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iPhone 3Gが見せてくれたもの、期待させるもの、足りないもの
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 7月11日にソフトバンクから発売されたiPhone 3G。さまざまなメディアで取り上げられ、インターネット上でも次々とレビューなどが紹介され、2週間が経過した。少し状況が落ち着いたようだと言われる一方、市場からはまだ「買えない」という声も聞かれる。製品の試用レポートについてはすでに発売のタイミングでお送りしたが、筆者自身も実際に商品を購入したので、市場の動向なども踏まえながら、今一度、レポートをお送りしよう。


iPhone 3G購入への道

7月11日早朝のソフトバンク表参道。夜明けを待たずして当日分を完売
 7月11日朝、前夜から並んだ人たちとともに、ソフトバンク表参道で、日本におけるiPhone 3Gの販売が開始された。筆者も比較的、長く、PCやIT関連の発売に立ち会ってきたが、これだけの熱狂を持って迎えられる商品は、Windows 95/98、初代iMacなど以来だろう。もちろん、ケータイ業界ではこれほどまでに製品の発売やサービスの開始がアピールされたケースはない。ここ10年ほど、続いてきたケータイ業界、PC業界の「お祭り指向」を強く印象づけたイベントでもあった。

 筆者は発売のタイミングでお送りしたレポートでもわかるように、ひと足お先にiPhone 3Gを試用する機会を得ることができた。しかし、それはあくまでも「試用」であり、やはり、自分で実際に購入し、いろいろな場面で使ってみなければ、わからないことも多い。そこで、いつもように、自分自身でiPhone 3Gを購入することにした。


 とは言うものの、これだけの人気商品。そう簡単に購入できるわけがない。発売日の表参道では、普段、ケータイの取材でいっしょになることが多いライター氏がしっかりと並んで購入していたり、他のライター氏は表参道の様子を見て、すぐに家電量販店に移動して整理券を確保するなど、かなり積極的に動かなければ買えない状況にあった。ちなみに、掲示板などでは発売直後からつい最近に至るまで、量販店やソフトバンクショップの入荷状況を情報交換する動きもあり、筆者も何とかそういった情報を頼りに購入しようとしたのだが、普段の仕事をしながら、整理券をもらうために並んだり、頻繁にショップに問い合わせをするといったことは難しかった。ただ、幸いなことに、ちょっとしたアクシデントというか、ハプニングというか、うれしい誤算のようなことがあり、発売日から数日後に東京・有楽町のビックカメラで、16GBモデルのホワイトを購入することができた。

 筆者は普段、一部の例外を除き、各社の端末は各事業者の系列店で購入することが多く、家電量販店ではほとんど購入しないのだが、今回は手続きもスムーズで、意外に短時間で商品を手にすることができた。発売日から数日が経過し、店員さんも手続きに慣れてきたことも関係しているのだろうが、契約手続きのシステムがしっかりと作り込まれているようで、購入時の署名もタブレットPCのペン入力を採用するなど、余計な手間が掛からなくなっている印象を受けた。

 筆者はすでにソフトバンクの回線を契約しているが、今回のiPhone 3Gは、機種変更ではメールアドレスが変わってしまうなどの理由もあり、新スーパーボーナスを利用した新規契約で申し込むことにした。端末代金については、分割も考えたが、家電量販店ではポイントも付くため、敢えて一括払いで購入した。料金プランなどはごく一般的な構成で、「ホワイトプラン(i)」「パケット定額フル」「S!ベーシックパック」に、留守番電話サービスなどを使うことも考慮し、基本オプションパック(i)を組み合わせることにした。保証サービスについては、ソフトバンクのWebページで案内がされていないが、アップルが「AppleCare Protection Plan for iPhone」を提供しており、手続き上は申し込みをしておいた。ただ、AppleCare Protection Plan for iPhoneについては料金などが明らかになっておらず、契約書類上は申し込んだことが明記されているものの、本当に適用されているのかどうかは未確認の状態だ。

