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「ひとりひとりのあなたへ」で幅広い期待に応えるドコモ夏モデル
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速報レポート~Windows Mobileの新時代を切り開く東芝「T-01A」
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「ひとりひとりのあなたへ」で幅広い期待に応えるドコモ夏モデル
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 5月19日、NTTドコモは5月22日から順次、販売が開始される2009年夏モデル18機種を発表した。昨年11月に発表された4つのシリーズで構成される新ラインアップを継承するものだが、プラットフォームにGoogleのAndroidを採用したスマートフォンを加えるなど、ユーザーの幅広いニーズに応えられる充実したラインアップとなっている。同時に、iモードもブラウザをはじめとした仕様を大幅に拡張するなど、従来モデルよりも一段とジャンプアップした印象だ。発表会の詳細な内容は、すでに本誌レポートが掲載されているので、そちらを参照していただきたいが、ここでは筆者が発表会やタッチ&トライで試用した端末の印象、ラインアップ全体の捉え方などについて、紹介しよう。


4つの新ラインアップとiモード10年目の進化

 今年2月、NTTドコモはiモードサービス開始から10周年という節目を迎えた。この10年という節目と前後する形で、NTTドコモはこの1年間、さまざまな変革を遂げてきた。

 たとえば、約1年前の2008年4月には「新ドコモ宣言」とともに、ロゴを含めたコーポレートブランドを一新した。業界でもっとも古いブランドロゴを捨て去り、それまで曖昧だったコーポレートカラーを「ドコモレッド」と呼ばれるハッキリとしたものに決め、イメージを一新することに成功した。

 これに続き、昨年11月にはmova(ムーバ)時代から続いていた「高機能モデル」「普及モデル」というラインアップ構成を見直し、ユーザーの価値観やライフスタイルに合わせたラインアップとして、新たに「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」という4つの新シリーズを発表した。新ドコモ宣言をはじめとする取り組みがNTTドコモの企業としての姿勢やイメージを変えたものあるのに対し、端末ラインアップはユーザーから直接、見て、触れる製品群をネーミングルールとともに一新することで、生まれ変わったNTTドコモを演出しようとした。


1年1カ月前、「新ドコモ宣言」が発表された(写真は現ドコモ相談役、当時社長の中村維夫氏) 昨年11月には4つの新シリーズが発表された
1年1カ月前、「新ドコモ宣言」が発表された(写真は現ドコモ相談役、当時社長の中村維夫氏) 昨年11月には4つの新シリーズが発表された

左が新しいiモードの仕様に基づくiメニュー。右は従来型iメニュー

左が新しいiモードの仕様に基づくiメニュー。右は従来型iメニュー
 そして、今回の2009年夏モデルの発表では、昨年11月に発表した端末の後継モデルを中心にラインアップを拡充し、さらに幅広いユーザーのニーズに応えようとしているが、主力であるiモード端末については、10年の節目を機に、ブラウザなどの仕様を拡張し、LTE時代を見据えた新しいiモードへ進化しようとしている。iモードはビジネス的に世界でもっとも成功したモバイルインターネットサービスだと言われるが、端末との連動による高度なサービスが実現される一方、端末に搭載される仕様がしっかりと決められており、特にブラウザ周りについてはパソコンのインターネット環境に比べ、自由度が低いとされている(その分、メリットも多いのだが……)。

 しかし、インターネット環境はWeb2.0以降、大きく進化を遂げ、多彩なコンテンツが登場しており、今回のiモードブラウザの拡張もこうした動きの影響を受けたものになる。端末ではブラウザ利用中の左右キーの操作が開放され、コンテンツについてはページサイズの拡大やインラインFLV動画の再生、WMVフォーマットの対応、JavaScript対応となることで、今までよりもクオリティの高いコンテンツやサービスが生まれてくる可能性が高い。ただし、その分、パケット通信料も高くなるため、ユーザーとしては5月から開始額が値下げされた「パケ・ホーダイ ダブル」への加入を検討した方が安全だろう。


iアプリタッチは、対応機種同士をかさねて紐付けて、ゲーム対戦できる
 新サービスやユーザビリティの面でも注目できるところは多い。たとえば、iアプリタッチはFeliCaのiC通信を使い、Bluetoothのペアリングを簡単にしようというものだが、Bluetoothを利用した対戦ゲームだけでなく、Bluetoothでペアリングされた2台が離れたところにいる他のペアリングされた2台と対戦できるといった使い方も考えられており、iアプリオンラインなどへの発展も期待できる。

