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「au買い方セレクト」は本当にわかりやすいのか?
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 10月4日、auは新しいケータイの買い方として、「au買い方セレクト」を発表した。今年、議論が重ねられてきたモバイルビジネス研究会での販売奨励金制度に対する指摘を受け、いち早くそれに応えた格好となっている。はたして、au買い方セレクトはわかりやすいプランと言えるのだろうか。


スタイルに合わせて選ぶ2つの買い方

11月12日以降に導入される「au買い方セレクト」
 auが発表した新しいケータイの買い方である「au買い方セレクト」。おそらく秋冬モデルの投入開始と予想される11月12日から導入される予定だ。今回のau買い方セレクトは、ご存知の通り、今年、総務省のモバイルビジネス研究会で議論されてきた販売奨励金の扱いを考慮したプランだ。ケータイの販売方法については、すでにソフトバンクが昨年から「新スーパーボーナス」という割賦販売を導入しており、今回のauの発表を受け、NTTドコモも追随するのではないかと言われている。

 まず、今回のau買い方セレクトについて、簡単におさらいをしておこう。au買い方セレクトでは従来とほぼ同じように端末を購入できる「フルサポートコース」、端末代は高くなるが、基本使用料を抑えた「シンプルコース」という2つのコースが用意される。11月12日以降、auのケータイを新規で購入するとき、あるいは機種変更で端末を購入するときは、必ずいずれかのコースを選ばなければならない。ただし、端末を購入しなければ、いずれのコースも利用することができない。また、11月11日までに端末を購入し、現在、利用中の端末の利用期間が7カ月に満たないユーザーは、フルサポートコースで購入できないため、自動的にシンプルコースを選ぶことになる。

 フルサポートコースは基本的に従来に近い買い方ができるもので、端末本体については2年間の継続利用が前提となるが、購入時には購入代金の一部として、21,000円が補助(サポート)される。つまり、店頭表示価格が30,000円の端末なら、「30,000-21,000=9,000円」で購入できることになる。2年以内に端末を買い換えたいときは、以下の「フルサポート解除料」を支払うことで、短期で機種変更をすることもできる。

フルサポート解除料 1カ月目~12カ月目13カ月目~18カ月目19カ月目~24カ月目25カ月目~
18,900円12,600円6,300円0円


 ちなみに、ここでひとつ注意しなければならないのは「店頭表示価格」だ。詳しくは後述するが、ここで言うところの店頭表示価格は、au買い方セレクトが開始されたときのものを指しており、現在の店頭表示価格とは別物であると考えて欲しい。

 また、フルサポートコースでは料金プランや割引サービスも基本的に従来と同じように選ぶことができる。たとえば、料金プランは基本使用料が月額3,780円のプランSSを選び、誰でも割に加入して、基本使用料を半額にしたり、家族割で家族間で無料通話分を分け合うといったこともできる。

 一方、シンプルコースとはどんなものか。これは簡単に言ってしまえば、従来のような販売奨励金を利用した購入価格の割引をしない代わりに、基本使用料や通話料を割安に設定した専用の料金プランを選べるようにしたり、端末の利用期間に関係なく、機種変更をできるようにしたコースだ。たとえば、前述の店頭表示価格が30,000円の端末であれば、30,000円で購入するしかないが、極端な話をすれば、毎月のように機種変更をすることも可能だ。ただし、シンプルコースを選択できるのは、新規契約や機種変更などで、auの端末を新たに購入するときだけに限られる。

 料金プランについてはシンプルコースを選んだときのみ、契約できる「シンプルプランL」と「シンプルプランS」が用意される。

プラン名基本使用料通話料テレビ電話通話料
シンプルプランS1,050円30秒/15.75円30秒/28.35円
シンプルプランL2,625円1分/10.5円1分/18.9円


 シンプルプランS/Lの基本使用料については、通常のWIN向け料金プラン(割引前)のどれよりも安く、通話料についてもシンプルプランSは通常の料金プランのプランSとプランのMの中間、シンプルプランLにいたっては通常のWIN向け料金プランでもっとも安いプランLLよりも割安に設定されている。ただし、シンプルプランS/Lは基本使用料と通話料の安さを重視しているため、無料通話分が含まれていない。つまり、発信をすれば、その分、必ず料金が掛かることになる。同時に、基本使用料を割安に抑えたこともあり、誰でも割や年割といった基本使用料を割り引くサービスは契約することができない。