月々の支払い
基本使用料「ホワイトプラン(i)」 980円
「パケット定額フル」定額料 5985円
S!ベーシック(i)基本料 315円
新スーパーボーナス特別割引(24カ月間) -1920円
差し引き合計額 5360円


 iPhone 3Gの販売については、まだ購入できていない人も多いようだが、発売から2週間の経過を見る限り、ソフトバンクとしてはかなり量販店への展開に力を入れた販売だったようだ。都内の大手家電量販店では相変わらず、完売の貼り紙も出ているが、数日間隔(連日のケースもあるという)で入荷している店舗もあるようで、その都度、整理券などを配布して、販売しているという。ソフトバンクショップについては、店舗によって、かなり状況が違い、筆者が発売直後に問い合わせたショップの内のいくつかは「発売日以降、未だ1台も入荷していない」と答えていた。

 こうした販売については、いろいろと分析もあるようだが、ソフトバンク表参道のように、発売日当日から数日間に渡り、毎日のように炎天下(曇天の日もあっただろうが……)にお客さんを並ばせてしまう姿勢は、正直なところ、いかがなものだろうかと思う。整理券を配布してしまうと、それを売買する人が出てきてしまうなどの判断があったのかもしれないが、もう少しインテリジェンスの感じられる販売方法を検討して欲しかったところだ。いずれにせよ、初日の1500人のお客さんに急病人が出るような事態が起きなかった(少なくとも報じられている限りは……)ことはラッキーだったと考えるべきかもしれない。


取り扱いには注意

 さて、無事に購入できたiPhone 3Gだが、自宅に持ち帰り、すぐにアクティベーションを行った。購入した時点で、すでにWindows Vista環境でのiTunesの不安定な動作が報告されていたこともあり、最初の試用モデルと同じく、Mac miniと接続して、アクティベーションを行うことにした。残念ながら、筆者はiTunesのライブラリを別のWindows PCで管理しているため、音楽データは別途、取り込まなければならないが、これを機に、Mac OSの環境を充実させるのも悪くないと考えている。

 ちなみに、すでにiPodをお使いの人なら、ご存知の通りだが、iPodは基本的に1台のPCやMacとしか、同期ができない。しかし、iPhone 3Gの場合、PDA的な機能も持ち合わせているため、必ずしも1台としか同期できないようでは困る。なぜなら、自宅と会社、プライベートとビジネス、ノートPCとデスクトップなど、異なる環境でスケジュールなどを同期したいと考えるケースもあるからだ。その場合、iTunesの[概要]タブにある「音楽とビデオを手動で管理」にチェックを付けておけば、複数の環境と同期することが可能になる。もっともアップルが提供する「MobileMe」をきちんと活用できるようになれば、こうした不満も少しずつ解消されることになるのだろうが、残念ながら、MobileMeはサービス開始直後からトラブルが起きており、しばらくは様子見の状況だ。

 実際に購入した端末を手にしてみて、やはり、気になるのは取り扱いだ。全面液晶ディスプレイのレイアウトを採用しているうえ、ほぼフラットなストレートボディのデザインとなっているため、ちょっとしたことで落としてしまいそうで、取り扱いにはかなり気を遣いたくなる。すでに、本誌の「The クラッシュ!」のコーナーには、落とした読者の方からの投稿があったが、ああいった事態にならないように注意したい。筆者はとりあえず、iPodなどでもおなじみのシリコンカバーを装着したが、このままでは液晶ディスプレイの保護が不十分なため、いい商品が見つかれば、手帳のように全体をカバーできる革製ケースなどに切り替えたいと考えている。

 また、当初、試用したモデルはブラックだったため、ボディを触っていると、指紋が付くことがかなり気になったが、個人的に購入したホワイトはあまり気にならない。とは言うものの、液晶ディスプレイ部は何度もタッチして、汚してしまうため、やはり、「トレシー」などのクリーニングクロスは欠かせない。


動作の安定度と電話機能に課題

Safariは安定性に課題も

メールの日本語入力
 実際の利用についてだが、筆者にとってのiPhone 3Gは、今のところ、何番目かの端末でしかないため、必ずしも十分に使い込んだという状況ではない。ただ、基本的に外出時には常に持ち歩いており(カバンの中であることが多いが……)、通話やSMS、メール、Webブラウズなども頻繁に利用している。