 機種変更時の設定情報の引き継ぎも興味深い。簡単に言ってしまえば、機種変更したときに旧機種で設定していたアラームや文字入力、発着新設定などの情報を新機種に引き継ぐというものだが、この実現はかなり難しかったのではないかと推察される。というのも設定情報を引き継ぐためには各端末の設定情報の管理が統一されている必要があるうえ、端末プラットフォームもLinux系とSymbian系で分かれているからだ。プラットフォームが統一されている他社ができていないのに、NTTドコモが先にできてしまうあたりも変革の証のひとつと言えるかもしれない。


夏モデルのコンセプト

夏モデルのコンセプト
 次に端末についてだが、決算会見では今後の成長株としてスマートフォン市場の成長に期待を寄せている旨が明らかにされ、今回はWindows Mobileに加え、従前から注目を集めていたGoogleの端末プラットフォームである「Android」を採用したモデルも登場した。Androidについてはまだ未知数の部分が多いが、ユーザーとしても新しい選択肢が増えることは歓迎できる。

 各機種の概要については後述するが、今回のラインアップにはいくつか特徴的な部分がある。全体的にはユーザーの価値観やライフスタイルで分けてきた4つのシリーズに、従来の情緒的な価値観に加え、機能的な価値を加えている。これはスペックでシリーズを分けるということではなく、各商戦期のタイミングでそれぞれのシリーズごと、あるいは機種ごとに特徴的な機能が搭載されることを意味する。たとえば、今回のSTYLEシリーズでは6機種中3機種に防水モデル、PRIMEシリーズでは6機種中3機種が8Mカメラ、1機種が10Mカメラを搭載し、カメラ機能の使い勝手も強化するなど、各シリーズごとにある程度の傾向を持たせている。

 また、昨年11月に発表された4シリーズは、従来の90Xi/70Xiシリーズのイメージが強いうえ、ネーミングルールの変更で区別をしにくくしたように見えてしまい、一部には「PRIMEシリーズが90Xi、STYLEシリーズが70Xi」のような誤解も生まれた。今回の2009年夏モデルも同一ルールで型番が付けられ、各シリーズに振り分けられているが、一部のモデルを除き、従来よりも少し各シリーズごとの傾向がハッキリしてきたようにも受け取れる。


2009年夏モデルのPRIMEシリーズ
2009年夏モデルのPRIMEシリーズ

 全体の分布についても少し見てみよう。メーカー別ではシャープが4機種(内1機種は同一モデルをベースにしたコラボレーションモデル)、NECが4機種、パナソニックが3機種と多く、これに富士通とLGエレクトロニクスが続くが、富士通は3月にらくらくホン ベーシックIIを開発し、NECとパナソニックも3月に従来の706ieシリーズの後継モデルとなる「N-05A」と「P-06A」をリリースしているため、実質的にはシャープ、NEC、パナソニックc、富士通の4社がほぼ拮抗した状態となっている。ただ、パナソニックは今回発表されたモデルに「P-10A」という型番があることからもわかるように、すでに新シリーズで10機種めを開発しており、機種数の多さでは他社を一歩リードしている。