 少し話がややこしくなるが、実はシンプルコースを選んだときでも既存の料金プラン(プランSSやプランLLなど)を契約することはできる。この場合、誰でも割や年割などの基本使用料割引サービスを契約することも可能だ。ただ、既存の料金プランは基本使用料や通話料に販売奨励金を回収する金額が多少なりとも含まれていることを考えると、シンプルコースを選びながら、敢えて既存の料金プランを契約するメリットはかなり条件が限られそうだ。

 また、ダブル定額やダブル定額ライトといったパケット通信料の定額サービス(割引サービス)については、フルサポートコースでもシンプルコースでも同じように契約することができる。たとえば、シンプルコースでシンプルプランSを選び、EZwebによるパケット通信(メールを含む)をフルに使うことになると、大まかには「1,050円(シンプルプランS)+4,410円(ダブル定額上限)+315円(EZ WIN)=5,775円」が掛かることになるわけだ。

 ケータイの利用スタイルはユーザー、時期、周囲の環境など、さまざまな要因によって変化するため、一概にどちらのコース、どの料金プランが誰に適しているとは言いにくいが、フルサポートコースは従来と同じような買い方や使い方を求めるユーザー向け、シンプルコースは頻繁にケータイを買い換えるユーザーや同じ端末を長く使うことで、ランニングコストを抑えたいユーザー向けということになる。


2つのコースをどう使い分けるか

 さて、ここまではau買い方セレクトの2つのコースの概要を解説してきたが、この他にもいくつか特記事項があるので、それらを実際にケースに当てはめながら、説明してみよう。

 まず、フルサポートコースは従来と同じような買い方や使い方ができるという安心感があるが、今年、夏モデルを購入したばかりのユーザーは、しばらくフルサポートコースを利用できないかもしれない。というのもau買い方セレクトの案内には、以下のように表記されているからだ。

 「11月11日(日)までにご購入いただいた方で、携帯電話のご利用期間が7カ月未満の場合は、フルサポートコースでの購入はできません。」

 これはauの販売方法がau買い方セレクトへ移行するために伴う措置で、すでに直近で販売奨励金の恩恵にあずかっているユーザーは公平性を保つため、一定期間を経過しなければ、フルサポートコースを利用できないという意味だ。たとえば、筆者は8月半ばにW53CAに機種変更をしたが、計算すると、来年2月半ばを過ぎるまで、フルサポートコースで端末を購入できない。もし、秋冬モデルに機種変更をするならば、シンプルコースを選び、高い価格で端末を購入するしかないわけだ。

 夏モデルのように、新しい端末をすでに手にしているのであれば、すぐにでも基本使用料や通話料の安いシンプルプランに移行してしまおうと考えるかもしれない。しかし、前述のように、(シンプルプランが契約できる)シンプルコースを選べるのは新規契約や機種変更などで、新たに端末を購入した場合のみとなっている。たとえば、一般のいわゆる白ロム販売店、あるいはオークションなどで端末を購入し、持ち込みによる機種変更でいきなりシンプルコース、シンプルプランを選ぶことはできない。


auからの購入サポートとサポート解除料

通常の料金プランでauポイントが貯まりやすくなる
 フルサポートコースでは2年間、同じ端末を使うことを前提条件として、21,000円の購入サポートをするわけだが、この「2年」という期間に抵抗感を覚えるユーザーが少なくない。改めて説明するまでもないが、2年前と言えば、auではFeliCa搭載端末が2機種、ワンセグ対応端末が1機種(しかもかなり先行開発)という状況だった。スペック的にも使い勝手の面でも現行モデルとはかなり開きがあるように感じられ、「そんなに古いスペックの機種を使い続けるのはイヤだ」「途中で飽きてしまうかもしれない」と考えるわけだ。しかも途中で買い換えるとなれば、フルサポート解除料として、18,900円/12,600円/6,300円が請求されてしまう。つまり、2年間の拘束とその解除に費用が掛かることがユーザーにとって、抵抗感があるわけだ。

 ただ、フルサポート解除料はauのポイントを充当でき、従来よりもauのポイントをたまりやすくするなど、利用頻度の高いユーザーの負担を軽減しようとしている。

 また、フルサポートコースは同じ端末を2年間、利用することが前提だが、絶対に2年間、機種変更できないわけではない。番号ポータビリティ(MNP)で移行しない限り、次に買い換える端末も結局、auの端末を選ぶことになるが、フルサポート解除料を支払ってしまえば、次の機種を購入するときにフルサポートコースを選び、再び、購入サポートの21,000円の恩恵にあずかることができる。フルサポート解除料はユーザーにとって、負担になるが、auが定めた2年という基準よりも早いタイミングで機種変更をするのだから、その分、余計に負担が増えてしまうのはしかたのないところだろう。


