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家庭のひかり電話でFMCが実感できる「SIPクライアント」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 ここ数年、通信の世界で注目を集めているキーワードのひとつに「FMC(Fixed Mobile Convergence)」がある。固定通信網と移動体通信を連携させることにより、さまざまな機能やサービスを実現しようという考えだ。今回はFMCのもっとも身近な用途である音声通話サービスの利用スタイルについて、紹介しよう。


自宅やオフィスでのケータイ

 メールやコンテンツ閲覧に始まり、カメラやワンセグ、おサイフケータイと、ケータイには実に多くの機能が搭載されているが、ケータイの基本機能と言えば、やはり、音声通話機能をおいて、他にないだろう。メールの普及により、音声通話の利用は減ったとも言われていたが、最近では各社が提供する家族割引サービスの一環として、家族間通話が無料になるなど、相変わらず、音声通話のニーズは高い。

 みなさんはケータイで音声通話をするとき、どのように電話を掛けているだろうか。おそらく、大半の人はケータイのアドレス帳(電話帳)や発着信履歴から相手を選び、電話を掛けているはずだ。当たり前のことだが、電波の届く範囲に居れば、ごく普通に発信がすることができる。

 では、自宅やオフィスにいて、電話を掛けるときはどうだろうか。もちろん、ケータイから発信することは多いが、自宅やオフィスに固定電話があるときは、そちらを使って発信することもあるはずだ。手元にケータイはあるが、「ケータイの電話番号を相手に通知したくない」「通話料が掛かる(高い)」「電波が届かない(弱い)」などの理由から固定電話で発信することがあるのではないだろうか。

 たとえば、電話番号の通知という観点で見た場合、オフィスであれ、個人宅であれ、相手によっては、ケータイの電話番号を知らせたくないことがあるし、会社が代表番号を通知していれば、そちらで通知した方が相手もわかりやすい。個人宅でも固定電話の電話番号を通知した方が相手にわかりやすいことが多い。

 通話料についても家族間の無料通話など、特定の条件下においては、ケータイが割安になるケースもあるが、ごく一般的な観点で比較してみると、固定電話が割安なケースが多い。たとえば、NTT東日本の加入電話の場合、市内が3分あたり8.925円であるのに対し、ケータイは通話料が安いNTTドコモのタイプLLバリューを選んだ場合でも3分で計算すると、47.25円も掛かる。もう少し月額基本使用料が安いタイプMバリューやタイプSバリューなどを選べば、固定電話の約10倍以上になってしまう。ケータイの場合は現在は距離に関係なく、国内通話は一律料金が適用され、遠くに住んでいる人に掛けるのであれば、ケータイが割安になるため、一概に固定電話が安いわけではないが、発信する相手によって、利用する回線を使い分けた方が節約できることは間違いなさそうだ。


 では、自宅やオフィスで電話を掛けるとき、具体的にどのように電話を掛けているだろうか。自宅やオフィスで利用している電話機にもよるが、もしかすると、相手の電話番号がわからないため、ケータイを開き、アドレス帳を参照して、電話を掛けるといったことをしていないだろうか。連絡先の情報をケータイに集約している人が多いため、今となってはそれほど違和感のない利用シーンなのだが、考えようによってはちょっと不自然というか、不便な印象は否めない。

 本来、ケータイには回線契約に伴う電話番号が割り当てられ、電話を掛けやすくするためにアドレス帳機能が搭載されているはずだが、そのアドレス帳を参照しながら、ケータイとは別の回線で電話を掛けているのだ。ケータイが固定電話の回線を利用できるようになっているわけでもなければ、固定電話の電話機がケータイを活用できる状態にもなっていない。ユーザーの操作によって、両サービスを併用しているに過ぎないのだ。

 ここ数年、通信の世界では固定通信網と移動体通信網を連携させる「FMC(Fixed Mobile Convergence)」が注目を集め、各社ともいくつかのサービスを提供し始めているが、ここまでの解説からもわかるように、実はもっともベーシックなレベルでのFMCが実現できていないわけだ。グループ化された通信事業者としての事情もあるのだろうが、ユーザーとしては今ひとつFMCが実感できない状況にある。