STYLEシリーズ
STYLEシリーズ

 シリーズ別ではSTYLEシリーズとPRIMEシリーズが6機種ずつ、SMARTシリーズが2機種、PROシリーズが3機種、PRIMEシリーズをベースにしたコラボレーションモデルが1機種だが、STYLEシリーズとPRIMEシリーズの多くは昨年11月に発表されたモデルの後継であるのに対し、SMARTシリーズとPROシリーズは基本的に追加モデルとなるため、店頭での各シリーズのモデル数の差はそれほど大きくない。この分で行くと、今後はSTYLEシリーズとPRIMEシリーズを積極的に入れ替えつつ、SMARTシリーズは少し長いスパン(1年程度?)でモデルチェンジを行い、PROシリーズはOSのバージョンアップや新しいプラットフォームの採用など、各製品ごとのライフサイクルに合わせて、ラインアップを拡充していくことになりそうだ。


SMARTシリーズ PROシリーズ
SMARTシリーズ PROシリーズ

 次に、従来の90Xi/70Xiシリーズを分けてきたような機能や対応サービス面での違いはどうだろうか。たとえば、約1年前にスタートしたFOMAハイスピードの下り7.2Mbps対応は全18機種が対応し、新たに「L-06A」が上り方向で最大5.7MbpsのHSUPAにも対応しており、LTEがサービスインするまで、今後はHSUPA対応が注目になりそうだ。国際ローミングのWORLD WINGは18機種中16機種が3G+GSMの両対応となっており、こちらもほぼ標準機能になりつつある。日本のケータイには欠かせないワンセグとおサイフケータイについてはいずれもスマートフォンの2機種を除く、16機種が対応しているが、注目すべきはLGエレクトロニクスが従来のワンセグ対応に加え、おサイフケータイにも対応してきた点だ。残念ながら、トルカとiC通信には未対応だが、海外メーカーであるにも関わらず、日本の仕様に積極的に対応してきた同社の姿勢は高く評価できるものだろう。

 逆に、搭載・非搭載、対応・非対応が分かれているのは、ハードウェア面ではGPSやBluetoothなどで、サービス面ではBluetoothとおサイフケータイとの関係上、iアプリタッチの対応が若干、分かれる程度だ。スペック面は各端末ごとの特徴でもあるため、相応に違いがあるが、カメラはケータイ初採用となるSH-06A(及びSH-06A NERV)とSH-07Aの1000万画素を筆頭に、800万画素クラスが7機種、500万画素クラスが3機種、320万画素クラスが5機種となり、半年前に業界最高峰と言われた800万画素クラスがすでにミッドレンジになっている印象すらある。ディスプレイについてはフラットデザインのT-01Aの4.1インチを筆頭に、全機種が3インチ以上を採用しているが、解像度はP-10AのフルワイドQVGA、Android端末のHT-03AのハーフVGAを除き、全機種がワイドVGA以上となっている。特に、iモード端末については、前述の通り、iモードブラウザの仕様が変更され、VGA対応コンテンツの作成も可能になったため、基本的にはVGA以上が標準ということになりそうだ。


「ひとりひとりのあなたへ」で応える期待の4シリーズ

 さて、ここではいつものように、発表会後のタッチ&トライコーナーで試用したファーストインプレッションを紹介しよう。ただし、発表された機種数が18機種と多く、十分な試用時間が採れなかったため、十分な情報がお伝えできないかもしれない点はお断りしておく。また、発表会で展示された端末は、いずれも最終的な製品ではないため、実際に市場に出荷されたときと違いがあるかもしれない点も合わせて、ご了承いただきたい。各機種の詳しい情報については、ぜひ本誌のレポート記事も合わせて、参照して欲しい。





【STYLEシリーズ】
 「“自分らしい”がきっと見つかる。選べるファッショナブルケータイ」というキャッチコピーが与えられたSTYLEシリーズは、主に20~30代の女性をメインターゲットにしたラインアップで、今年4月のNTTドコモの端末販売では50%を超えるユーザーがSTYLEシリーズを購入しているという。機能面から見てみると、今回は6機種中3機種の防水対応がひとつの特徴だが、カラーバリエーションやデザインが個性的なモデルも多い。形状では折りたたみが3機種、スライドが2機種、Wオープンが1機種で構成される。