 こうした利用の中で、iPhone 3Gの課題もいくつか見えてきている。まず、最初に挙げられるのがよく指摘されているWebブラウザ「Safari」の安定度だ。iPhone 3GのSafariそのものはレンダリングも高速で、なめらかなスクロールなどとも相まって、快適に利用できるのだが、Webページの内容によっては極端に動作が遅くなったり、強制的に終了してしまうことがある。iPhone 3Gがインターネットの閲覧を売りにした端末であることを考えれば、早急に改善を期待したいところだ。

 実用性という点では、テキストのコピー&ペーストができないのも困る点だ。通常のメール作成やメモなどは当然、必要になるのだが、メールアドレスや電話番号などの連絡先を伝えたり、Webページの情報を他人に伝えるときなど、さまざまな場面で「ここでコピー&ペーストが使えれば……」と感じさせることがある。本来、Mac OSにしてもWindowsにしてもマルチタスクなOSは、異なるアプリケーション間でテキストなどをコピーできることがメリットのひとつであったはずだ(特に、MS-DOSなどに比べれば……)。その流れをくむiPhone 3Gで、まったくコピー&ペーストができないというのは、ちょっと解せない印象だ。これがアップルのiPhone 3Gに対するポリシーなのか、単純に実装されていないだけなのかはわからないが、ユーザーの使い勝手を考えれば、これも早急に実装を期待したい機能だ。

 文字入力についても課題がある。iPhone 3Gはタッチ操作によるユーザーインターフェイスを採用しているが、その特性を活かし、QWERTY配列のソフトキーボード、ダイヤルボタンを模したテンキー入力で、日本語入力をサポートしている。もちろん、操作に慣れは必要で、ユーザーによって、好みも分かれるのだが、それでもフリック入力など、タッチ操作のユーザーインターフェイスで、これだけの日本語入力環境を搭載してきたことは評価できるだろう。ただ、単語登録や定型文などの機能がないのは惜しい点だ。ちなみに、連絡先に登録すれば、人名などは変換してくれるため、「ほうりん」→「法林」と変換することができる。しかし、商品名や店名など、連絡先などに無関係の言葉でも変換したい単語は数多く存在する。特に、タッチ操作の数を減らし、効率良く、日本語を入力するには単語登録が欠かせないはずだ。メモリ容量にも関係するため、一概にたくさん登録できればいいというわけではないが、やはり、快適な日本語入力を活かすためにもユーザーによる単語登録(ユーザー辞書)はサポートして欲しい機能のひとつだ。


機能制限の設定画面
 また、ソフトウェアの面では、セキュリティやプライバシーも気になるところだ。iPhone 3GそのものはWWDCなどで公開された情報からもわかるように、リモートワイプなど、企業ユースにも応えられるセキュリティ機能を搭載している。ただ、一般の個人ユーザーがiPhone 3Gを使ううえでは、十分なセキュリティ機能が利用できる状況になっていない。

 たとえば、日本のケータイでは受信メールの特定フォルダにパスワードを設定したり、FeliCaロックのように、機能ごとに利用制限を設定するといった使い方ができる。しかし、iPhone 3Gは起動時やスタンバイからの復帰時に入力する4桁の数字のパスワードのみで、機能やフォルダに対し、個別のパスワードを設定するといった使い方ができない。機能制限はできるのだが、SafariやYouTube、iTunesの利用などを制限するのみで、メールなどは何も制限ができない。

 メールについては、設定画面でアカウント名やパスワードまで、すべて登録しなければならないため、基本的にはメールを起動すれば、すぐにその内容を見ることができ、なおかつ最新情報も受信できてしまう。個人的にはメールを送受信するパスワードはその都度、入力するようにしたいのだが、そういった使い方はできない。モバイル環境でのメールの使い方をどう考えるのかにもよるが、もう少し一般ユーザーが利用するうえでのセキュリティやプライバシーにも配慮が欲しかったところだ。


