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小粒でプレミアムなiモード端末「premini」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2004年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


世界最小のiモード端末

 折りたたみデザインが普及し、携帯電話の高機能化が進んだことで、ここ数年、端末サイズが大きくなっているが、NTTドコモから世界最小のiモード端末「premini」が登場した。カメラなどの機能を省き、通話とiモード、メールという必要最小限の機能に特化した端末だ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。


成熟したケータイ市場に対するひとつの回答

premini

 NTTドコモ/ソニー・エリクソン『premini/SO213i』。サイズ:40(W)×90(H)×19.8(D)mm、69g。Black(写真)、Silverをラインアップ
 1999年にiモードが開始されて以降、ケータイは凄まじいスピードで進化を遂げている。液晶ディスプレイはカラー化され、カメラが標準装備になり、メモリカードを装備する端末も増えている。撮影した画像を編集したり、メールで送信するのはもちろん、録画したテレビ番組を再生したり、テレビチューナーそのものを内蔵するなど、通信と直接、関わりのない機能も搭載されている。カメラについては、デジタルカメラのエントリーモデルに匹敵するスペックを実現する製品や光学ズームを採用する端末も発売されている。さらに、今度は非接触ICカードを内蔵し、お財布や会員証の機能まで取り入れようとしている。

 しかし、その一方で高機能化よりも他の要素を端末に求める声も増えている。たとえば、中高年や初心者にも優しい端末、軽量・コンパクトな端末、カメラを搭載していない端末など、いろいろなニーズがあるようだ。ケータイ市場が成熟化してきたことで、より細分化されたニーズに対する製品が求められているとも言えるわけだ。

 今回紹介するNTTドコモのソニー・エリクソン製端末「premini」は、こうした新しいニーズに対応するために開発された端末だ。名刺よりも小さく、手のひらにすっぽり隠れてしまうほどのボディサイズ、69gという軽さを実現しながら、独特の存在感を持つ端末として仕上げられている。機能的にもカメラやメモリカードを搭載しないという割り切りを見せるなど、現在の高機能路線の端末とは一線を画したコンセプトが特徴的な端末だ。機能的にはシンプルだが、非常に注目度の高い端末と言えるだろう。実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


小型化を追求した超コンパクトサイズ

パッケージ

 独創的なパッケージに合わせ、マニュアルやACアダプタの箱もデザインされている
 製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモとソニー・エリクソンの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは非常にコンパクトなストレートデザインを採用している。ストレートデザインを採用したPDC方式のiモード端末としては、R692iやF212i以来ということになる。どれくらいコンパクトかというと、最近の折りたたみデザインの端末を折りたたんだ状態よりも小さく、前面の面積はコンパクトフラッシュのメモリカードを2枚、並べた程度しかない。厚さも最も厚い部分でわずか20mm弱。手の大きさにもよるだろうが、まさに手のひらにスッポリ隠れてしまうほどのサイズだ。

 ボディ上部にある取っ手のような部分にはアンテナが内蔵されており、その裏面にはストラップを通すための穴がある。底面には外部接続端子、左側面にはストレート端末ということもあり、スライド式のロックキーが装備されている。スピーカー部は通常の端末と同じように、液晶ディスプレイの上にレイアウトされているが、マイクは外部接続端子のすぐ隣の底面側に装備されている。ただし、イヤホンマイク端子は装備されておらず、卓上ホルダも提供されていない。また、このボディデザインに合わせ、パッケージも独特のものが採用されており、マニュアルも縦に細長い版型のものが同梱されている。


アンテナ 背面
 先端のアーチ部分にはアンテナを内蔵。preminiのロゴもプリントされている  背面にはスピーカーを内蔵。アーチ型アンテナの背面側にはストラップ用の穴が空けられている

ディスプレイ

 液晶ディスプレイは1.3インチと小さいが、視認性はそれほど悪くない
 液晶ディスプレイは160×128ドット/65,536色表示が可能な1.3インチTFTカラー液晶パネルを採用する。QVGAサイズの液晶ディスプレイを見慣れたユーザーには狭く感じられるかもしれないが、フォントサイズを変更することにより、メール時で最大12文字×11行、コンテンツ閲覧時は8文字×7行表示が可能だ。