F-08A(富士通)

F-08A

F-08A
 従来のF-02Aと同じく防水に対応した折りたたみデザインの端末だが、3G+GSM国際ローミングやiコンシェル、iウィジェットに対応するなど、F-02Aよりもややスペックが向上した印象だ。防水はIPX5/7/8対応となり、もっとも充実した仕様となっている。意外に面白いのがエクササイズカウンターで、モーションコントロールセンサーによる歩数計では測定できなかった運動の強さ(歩いているのか、走っているのか)を測定できる。ネイリストの黒崎えり子氏デザインのスペシャルモデルもラインアップし、女性ユーザーを強く意識したモデルとなっている。気になるのはBluetoothに対応していないことだろう。


L-04A(LGエレクトロニクス)

L-04A

L-04A
 タッチパネルを採用したスライド式の端末だ。タッチパネルは感圧式を採用しているため、爪でも操作が可能だが、PRADA phone by LGなどと同じストラップとして付けられるスタイラスペンも付属する。撮った写真に絵を描いてメールが送信できるiモーションお絵かきなど、タッチパネルを活かした機能も充実している。タッチパネルでありながら、スライド式ボディでダイヤルボタンも使えるため、最初はちょっと戸惑うが、基本的に通常のスライド端末として使いつつ、使いたい機能があるときにタッチ操作を利用すると、タッチパネルがはじめてのユーザーでもなじめそうだ。


N-08A(NEC)

N-08A

N-08A
 905iμからの流れをくみ、従来のN-02Aの後継に位置付けられる端末だ。今回発表されたSTYLEシリーズの端末の中で、もっとも高機能かつ対応サービスの多いハイスペック端末で、従来モデルよりもスペックが向上している。SMARTシリーズのN-09Aと共通で、スペック的には事実上の双子モデルと言えそうだ。トップパネルの千鳥格子をあしらったデザインが美しく、サブディスプレイ横に浮かび上がるイルミネーションも印象的だが、それ以上に注目されるのが「マイセレクト」と呼ばれる新しい取り組みだ。トップパネルとイルミネーションのデザインを自分の好みに合わせてカスタマイズして、オーダーできるというものだ。トップパネル周りに限られるものの、ケータイとしてはおそらく初のBTO、オーナーメイドと呼べるサービスと言えるかもしれない。


P-08A(パナソニック)

P-08A

P-08A
 D90XiシリーズのDNAを受け継いだP-02Aの後継モデルで、スライド式ボディに回転式のスピードセレクターを搭載する。従来モデルはダイヤルボタン部分がフラットに仕上げられたため、ボタンが押しにくかったが、今回は凸部分をハッキリさせたウェーブタイルキーを採用し、操作性はかなり改善されている。8.1Mカメラや高輝度LED、LUMIXシリーズでも採用されている「おまかせiA(インテリジェントオート)」など、カメラ周りはP-07Aと共通仕様となっている。ツートンカラーのデザインもユニークなテイストだ。


P-10A(パナソニック)

P-10A

P-10A
 昨年、Wオープンの普及モデルとして発表された「P-03A」の流れをくみ、新たにIPX5/7の防水機能を実現したモデル。Wオープン初の防水となるが、過去の機種を見てもわかるように、Wオープンはディスプレイとヒンジ部分が1カ所しかつながっておらず、横開きのときにその接合部分が回転するため、防水化は難しいはずだが、これを実現してしまったのはかなり驚かされた。スペック的にはディスプレイが今回発表された端末の中で唯一のフルワイドQVGAだったり、GPSやインカメラ、Bluetoothの省略、3Gのみの国際ローミング対応など、かなりコスト的には絞り込まれている印象で、もしかすると、今回発表された端末の中ではもっとも安価に購入できるモデルと言えるかもしれない。コストパフォーマンス重視の主婦層に支持されそうな端末だ。


SH-05A(シャープ)