 かつて、こうしたニーズに応える環境として、家庭用コードレスホンから進化したPHSが重宝されてきたが、PHS対応コードレスホンは随分前になくなり、PHS端末も一部のモデルがOSモード(Office Stationモード)や自営三版モードをサポートするのみで、OSモードで利用できる親機も法人向け製品などに限られている。余談になるが、かく言う筆者宅も契約中の固定回線の内の1本は7年前に本誌の「本日の一品」で紹介した「VE-PVC01L」が接続され、子機にとして登録されたNTTドコモのドッチーモ SH821iなどとともに、現役で活躍している。


ひかり電話をケータイで使う

 ユーザーにとっては、今ひとつ「絵に描いた餅」のように聞こえてしまう「FMC」というキーワードだが、利用する環境によっては、FMCらしい活用が可能になっている。そのカギを握っているのが「SIPクライアント」だ。

 SIPは「Session Initiation Protocol」の略で、元々は2つのクライアント間でのセッション確立や制御を行なうための通信プロトコルだが、これを応用することにより、VoIPサービスやIP電話などが実現されている。たとえば、数年前からブロードバンドインターネット向けに050IP電話サービスが提供されているが、これも050IP電話サービスを提供するプロバイダーや運営会社の設備側に「SIPサーバー」、050IP電話サービスに接続するためのIP電話対応ルーターなどに「SIPクライアント」機能が搭載されていることで、サービスが実現されている。


NTTドコモ/NEC「N906iL」、サイズ : 49×109×19.6mm、127g。Silver(写真)、Brownをラインナップ
 また、NTTドコモは昨年、無線LAN機能を搭載したNEC製端末「N906iL」を発売し、自宅のブロードバンド回線経由で利用できるようにしたサービス「ホームU」の提供を開始した。ブロードバンド回線経由で高速なiモードが利用できたり、050IP電話サービスで割安な通話料で音声通話ができるなどのメリットを持つサービスだが、これもN906iLに搭載されたSIPクライアント機能を使い、ブロードバンド回線経由でNTTドコモの設備内にあるSIPサーバーに登録することで、050IP電話サービスを実現している。

 ホームUは料金的なメリットを享受できるケースが限られているため、今ひとつサービスが普及しているとは言い難い状況だが、実はこのN906iLに搭載されているSIPクライアント機能はホームUだけでなく、他のSIP環境にも使うことができる。たとえば、NTT東日本とNTT西日本が提供する固定電話サービス「ひかり電話」に、N906iLを無線LAN接続の子機として登録し、使うことが可能だ。つまり、N906iLを使い、ひかり電話経由での発着信ができるわけだ。

 ひかり電話はNTT東日本とNTT西日本がFTTH回線向けに提供しているIP電話サービスで、050IP電話サービスなどと違い、一般的な0AB~J番号の電話番号(東京23区なら「03-xxxx-xxxx」)が利用できる。一部の特殊な電話番号に対しては発信できないなどの制約はあるものの、通話料は全国一律3分あたり8.4円と割安なうえ、月額基本料も525円と加入電話より安いため(別途、BフレッツなどのFTTH回線の月額利用料は必要)、FTTHの契約に伴い、加入電話の電話番号を移行するユーザーも多い。

 ひかり電話では宅内に引き込まれた回線に「ひかり電話対応ルーター」を設置し、ルーターに装備された2つのアナログポートに電話機などを接続して、固定電話相当のサービスを利用する。ちょうどひと昔前のISDNで、ターミナルアダプタやルーターにアナログポートが2つ装備されていたのと同じような感覚だ。


NTT東日本とNTT西日本で販売されている「ひかりパーソナルフォン WI-100HC」。ケータイのような形状だが、ケータイに慣れた身には使いにくさが感じられるユーザーインターフェース
 ひかり電話対応ルーターにはSIPサーバーの機能が搭載されており、LAN上にSIPクライアント機能を持つ機器を接続し、必要な手順で登録をすれば、それらの機器からもひかり電話を利用できるようになる。ひかり電話対応ルーターが無線LAN対応のものであったり、有線LAN上に無線LANアクセスポイントを設置すれば、無線LAN対応の機器を利用することもできる。当初はひかり電話で利用できる機器として、無線LAN経由で利用できる子機の「ひかりパーソナルフォン WI-100HC」、有線LAN経由で接続して、テレビ電話が利用できる「フレッツフォン」シリーズなどが販売され、筆者宅でも「ひかりパーソナルフォン WI-100HC」を使っていたが、普段、ケータイを使い慣れた身には厳しいと言わざるを得ないユーザーインターフェイスで、正直なところ、かなり割り切って使わなければならない印象だ。