 次の機種変更でもフルサポートコースを選ぶとした場合、前回のフルサポート解除料と今回の購入サポートの金額を差し引きしてみると、12カ月目までは2,100円、13カ月目~18カ月目は8,400円、19カ月目~24カ月目は14,700円という金額になる。機種変更したい端末の店頭表示価格が前述と同じように30,000円だった場合、実質的な機種変更の価格は、12カ月目までが27,900円、13カ月目~18カ月目は21,600円、19カ月目~24カ月目は15,300円となる。前述の9,000円で購入するときよりは高くなるが、この販売価格をどう捉えるかが判断のポイントになる。

 少し変わった手としては、いったん、フルサポートコースの利用を開始後、auICカード対応端末であれば、一般の白ロム販売店やオークションで白ロム端末を購入し、既存の端末に加えて「増設(追加)」するという方法も選ぶことができる。この場合、フルサポート解除料は掛からず、端末の利用期間もリセットされることはない。ただし、持ち込みで機種変更した端末については、自らauで購入した端末のような保証が受けられないなど、いくつかの制限があるので、その点は十分に注意する必要があるだろう。

 また、フルサポートコースの場合、月々の利用額に応じて獲得できるauマンスリーポイントが従来よりもためやすくなっている。たとえば、プランSSを選び、誰でも割で月々の基本使用料を1,890円に抑え、ダブル定額でEZwebによるパケット通信をフルに使った場合、「1,890円(プランSS・誰でも割適用)+4,410円(ダブル定額上限)+315円(EZ WIN)=6,615円」を月々に支払うことになる。このとき、獲得できるマンスリーポイントは331ポイントとなり、1年間で約4,000ポイント弱を獲得できる計算になる。こうして獲得したポイントは、フルサポートコースのサポート解除料として利用できるため、月々の支払額の多いユーザーは短期間でも機種変更がしやすいわけだ。


シンプルコースの例とは

「シンプルコース」の概要
 一方、シンプルコースはどうだろうか。シンプルコースを選び、料金プランとして、シンプルS/Lを選んだ場合、auのマンスリーポイントは獲得できない。これはフルサポートコースの通常料金プランではユーザーの利用状況に応じて、ポイントという形で還元しているのに対し、シンプルプランS/Lはそういった還元などをなくし、とにかく基本使用料を抑えることを前提にしているためだろう。ちなみに、シンプルコースを選び、料金プランとして、従来の料金プランを選んだときは、フルサポートコース選択時と同じように、auのマンスリーポイントが獲得できる。シンプルコースではフルサポート解除料などがないため、ポイントの使い道が限られるが、ためたポイントを次の端末やコンテンツの購入に利用できる。

 また、シンプルコースでは基本的に販売奨励金のサポートを受けない形で端末を購入することになるため、イニシャルコストが高くなってしまう。しかも白ロム販売店などで購入した端末を持ち込みで機種変更することもできない。ただ、この持ち込みによる機種変更ができないのは、最初にシンプルコースを選択するときに限られる。一度、シンプルコースを選んで、端末を購入してしまえば、あとは「増設(追加)」という形で、持ち込みの白ロム端末を利用することができる(auICカード対応端末に限られる)。つまり、auから購入した端末とは別に、auICカードを差し替えて利用する端末として、白ロム端末を利用できるわけだ。そうなると、最初にシンプルコースを選択するときに購入する端末の価格が重要になってくるわけだ。

 シンプルコースを選んだユーザーがフルサポートコースへ移行したいときは、どうなるのだろうか。この場合はすぐに移行することができる。たとえば、シンプルコースで端末を購入したが、数カ月後に端末に飽きてしまい、違う端末を購入したいと考えたとき、フルサポートコースで購入サポートを利用して、端末を購入することが可能だ。これはシンプルコースで端末を購入(機種変更)した時点で、販売奨励金に関わる端末代金は一度、精算済みになるという解釈だ。ただし、フルサポートコースに移行すると、シンプルコースのみに用意されているシンプルプランS/Lの料金プランが継続できないため、料金プランは現行の通常プランに移行しなければならない。