非通知着信の履歴。非通知着信を拒否する機能は搭載されていない
 一般ユーザーの利用という点では、通話機能にも改善を期待したいところがある。これはiPhone 3Gに限らず、Windows MobileやSymbian S60対応のスマートフォンなどにも見られる傾向だが、実は「非通知着信拒否」をはじめ、発着信制限など、通話制御に関連する機能が標準で搭載されていないのだ。Symbian S60では市販のアプリケーションを追加することで発着信機能を強化できるため、今後、iPhone 3GでもAppStoreで提供されるアプリケーションなどで実現されるかもしれないが、こうしたベーシックな電話機能を充実させることは、日本のユーザーにiPhone 3Gが広く受けいれられるための必須条件のひとつではないだろうか。

 着信という点では着信ランプなどがないため、サウンドボタンをOFFに切り替えていると、画面を見ない限り、着信に気づかない。これはメールについても同様なのだが、厄介なことにSMSについては、ロック画面に通知されたとき、本文が表示される仕様になっているため、第三者にもSMSの内容が丸見えになってしまう。もう少しプライバシーへの配慮が欲しかったところだ。


SMS受信時の画面
 さらに、端末以外の面では、ソフトバンクに科せられた責任もかなり大きいように見受けられる。iPhone 3Gを契約するには基本使用料のほかに、パケット定額フルの契約が必須になるが、ユーザーにしてみれば、「せっかく契約したんだから、元を取らなくちゃ」とばかりに、かなりヘビーに使うことを考えてしまう。当然、ネットワークのトラフィックは増大することが容易に想像できるが、ソフトバンクとしてはそれに耐えられるだけの設備を用意し、運用をしていかなければならなくなる。幸い、iPhone 3Gは3Gハイスピードと無線LANをシームレスに使うことができるため、無線LAN環境が利用できるユーザーはあまりネットワークの負荷を感じることがなさそうだが、それでも3Gネットワークのパフォーマンスに不足が感じられれば、利用の有無に関わらず、毎月約6000円のパケット通信定額料を支払わされているユーザーからは不満が噴出することになり兼ねない。

 ちなみに、他のスマートフォンの環境では端末上でルーター機能を動かし、複数のユーザーでインターネット接続を共有するなど、各携帯電話事業者の想定を超えるような使い方も登場してきている。公開されているiPhone 3GのAPIでどこまでできるのかはわからないが、すでに初代iPhone同様、非公式のアプリケーションを動作させようとする動きもあり、ソフトバンクにとって、まさに「予想外」の利用法が登場してしまう危険性もある。オープンな環境は素晴らしいのだろうが、携帯電話事業者にとってはそれに伴うリスクもかなり大きいということだ。


日本のケータイに学んだアップルのビジネスモデル

 ところで、iPhone 3Gと言えば、発売以来、新聞やテレビなどの一般メディアの報道を見ていると、iPhone 3Gが海外から日本のケータイ業界にやってきた『黒船』のようで、まるで日本のケータイ市場が破壊されてしまうかのようなことを書き立てるものが見受けられる。たとえば、iPhone 3Gの2万円強という割引後の実質的な価格を取り上げ、日本の多くのケータイが4~6万円程度で売られている状況と対比させ、日本製ケータイのコスト競争力がないかのように報じるものもある(比較としては明らかな間違いだが……)。しかし、実はiPhone 3Gこそ、日本のケータイ市場に強く影響を受け、そのビジネスモデルをアレンジして、世界市場へ展開された製品とは言えないだろうか。

 初代iPhoneは携帯電話事業者の売り上げの一部をアップルが受け取る「レベニューシェア」という収益モデルを採用していた。しかし、iPhone 3Gではこのビジネスモデルを廃し、端末を安価に提供し、iTunes Music StoreやAppStoreでの売り上げで収益を上げようとするビジネスモデルに切り替えている。なかでもAppStoreについては、有料のものについて、販売価格の30%を手数料として徴収することが明らかにされている。