 これに対し、N906iLは言うまでもなく、「ケータイ」であり、開発メーカーの違いによって、多少のユーザーインターフェイスの違いこそあるものの、いつものケータイとほとんど変わらない感覚で使うことができる。外出時はFOMA、帰宅したときは家庭のひかり電話の子機として利用できるため、ケータイのアドレス帳を参照しながら自宅のコードレスホンでダイヤルをしたり、ケータイの電波状況や発信者番号を気にしながら使わなくても済むわけだ。もちろん、ひかり電話宛の着信もN906iLで応答することができる。


筆者宅で利用中のひかり電話対応ルーター「PR-200NE」の設定画面。アナログポートの2台以外に、最大5台の機器を有線LAN及び無線LANで登録することができる。今回紹介した端末をすべて登録してみた ひかり電話として利用する端末の設定画面。設定にはN906iLのMACアドレスなどが必要。「端末属性」は「音声専用端末」に設定する。ひかり電話で複数番号を契約しているときは、着信する電話番号や発信時に通知する電話番号を選択できる

 N906iLをひかり電話で利用する方法については、N906iL発表直後は何も情報が提供されておらず、対応する環境もNGN(Next Generation Network)を利用したNTT東日本とNTT西日本の「フレッツ光ネクスト」に限られていたが、その後、対応する環境や登録手順などが徐々に公開され、現在では「フレッツ光ネクスト」に加え、NTT東日本とNTT西日本の「Bフレッツ」、IPv6に標準対応したNTT西日本の「フレッツ光プレミアム」で利用するための情報がNTT東日本とNTT西日本のWebページで公開されている。


ひかり電話に接続するときのプロファイルを作成する。多くの項目があるが、基本的に設定するのは「WLAN詳細設定」「SIP設定」のみ WLAN設定ではパソコンでもおなじみの「ESSID設定」や「無線モード設定選択」、「通信チャネル設定」に加え、「PowerSave設定」と「Scanタイプ設定」を設定する必要がある 「SIP設定」はあまりなじみのない項目が多い。これらの内、「移動機SIPアドレス設定」「SIPサーバ設定」「SIPシーケンス設定」「ダイジェスト認証設定」について、設定する必要がある

通信モード設定は[iチャネル]ボタンの長押しで起動できる。DUALモード(WLAN優先)に設定しておく ひかり電話に接続できている状態では、中央のソフトキー上の表示が「WLAN」になっていれば、ひかり電話経由での発信になる。[決定]ボタンを押し、すぐにFOMAでの発信に切り替えることも可能 N906iLではFOMAネットワーク利用時と無線LAN利用時で、着信音や着信音量を個別に設定することが可能

ひかり電話対応ルーターに接続されると、無線LAN用のアンテナアイコンが「SIP」と描かれた表示に切り替わる
 具体的な登録手順については、各社の対応ページを参照していただきたいが、必要な情報が設定され、ひかり電話対応ルーターに正しく接続されれば、N906iLでは電波アイコン表示に「SIP」と表示される。ホームUのとき、家のアイコンが表示されていた部分が切り替わるわけだ。ちなみに、ホームUについては、筆者の環境ではひかり電話とホームUの両方の設定をN906iLに登録できたが(同時利用はできないようだ)、切り替え操作が煩雑なため、いずれか片方の設定のみをした方が便利かもしれない。


ノキア端末やiPhone 3Gもひかり電話で利用可能

 N906iL以外の機器はどうだろうか。特に、スマートフォンについては、無線LANを搭載した端末が多く、自由にアプリケーションを追加できるため、SIPクライアントをインストールして、ひかり電話で利用できる端末がありそうだ。