 ちなみに、11月12日以降、auから端末を購入せず、フルサポートコースもシンプルコースのどちらも選ばないという選択肢も存在する。つまり、現在利用中の端末を使い続けたり、持ち込みの白ロム端末で毎回、機種変更を続けるわけだ。ただ、この場合、フルサポートコースで獲得できる従来よりも高いauマンスリーポイント、シンプルコースで選択できる割安な料金プランなどのメリットを失う上、両コースを選択したときに契約できる「安心ケータイサポート」の会員コースに加入することもできない。どちらのコースも利用しないという選択肢がないわけではないが、やはり、メリットは少ないということだ。

 ところで、auのユーザーに限ったことではないが、ケータイを利用する大半のユーザーは、何らかの形で家族割引を利用しているのではないだろうか。auの家族割では無料通話分を分け合うことができ(「分け合いコース」の場合)、auのポイントも基本的には合算されている。これを利用することで、家族でフルサポートコースとシンプルコースを使い分けながら、月々の料金を節約したり、機種変更時のコスト(フルサポート解除料などを含む)を抑えるという方法も考えられる。

 たとえば、自分自身はフルサポートコースで通常の料金プラン、あまりケータイを使わないシニア層の家族はシンプルコースのシンプルプランを選んでおけば、シンプルプランで通話した分をこちらの無料通話分でカバーするといった使い方ができる。もちろん、逆のパターンでもかまわない。ポイントについても家族にはフルサポートコースで同じ端末を2年程度、使ってもらっておき、自分はシンプルコースのシンプルプランで月々の基本使用料を抑えた状態で使い、必要であれば、家族でためたauポイントを自分の機種変更時に使うこともできる。もちろん、ポイントの利用には家族割でポイントをためている全員の了解が必要になるため、事前に家族間でよく話し合っておかないと、余計なトラブルを生んでしまう可能性もあるが……(笑)。


見えてこない端末の価格だが……

 さて、最後に販売価格のことについて、触れておきたい。今回のau買い方セレクトでは前述のように、フルサポートコースを選んだときは21,000円の購入サポートが受けられ、シンプルコースを選んだときは販売奨励金を加味しないことになっている。そのため、全般的にケータイを購入する価格が高くなるのではないかといった不安がユーザーの間にも広がっている。

 実際にどういった価格で販売されるのかは、11月12日のau買い方セレクトによる販売が開始されなければ、わからない。あくまでも筆者の推測に過ぎないが、おそらくフルサポートコースについては、実質的に従来とあまり価格が変わらないのではないかと予想している。というのも販売方法に変更があるとは言え、販売奨励金を含めた構造には、まだ大きな変更が加えられていないからだ。

 KDDIが公開しているIR情報に寄れば、auでは販売代理店に対し、1台あたり36,000円前後の販売奨励金を支払っている。今回のau買い方セレクトでは、その36,000円前後の内、21,000円を実質的にユーザーの端末の購入サポートに充てることを想定している格好だ(フルサポートコースの場合)。そうすると、残りの15,000円前後は、代理店が利益として確保するなど、自由に使うことができる。さらに、販売奨励金は端末のみではなく、年間契約やオプションサービスなどの契約、契約数に対するボリュームなどに対しても発生するケースがあるため、販売店がこれらを利用して、端末価格を値引く可能性も十分に考えられる。


 筆者が独自に得た情報によれば、au買い方セレクトによる販売が開始される今年の秋冬商戦に際し、auは開発メーカーなどに対し、改めて納入価格の引き下げなどは依頼していない模様だ。納入価格が引き下げられておらず、使い道が一部、指定されたとは言え、販売奨励金の扱いも大きく変更されていないことを考慮すると、フルサポートについては現状と販売価格が大きく変わらないと予想するのが妥当だろう。もっとも最終的な販売価格は販売店が決めるため、敢えて販売価格を高く設定することもあり得ない話ではない。ただ、販売価格を高くしてしまうと、機種変更を含めた販売が落ち込んでしまうため、結果的には当面、従来と同じような販売価格に落ち着くことが予想される。