SH-05A

SH-05A
 NTTドコモ向けとしては初となるシャープ製防水端末だが、位置付けとしては昨年発表された8色カラーバリエーションのSH-02Aを進化させたモデルになる。トップパネルのヘアライン仕上げが美しく、サブディスプレイの文字も浮かび上がるように表示される。SH-01A/SH-03Aでも採用されたCCD 800万画素カメラやGPSを搭載し、専用のMAPキーで地図アプリをワンタッチで起動できるようにするなど、他の防水端末よりも少しハイスペックな印象だ。特に、カメラは感度が最大ISO12800まで向上したほか、撮影機能もさらに増えており、SH-01A/SH-03Aを上回っている印象だ。カラーによっては男性ユーザーでも抵抗なく持てそうだ。





【PRIMEシリーズ】

 「フルに楽しむ。先取りする。新世代エンターテインメントケータイ」というキャッチコピーが与えられたPRIMEシリーズは、20~30代の男性ユーザーをターゲットにしたラインアップだ。今年4月はSTYLEシリーズに次ぐ売れ行きとのことだが、昨年の年末商戦ではPRIMEシリーズの方が上回っており、主力ラインアップのひとつであることは間違いない。他のシリーズよりもハイスペック端末が多く、最新サービスにも着実に対応しているが、今回は高性能カメラや高速通信(アップロード及び無線LAN)などがトピックとなっている。


F-09A(富士通)

F-09A

F-09A
 まったく新しいスライドヨコモーションを採用した端末だ。基本的にはスライド式だが、縦方向にスライドした後、ディスプレイが横に回転するというユニークな機構となっている。N-01Aが横、縦の順に、ディスプレイ部を回転させながら開いていくのと対称的な機構だが、慣れてしまえば、F-09Aの方が自然な順序であるとも言えそうだ。ボディは周囲が丸みを帯びたデザインで仕上げられ、あまり大きさを感じさせない。ディスプレイがフルワイドVGAながら、縦方向が960ドット表示というユニークな解像度であるのも面白い。ソフトウェアはF-08Aとほぼ共通で、防水の有無などによる違いがあり、どちらを選ぶのかを迷ってしまいそうだ。


L-06A(LGエレクトロニクス)

L-06A

L-06A
 ダイヤルボタン下に[g]と書かれたGoogleサービスキーを持つ端末だ。Android端末とは別の「もうひとつのケータイするGoogle」と言えそうだ。LGエレクトロニクスの日本向け端末としては初の二軸回転式ボディを採用し、NTTドコモの音声端末では初の上り方向最大5.7MbpsのHSUPA端末となる。HSUPAはまだエリアも使い道も限られているので未知数だが、カメラで撮影した静止画やムービーをGoogleサービスメニューとの連動により、PicasaやYouTubeなどにアップロードできるなど、速度を活かすための使い道は考えられている。感圧式のタッチパネルを採用しているが、ダイヤルボタンの形状が押しやすいため、意外にボタン操作ばかりを使ってしまいそうな印象だ。


N-06A(NEC)

N-06A

N-06A
 N-01Aの後継モデルに位置付けられる端末だ。従来同様、ユニークなStyle Changeと呼ばれる機構を採用するが、今回は端末を開いたとき、ディスプレイ部が少し起こされるように傾きが付けられており、視認性は改善されている。ダイヤルボタンの押しやすさ、BluetoothのDUN対応など、従来モデルで指摘されていた不満点を着実に解消している。無線LAN機能は基本的に昨年のN906iLをベースにしており、ホームUにも対応するが、設定周りは改善されているようだ。N906iL同様、ひかり電話に登録できれば面白そうだが、NTTドコモ側では検証する予定はないという。Wi-Fiアクセスポイント機能は、N-06Aを無線LANルーターのように活用できる機能で、ポータブルゲーム機などからインターネットを利用できるが、パソコンに接続したときと同じ扱いになるため、iモード用のパケット通信料定額制サービスの対象外になってしまうので、注意が必要だ。できることなら、もう少し割安なプランが欲しいところだ。


N-07A(NEC)