 すべての機種を試したわけではないので、筆者が手元に持つ端末の範囲になるが、まず、比較的、簡単に利用できるのは無線LAN機能を搭載したノキア製端末だ。昨年、ソフトバンクが発売した「X02NK」やノキア自身がSIMロックのない状態で販売した「NOKIA E61」には、「インターネット電話」と「SIP設定」というメニューが用意されており、ここにSIPサーバーの情報などを登録することで、ひかり電話の無線LAN子機として利用できるようになる。


ひかり電話対応ルーターの設定画面。ノキア製端末のときは「ダイジェスト認証」を「行わない」の設定でも動作する ソフトバンク/ノキア「X02NK」、サイズ : 53×99×21mm、120g。ストームブルー(写真)、レッド、ホワイトをラインナップ

接続するためのプロファイルを作成する。公開するユーザー名の内、「sip:X」の「X」はひかり電話対応ルーターに設定した内線番号を設定。@マーク以降のIPアドレスはひかり電話対応ルーターのIPアドレスを設定する 「プロキシサーバアドレス」と「領域」のIPアドレス部分も同様に、ひかり電話対応ルーターのIPアドレスを入力する。「登録サーバ」の設定も同じだ

SIPサーバーに接続されると、受話器と地球を重ねたようなアイコン(電池ゲージの真下)が表示される

ノキア「E61」、サイズ : 69.7×117×14mm、144g。Silver(写真)のみ E61でもX02NK(N95)同様、SIPサーバーに接続されると、受話器のようなアイコン(電池ゲージの真下)が表示される

ひかり電話から発信するときはメニューを呼び出し、[電話をかける]-[インターネット電話]の順に選択する

 詳しい設定方法は省くが、SIP設定の公開ユーザー名に「sip:○@192.168.xxx.xxx」(「○」はひかり電話対応ルーターで登録した内線番号、「192.168.xxx.xxx」はひかり電話対応ルーターのIPアドレス)、「プロキシサーバ」と「登録サーバ」のメニューでは「プロキシーサーバアドレス」と「登録サーバアドレス」に「sip:192.168.xxx.xxx」(「192.168.xxx.xxx」はひかり電話対応ルーターのIPアドレス)などの情報を設定することで、ひかり電話から発信できる。SIPクライアントからの認証については、端末によって異なるようだが、筆者の環境(ひかり電話対応ルーターはNTT東日本のPR-200NE)ではルーター側で「ダイジェスト認証」を「行わない」の設定でも動作している。発信時は左ソフトキーからメニューを呼び出し、[インターネット電話]を選んだり(X02NKの場合)、[電話をかける]-[インターネット電話](NOKIA E61の場合)の順にメニューを選ぶ必要がある。


ソフトバンク/アップル「iPhone 3G」、サイズ : 62.1×115.5×12.3mm、133g。ホワイト(写真)、ブラックをラインナップ
 また、iPhone 3GでもAppStoreで「SipPhone on iPhone」というSIPクライアントが公開されている。英語版で有料アプリのため、ちょっと敷居は高い印象もあるが、筆者の環境でも試してみたところ、とりあえず、ひかり電話対応ルーターの子機として、登録することはできた。ただ、iPhone 3G自身がマルチタスクに対応していないため、待受状態にするには常にSipPhone on iPhoneを起動しておかなければならず、今ひとつ実用的とは言いにくい面もある。とは言うものの、自宅での発信用と考えれば、電話を掛けたいときにSipPhone on iPhoneを起動し、ひかり電話から発信するという使い方ができる。ちなみに、アドレス帳についてもiPhone 3Gの連絡先に登録されている情報がそのまま利用することが可能だ。


AppStoreで公開されている「SipPhone on iPhone」。800円の有料アプリ 起動時のダイヤル画面。画面下右側の[SIP]と書かれた[開始]ボタンがグリーンになると、SIPサーバー(ひかり電話対応ルーター)に登録が完了したことになる

「SIP Account」の設定画面。「Domain」にはひかり電話対応ルーターのIPアドレス、Usernameにはひかり電話対応ルーターで設定した内線番号を入力する 「Advanced Setting」の設定画面。「Auth User」はユーザーID、「Proxy Server」はひかり電話対応ルーターのIPアドレスを入力する