 一方、シンプルコースについては、フルサポートコースのような購入サポートがないため、当然、端末の販売価格は高くなる。とは言うものの、過去に短期での機種変更の価格を見てきた範囲から予想すれば、おそらく5~6万円程度に設定されるのではないかと予想している。ただ、端末に対する販売奨励金はないものの、販売店が他の割引サービスなどに対する販売奨励金を適用するケースも考えられる。最終的には販売店の判断によって設定されるため、正直なところ、フタを開けてみなければ、どうなるのかはわからない。

 auでは先週、W53Sの販売を開始したが、ある販売店の表示価格をベースに、au買い方サポートでの価格表示の予想を書いてみた。あくまでも予想でしかないので、正しいかどうかはわからないが、おそらくこのような形になるのではないだろうか。


従来の店頭表示イメージ

W53S
新規契約0円年割、家族割、パケット割、
EZweb、指定割に加入が条件
9,800円
機種変更46,200円7カ月未満
18,690円7カ月目~12カ月目
11,340円13カ月目~24カ月目
10,290円25カ月以上


au買い方サポートでの店頭表示イメージ(予想)

W53S
フルサポートコース
(購入サポート適用後)
18,690円7カ月目以上
XX,XXX
0円?)
新規契約
年割、家族割、パケット割、
EZweb、指定割に加入が条件
シンプルコース46,200円継続利用契約なし
XX,XXX新規契約
年割、家族割、パケット割、
EZweb、指定割に加入が条件


わかりにくさを生み出したのは?

店頭で用意されている「au買い方セレクト」のパンフレット
 さて、読者のみなさんは今回の発表や一連の報道を見て、どのように感じただろうか。正直なところ、多くのみなさんが「わかりにくい」「難しい」と感じたのではないだろうか。

 今回のau買い方セレクトは、販売奨励金や月々の利用料金などをユーザーに公平に割り当て、負担するように作られたものだ。こうした販売方法が生まれてきた背景には、2つの動向が関係している。

 ひとつは冒頭でも触れた総務省のモバイルビジネス研究会の報告書と「モバイルビジネス活性化プラン」の存在だ。同研究会では販売奨励金による不透明な料金体系と販売方法に問題があると指摘していたが、これを現在のモバイルビジネスに当てはめると、どうしても今回のau買い方セレクトのように、やや歪な形になってしまう。携帯電話は電気やガス、水道といった生活インフラストラクチャのサービスであるため、公平にサービスを提供することが望ましいが、ケータイのように、急発展し、成熟した市場においては、どうしてもある程度の不公平が生まれてしまうのは避けられないものだ。もしかすると、公平性を取れば、取ろうとするほど、ひずみが生まれてしまい、さらにわかりにくいサービスになってしまうかもしれない。これはいずれ別の機会に取り上げたいが、モバイルビジネス研究会の報告書がまとまり、モバイルビジネス活性化プランが発表された現時点でもやはり、一連の総務省の動きにはかなり無理があったという印象は否めない。


 背景にあるもうひとつの動きは、auとして望ましくないユーザーの存在だろう。きちんと対価を支払い、新規契約や機種変更(短期を含む)をしているユーザーは問題ないが、一部には毎回、新規で契約し、それをすぐ解約し、端末を転売するといったユーザーが存在するのも事実だ。そのため、販売奨励金の一部がムダになってしまったり、通常の形で端末を購入していたユーザーとの間で不公平感を生み出す結果になっている。

 今回のau買い方セレクトを導入することで、いわゆる「新規即解約」のような買い方は事実上、難しくなるわけで、auの端末販売がより健全になることが予想される。もし、実際にそうなった結果が出てくるようであれば、それを発表するなり、あるいはムダにならなかった販売奨励金の節約分を既存のユーザーに対し、還元するようなしくみも検討して欲しいところだ。ただ、ソフトバンクの「スーパーボーナス一括」のように、当初はまったく想定していなかったような販売方法が生まれてくることも予想されるため、今後の成り行きはじっくり見守る必要があるだろう。

 今後、au買い方セレクトに続き、NTTドコモもいわゆる「分離プラン」での販売を開始すると言われており、ケータイ業界は昨年のMNPに引き続き、業界構造を大きく変える時期を迎えつつあるのかもしれない。ただ、それが本当にユーザーのためになっているのかどうかを疑問に感じる部分も少なくない。我々ユーザーはケータイ業界がどこへ向かおうとしているのか、行政が何をさせようとしているのかなども含め、じっくりと状況を見極めていかなければならないだろう。



URL
  au買い方セレクト(PDF形式)
  http://www.au.kddi.com/promotion/pdf/au_select.pdf

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第342回:販売奨励金 とは


(法林岳之)
2007/10/10 21:37

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