N-07A

N-07A
 昨年、SMARTシリーズとして発表されたN-04Aをベースにしたモデルだ。N-04A同様、アークスライドと呼ばれるスライド式ボディを採用するが、フラットで押しにくいと不評だったダイヤルボタンを凸感のあるものを採用するなど、細部も改良されている。SPORTS EDITIONという名前からもわかるように、SPORTSをキーワードに、デザインなどを佐藤可士和氏が監修する。背面のチェッカーフラッグのデザインやボディカラー、フォントなど、佐藤氏の世界観がしっかりと表現されている。N702iDなど、佐藤氏デザインの端末を愛用してきたユーザーにおすすめのモデルだ。


P-07A(パナソニック)

P-07A

P-07A
 P905iから続くWオープンを採用した端末で、昨年発表のP-01Aの後継に位置付けられる。2WAYキーなどの特徴もそのまま継承されているが、外見で大きく変わったのは大型化された2.1インチのQVGAカラーサブディスプレイで、カメラのファインダーとして利用できるほか、ワンセグで録画した番組の視聴やメールの確認などにも利用できる。ボディデザインは従来の少し角が取れた仕上げだったの対し、今回はエッジを立たせたような仕上げで、ロゴの入ったメタル調パーツとも相まって、ややアクセサリー的な印象にまとめられている。モバイルWスピードの60fps対応は15fpsや30fpsと比較すれば、その差がよくわかるが、単独で見分けられるかどうかは少し微妙な印象だ。


SH-06A(シャープ)

SH-06A

SH-06A
 ケータイでは最高峰となるCCD 1000万画素カメラを採用したモデルで、同社の液晶テレビのネーミングを継承し、「AQUOS SHOT」というサブネームが与えられている。昨年発表のSH-03Aと同じく、二軸回転式のボディを採用するが、SH-03Aとはヒンジ部分の構造が違い、はSH906iなどに近いタイプが採用されている。CCDカメラのアドバンテージは従来モデルでも証明済みだが、シーン自動認識やチェイスフォーカスなど、従来に比べ、より簡単にきれいな写真が撮影できるように機能を搭載してきたという印象だ。


SH-06A NERV(シャープ)

SH-06A NERV

SH-06A NERV
 映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」とのコラボレーションモデルで、SH-06Aがベースモデルとなる。過去にも他事業者向けでキャラクターとのコラボレーションモデルが登場したことはあるが、今回はボディの外装や内蔵コンテンツを充実させるだけでなく、この端末を映画に登場する「NERV官給品」と位置付け、実際に映画の中でキャラクターに使わせるという演出までするという。ヱヴァンゲリヲンというタイトルそのものは、当然、年代によって、受け取り方に差はあるだろうが、今までのNTTドコモでは考えられなかったような取り組みであり、限定3万台がどのように売れていくのかは非常に気になるところだ。





【SMARTシリーズ】

 「ONもOFFもマネジメントする。大人のインテリジェントケータイ」というキャッチコピーが与えられたSMARTシリーズは、30~40代の大人の男性ユーザーをターゲットにしたラインアップだ。STYLEシリーズやPRIMEシリーズと違い、今回は発表されたモデルが2機種と少ないが、おそらく現行モデルの「F-04A」「N-04A」「P-04A」「P-05A」の多くは継続販売になると予想される。従来モデルは旧70Xiシリーズ系のスリム端末を中心にラインアップが構成されたこともあり、ややスペックにバラツキが見られたが、今回追加される2機種はいずれもBluetooth、GPS、3G+GSMの国際ローミング対応、iコンシェル、iウィジェット対応など、機能、スペックともに、充実したモデルとなっている。


N-09A(NEC)