 また、iPhone 3Gの正確なコストはわからないが、あるメーカー関係者が発表直後に「8GBモデルで200~230ドル程度。16GBモデルは+10ドル程度。アップルはこれに利益を上乗せして、キャリアに納入するのではないか」と話していたが、発売後に端末を分解して、計算された想定コストもほぼその通りという結果だった。おそらくアップルは約200ドル強のコストで製造した端末を400~500ドル程度で各携帯電話事業者に納入し、8GBモデルの実売価格が約200ドル程度になるという条件付きで、契約しているのではないだろうか。


 この2つの手法は言うまでもなく、NTTドコモのiモードをはじめ、日本の携帯電話事業者が採用してきた販売奨励金による垂直統合型のビジネスモデルをメーカー主体に置き換えたものに近い。iモードなどでは端末メーカーが端末を製造し、それを携帯電話事業者が買い上げ、販売奨励金を使うことで、安価に端末を供給し、コンテンツ利用時の手数料やパケット通信料によって、コストを回収しつつ、収益を上げるという手法を作り上げてきたが、アップルはそれをメーカーの立場で実現したようなものだ。確定的なことは言えないが、おそらくソフトバンクをはじめとする携帯電話事業者はiPhone 3Gを推定400~500ドル程度でアップルから仕入れ、本来なら、自らのコストや利益を乗せ、6~8万円くらいで売りたいところをスーパーボーナスの特別割引という形で販売奨励金を使い、実売価格が2~3万円強程度で収まるように販売しているのではないだろうか。

 昨年、モバイルビジネス研究会で日本のケータイビジネスモデルの是否が随分と厳しく議論されたが、何のことはない。海の向こうからやってきた『黒船』は、日本のビジネスモデルのメリットを学び、それを自らの製品とサービスに昇華させたものだったというわけだ。もちろん、iPhone 3Gという製品そのものが魅力的であるからこそ、実現できるビジネスモデルなのだが、やはり、お金の流れを見ていると、日本のケータイビジネスとの関連性を感じずにはいられない。昨年、モバイルビジネス研究会で日本のケータイビジネスをひどく批判した人たちや総務省は、このアップル流のビジネスモデルをどう評価するのだろうか。


次なるiPhoneへの期待

 ケータイというジャンルの商品において、iPhone 3Gは非常に大きなインパクトを持つ商品だ。この7月はおそらくソフトバンクの純増拡大にも大きく寄与していると推測される。アップルが展開するビジネスモデルもAppStoreの盛況ぶりなどを見てもわかるように、今後の成長・拡大が非常に期待できそうだ。

 しかし、その一方で、iPhone 3Gには「足りない」と感じさせる要素があることも確かだ。特に、本稿でも指摘した通話関連機能、プライバシー&セキュリティ機能などは、日本の一般的なユーザーにとって、おそらく確実に不満を感じてしまう部分と言えるだろう。iPhone 3Gを日本のケータイと比較して、「ワンセグがないから売れない」「おサイフケータイがないのはダメ」といった指摘も見受けられるが、敢えて厳しいことを言うなら、それ以前に電話としての基本機能に不足があることの方がはるかに問題だろう。

 ただ、誤解しないで欲しいのは、筆者は「だから、iPhone 3Gはダメ」と言っているわけではない。iPhone 3Gという端末は、ユーザーの目から見て、非常に魅力的な商品であることは間違いない。しかし、アップルにとっては「電話を再定義する」と意気込んで参入してきて、まだ2つめのモデルでしかない。ユーザーがiPhone 3Gを気に入って使うことはたいへん喜ばしいことだが、「あばたもえくぼ」の如く、iPhone 3Gを闇雲に礼賛してしまうのは、ユーザーにとってもアップルにとってもソフトバンクにとっても業界にとっても好ましいことではないだろう。むしろ、iPhone 3Gで不足している部分をしっかりと指摘し、3代目、4代目のiPhoneへの進化に役立つようにすることの方が大切なはずだ。もちろん、日本のメーカー、アップル以外の海外メーカーもこの商品に刺激を受け、より便利で楽しいワクワクする商品を開発してくれることを期待したい。



URL
  製品情報(アップル)
  http://www.apple.com/jp/iphone/
  製品情報(ソフトバンク)
  http://mb.softbank.jp/mb/iphone/

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(法林岳之)
2008/07/25 15:36

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