収縮)する中、御社は……」といった質問が出ることが多いが、進化を続けた10年を経て、国内のケータイ市場がひとつのターニングポイントを迎えていることは誰の目にも明らかだ。


 しかし、だからといって、ユーザーがケータイを使わなくなるわけでもなければ、ケータイが他の何かに置き換わっていくわけでもない。こうした厳しい環境にある今だからこそ、商品やサービスを丁寧に説明し、ユーザーによく知ってもらうための努力をするべきではないのだろうか。進化を続けた10年を次なる10年につなぐための取り組みをする時期を迎えているはずなのだが、ソフトバンクについてはどうも目先の話題作りに注力するあまり、本来の果たすべき説明が十分にできていないように見受けられるのだ。次なる10年が「成熟」なのか、「衰退」なのか、「成長」なのかはわからないが、少なくともユーザーに端末やサービスの内容をしっかりと理解してもらわなければ、ソフトバンクが目指すコンテンツの利用拡大にも結びつかないだろうし、事業の成長も果たせないのではないだろうか。

 今回、ソフトバンクが発表した端末には、興味深い新機軸のものも多い。たとえば、Huawei製のPhoto Visionは、ケータイの技術をうまく活かしたコンセプトの商品であり、ケータイに慣れ親しんでいないような世代の人たちにもメリットを理解してもらえる面白い商品だ。また、シャープ製端末が対応したブルーレイレコーダーとの連携も録画したドラマの続きを通勤や通学時に見るといった新しいケータイの使い道を手軽に実現できる。OMNIA POPのプリクラ感覚で遊べるお絵かきアニメも女性ユーザーの反応が楽しみな端末だ。「選べるかんたん動画」のプロ野球やサッカーのチーム別コンテンツもかなり期待が持てそうだ。

 せっかく、これだけ興味深い端末や機能、サービスを発表していながら、同日発表になってしまったために、多くの記者はNTTドコモの発表会までのわずか数十分しか体験することができず、その楽しさや面白さは多くの人に伝えられないかもしれないのだ。厳しいかもしれないが、ソフトバンクが24カ月に渡り、純増No.1を記録している一方、機種別のランキングではiPhone 3Gを除き、新機種の売れ行きが鈍く、旧機種ばかりが売れてしまうのは、市場が縮小する影響もあるものの、こうしたユーザーへの説明不足も少なからず影響を与えているのではないだろうか。

 さて、今回発表された19機種は、早いものは今月から販売が開始され、遅いモデルは秋口に発売を待つことになるそうだ。本稿では必ずしも十分に機種の使い勝手や特徴をお伝えできていないのは非常に申し訳ないが、本誌掲載の発表会の詳細なレポート記事や今後掲載される予定のインタビュー記事、レビューなどをチェックして、ぜひ、お気に入りの一台を見つけていただきたい。



URL
  ソフトバンクモバイル
  http://mb.softbank.jp/mb/

関連記事
ソフトバンク、夏モデル19機種を発表
ドコモ、夏モデル18機種を発表


(法林岳之)
2009/05/21 15:59

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.