N-09A

N-09A
 N-08A同様、N905iμからの流れを受け継ぐスリムモデルだ。基本的なスペックはN-08Aと共通で、外装パーツが異なる双子モデルとなっている。特徴的なのはトップパネルの仕上げで、ボディカラーごとに革、木目、金属の雰囲気を再現したテクスチャが装備されており、大人っぽいテイストを醸し出している。このテクスチャは樹脂で成形されたものだが、一見、本物に見えてしまうほど、仕上がりも良い。あまりシリーズの区分にこだわらず、N-08Aと合わせ、合計7色(「7デザイン」と呼ぶべき?)から選ぶのも手かもしれない。


P-09A(パナソニック)

P-09A

P-09A
 P-08Aなどとほぼ変わらないスペックを実現しながら、12.7mmのスリムボディを実現した端末だ。スリム系の端末は従来のP-04Aのように、旧70Xiシリーズの流れをくみ、スペックはやや抑え気味な傾向にあるが、P-09Aは旧90Xiシリーズに近いスペックを実現している。昨年発表の同じSMARTシリーズで、N-04Aが採っていた手法に近いポジションの端末と言えるかもしれない。P-04Aの9.8mmに対し、約3mmほど、厚くなっているが、実際に手に取った感覚はかなり薄く、まったく不満のないレベル。むしろ、これくらいの方が自然に使える印象だ。BLACKとGOLDのボディカラーはSMARTシリーズらしいが、VIOLETはちょっと唐突な印象も残った。





【PROシリーズ】

 「先進テクノロジーを自在に操る。デジタルマスターケータイ」というキャッチコピーが与えられたPROシリーズは、20~30代のITやメカを好む男性ユーザーをターゲットにしたラインアップだ。PROシリーズもSMARTシリーズ同様、従来モデルとの入れ替えではなく、今回発表された3機種が追加されたラインアップとなる。昨年発表されたモデルは発売前のノキアが日本市場から撤退したため、最終的にHTC製のWindows Mobile端末が2機種、BlackBerry Bold、SH-04Aの4機種が発売されたが、今回は東芝製のWindows Mobile端末、AQUOSケータイ SH-07A、国内初となるAndroidを採用したHT-03Aが加わわったことで、さらに端末プラットフォームのバリエーションが増えた格好だ。ただ、スマートフォンではないPROシリーズ端末がシャープ製しかないのはちょっと不自然な印象も残った。


HT-03A(HTC)

HT-03A

HT-03A
 Googleが提供する端末プラットフォームである「Android」を国内で初めて採用した端末だ。端末としては、すでに英Vodafoneが発表している「HTC Magic」をベースにしており、タッチパネルとディスプレイ横に装備されたボタン類や小型のトラックボールで操作する。トラックボールはAndroid一号機のT-Mobile G1やBlackBerry Boldのものよりもひと回り大きく、操作性はなかなか良好だ。端末の操作性はWindows Mobileなどに比べると、格段に軽快だが、筆者が以前、試用したことがあるT-Mobile G1(英語版)に比べると、日本語化されている関係もあるのか、若干、レスポンスが落ちたような印象もあった。ただし、今回公開されたHT-03Aは開発中のものなので、製品版では改善されていることを期待したい。今回発表された端末の中でももっとも注目度の高い一台であることは間違いないが、世界でもっともメール文化が普及している日本市場向けに、敢えてQWERTY配列キーやダイヤルボタンを持たないモデルを投入することになったのは、やや気になるところだ。


SH-07A(シャープ)

SH-07A

SH-07A
 従来のSH-01AをベースにしたAQUOSケータイだ。すでに他事業者向けで実現しているワンセグのダブルチューナーを搭載しており、2番組の同時視聴や同時録画に対応する。カメラはSH-06Aと同じCCD 1000万画素カメラを搭載しており、今回発表された通常デザインの端末では、もっともハイスペックな1台となっている。注目されるのはブルーレイディスクレコーダー連携機能で、ブルーレイディスクレコーダーで録画した番組を付属の卓上ホルダ経由でSH-07Aに転送し、視聴できるというものだ。他社でワンセグの番組をケータイに転送できるものは存在したが、SH-07Aのブルーレイレコーダー連携は640×360ドット/30fpsと高画質であり、一歩抜きん出ている。こうしたモデルがPROシリーズにラインアップされているのは少々、違和感があるかもしれないが、AV機能のPROシリーズ端末という位置付けのようだ。