 いずれの環境についてもひかり電話での利用は、無線LAN経由での接続になるため、当然のことながら、電池の消耗は通常よりも早くなる。そのため、就寝時など、使わないときは卓上ホルダにセットして、充電状態にしておくのがおすすめだ。


使いやすいSIPクライアントの拡がりに期待

 SIPクライアントを利用することにより、ケータイでひかり電話を利用できることを解説してきたが、今回、紹介した環境は限定的なものであるため、必ずしも多くの人に役立つかどうかは今ひとつわからない面もある。あまりなじみのない人にとっては「SIP」や「クライアント」、「サーバー」、「プロトコル」といった単語を見ただけで、かなり難しく見えてしまいそうだが、ひかり電話対応ルーターと端末に設定する項目は限られているうえ、インターネット上にも多くの情報が公開されているため、どの環境も意外にスムーズに登録できたという印象だ。実際の利用も非常に快適で、この分で行くと、筆者宅のPHS対応コードレスホンとドッチーモ SH821iもようやく引退させることができそうだ。

 ところで、少しベテランの読者の方だと、「NTT東日本とNTT西日本が情報を公開しているN906iLはともかく、ノキア端末や海外製のSIPクライアントを勝手にひかり電話対応ルーターに登録していいのか?」という疑問を持つかもしれない。確かに、多くの通信サービスでは国内の技術適合基準をクリアしていない通信機器を回線に接続できないため、ひかり電話での扱いが気になるところだが、NTT東日本に確認したところ、「動作の保証はできないが、(SIPクライアントが動作する)他社の携帯電話を登録、接続しても特に問題ない」とのことだ。もちろん、海外製端末でも日本の技術適合基準をクリアしていない端末などは、無線LANを動作させる段階で問題があるため、利用できないが、国内の通信事業者が販売する端末はいずれも技術適合基準をクリアしており、今回テストしたN906iLはもちろん、SoftBank X02NKやNOKIA E61(X01NK)、iPhone 3Gは接続してもかまわないそうだ。

 また、ソフトバンクにも問い合わせたところ、元々、グローバル仕様のものをベースに調達したため、「インターネット電話」や「SIP設定」の項目が用意されているが、それらの機能をユーザーが利用する分には問題がないそうだ。ただし、動作の保証やサポートは同様に難しいとのことだ。

 SIPの世界はSIPサーバーの機能を持つPBXソフトウェアを使い、自前で環境を構築できるなど、かなり奥深い世界が拡がっているのだが、そういった専門的な世界は別にして、まずはSIPクライアントを搭載したケータイやスマートフォンを用意し、自宅のひかり電話を有効に活用できるだけでも「身近なFMC」を手軽に実感することができる。今回はNTT東日本とNTT西日本のひかり電話について、紹介したが、他の通信事業者も同様のしくみを利用したサービスを提供しており、今後の展開がさらに拡がってくることも考えられる。当面はスマートフォンでの実現が中心になるのかもしれないが、ぜひ、使いやすいSIPクライアントの登場を期待したいところだ。



URL
  ひかり電話(NTT東日本)
  http://flets.com/hikaridenwa/
  ひかり電話(NTT西日本)
  http://flets-w.com/hikaridenwa/
  無線LAN対応携帯電話について(NTT東日本)
  http://flets.com/hikaridenwa/subscription/wireless_mobile.html
  無線LAN対応携帯電話ご利用に関する設定ツール・マニュアル(NTT西日本)
  http://flets-w.com/next/hikari/manual.html
  N906iL(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/906i/n906il/
  N906iL(NEC)
  http://www.n-keitai.com/n906il/
  X02NK(ソフトバンク)
  http://mb.softbank.jp/mb/product/X/x02nk/
  NOKIA N95/SoftBank X02NK(ノキア・ジャパン)
  http://www.nokia.co.jp/support/ps/phones/n95/index.shtml
  NOKIA E61(ノキア・ジャパン)
  http://www.nokia.co.jp/support/ps/phones/e61/index.shtml
  iPhone 3G(ソフトバンク)
  http://mb.softbank.jp/mb/iphone/
  iPhone 3G(アップル)
  http://www.apple.com/jp/iphone/


(法林岳之)
2009/04/22 13:54

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