T-01A(東芝)

T-01A

T-01A
 今年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congressで公開された東芝製Windows Mobile端末「TG01」のNTTドコモ向けモデルだ。薄さ9.9mmのスリムボディを実現したフルタッチパネルの端末で、米Qualcomm製の1GHzで動作するCPU「SnapDragon」を搭載する。1GHzで動作するCPUはパフォーマンス向上にかなり寄与しており、従来のWindows Mobile搭載端末よりも格段に快適に操作することができる。ただ、それでもモーションコントロールセンサーによる縦横表示の切り替えに、一瞬のタイムラグがあるなど、まだまだチューニングの余地を残している印象だ。


ユーザーの多様なニーズに応える充実の新ラインアップ

「ひとりひとりのあなたへ」をコンセプトにする

「ひとりひとりのあなたへ」をコンセプトにする

4シリーズ合計で500万台に

4シリーズ合計で500万台に
 iモード10周年を迎えたNTTドコモは、この1年、さまざまな変革を実行してきた。ちょうど約1年前の新ドコモ宣言に始まり、コーポレートロゴの変更、山田隆持代表取締役社長の就任、昨年11月には4つの新シリーズとネーミングルールの変更が発表された。そして、今回は4つの新シリーズを拡充するとともに、iモードブラウザの拡張にも手を付け、iモードの新時代へと本格的に舵を切り始めている。同時に、電池残量表示の細分化や機種変更時の設定情報の引き継ぎなど、ユーザーの使い勝手を考えた機能向上を着実に図ってきている。記者会見で山田社長はしきりに「お客様にご満足いただけるように……」という言葉を使うが、その顧客重視の姿勢がNTTドコモのさまざまな施策にもハッキリと現われつつあるという印象だ。今回の「ひとりひとりのあなたへ」というコピーは、そのNTTドコモのユーザーに対する思いをひとりひとりのユーザーに着実に届けたいという気持ちを表現しているのかもしれない。

 昨年11月、NTTドコモが新ラインアップを発表した際、4つの新シリーズとネーミングルールの変更について、筆者は厳しい意見を述べた。実際に、販売店やユーザーの声を聞いても当初は4つのシリーズに対して、否定的な意見が多く聞かれた。しかし、いざフタを開けてみれば、2008年冬商戦では4つのシリーズの区分に惑わされることなく、しっかりと端末のスペックをチェックするユーザーを中心に、従来の90Xiシリーズに相当するモデルが着実に売れ、2009年春商戦では型番に惑わされることなく、スペックなどをあまり重視しないユーザーを中心に、従来の70Xiシリーズに相当するモデルが売れるという結果になった。つまり、NTTドコモの思惑通り、ユーザーはいい意味でうまくコントロールされ、それぞれのシリーズが売れる結果となったわけだ。今回の発表でも山田社長のプレゼンテーションでは4つのシリーズの販売比率について、「発売前の私どもが行った予想とほぼ同じ結果」と述べていたが、正直なところ、これはもう「やられた」「参りました」と言うしかないだろう(笑)。無機質な印象のネーミングルールについては抵抗感があるという声もかなり多く耳にするが、実際にうまく売れている以上、当面は『覚えにくい型番』とうまく付き合っていくしかなさそうだ。

 今回発表された新ラインアップの18機種は、早ければ、今月中にも販売が開始される見込みだ。筆者自身も含め、ユーザーによっては4つのシリーズの区分と覚えにくい型番に抵抗感があるかもしれないが、本誌に掲載されている今回の発表会レポート記事や開発者インタビュー、レビューなどをしっかりとチェックしながら、自分のスタイルや好みにあった「ひとりひとりの一台」を賢く選んで欲しい。



URL
  NTTドコモ ニュースリリース
  http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/090519_00.html

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(法林岳之)
2009/05/20 20:14

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