 ボタン類はボディがコンパクトなこともあり、「スロープキー」と呼ばれる独特の工夫を施している。通常、端末のボディが小さくなると、必然的にボタンを装備する面積が少なくなり、キートップも小さくなるため、操作性が失われてしまうが、preminiは斜めのボディ面にキーを階段状にレイアウトすることにより、一定の操作性を確保している。レイアウトはSO504iやSO212iなどのレイアウトを模しており、中央上部に4方向ボタンと[決定]ボタン、液晶ディスプレイの左側のエッジ部分に[メール]ボタンと[開始]ボタン、右側に[iモード]ボタンと[終了]ボタン、テンキー部の中央下に[クリア]ボタンを配している。中央の4方向ボタンと[決定]ボタンは一見、SOシリーズでおなじみのフロントジョグのように見えるが、実はごく一般的な4方向ボタンと[決定]ボタンとなっている。

 気になる操作性については、小さいボタンの割にはなかなか良好で、手の大きな筆者でもメールなどの文字入力をすることができる。ただ、エッジ部の[メール]ボタンと[iモード]ボタンは画面のガイド表示の左右横に位置するため、間違えて[開始]ボタンや[終了]ボタン操作してしまうことがある。このあたりは慣れが必要だろう。

 ちなみに、この端末は「premini」という商品名が付けられているが、型番としては「SO213i」となっており、基本的にはNTTドコモの20Xi/21Xiシリーズのスペックを継承している。外部接続端子にケーブルをつないでデータ通信を行なう「DoPa」には非対応で、周波数帯も800MHzのみの利用、ダウンロード速度は9.6kbpsまでとなっている。50Xiシリーズや25Xiシリーズとは若干、スペックが異なるので、注意が必要だ。


ボタン スロープキー
 ボタン類はSO504iやSO212iのレイアウトを踏襲。ジョグダイヤルを模しているが、実は一般的な4方向ボタンと決定ボタンの組み合わせで、回転はしない  ボタン面に階段状に装備された「スロープキー」を採用。小さい割には操作しやすい

割り切ったシンプルな機能構成

メール

 メールはフォルダによる管理に対応。自動振り分けも可能
 次に、機能面について見てみよう。preminiは「小型化」というテーマ以外に、もうひとつ「シンプル」というコンセプトに基づいて開発されている。NTTドコモによれば、シンプル派が求める機能として、「音声通話」「メール」「ブラウジング」「カラー液晶」が挙げられており、カメラや赤外線通信、外部メモリなどは多機能派のものと位置付けられているという。そのため、preminiは最近の端末に比べ、かなりシンプルな機能構成となっている。

 まず、メールはフォルダによる管理に対応しており、送受信メールともメールアドレスや題名、アドレス帳に登録したグループによる自動振り分けが可能だ。フォルダ別のセキュリティ機能はないが、メール画面そのものを参照できなくする「メールセキュリティ」は用意されている。フォルダ内では受信メールの検索や一覧画面での並べ替えが可能だ。メール周りの機能ではよくメールを送る相手のメールアドレスをランキングで参照できる「送信ランキング」、最大10人の宛先に同時にメールが送信できる「一括メールリスト」、音声通話の発着信履歴からメールの送信、メールの受信履歴から電話が掛けられる「EV-Link」などの機能が用意されている。


メールセキュリティ 暗証番号
 メールセキュリティを設定すれば、メール機能全体の利用をロックすることができる  メールセキュリティ設定時はメールを参照するのに暗証番号の入力が必要

POBox

 日本語入力はおなじみのPOBoxを採用。ボタンが小さいpreminiだからこそ活きてくる入力環境
 日本語入力はSOシリーズ端末でおなじみの予測変換入力「POBox」が採用されており、ダウンロード辞書にも対応する。ダウンロード辞書は最大20件まで登録しておくことが可能だ。POBoxのダウンロード辞書については先日、ソニー・エリクソンから発表があったように、パソコンからオリジナルの辞書を作成し、他のユーザーと共有できるサービスが提供されている。

 メニュー画面はSO504iやSO212iなどで採用されているユーザーインターフェイスを継承しており、「電話」「ツール」「設定」の3つのグループを選び、その中の項目を選んで、設定や機能を呼び出す構造になっている。メニューの最上段には「マイセレクト」というグループが設定されており、ユーザーがよく利用する機能や項目を登録しておくことが可能だ。


メニュー ロック
 メニュー画面はSO504iやSO212iなどの環境を継承。おなじみのユーザーインターフェイスだが、そろそろ古さを感じさせる  左側面のスライド式ロックキーを操作すると、画面上にカギのアイコンが表示される

iモード

 iモードも問題なく閲覧できるが、表示行数はさすがにすくない。公式サイトではオリジナルの壁紙や効果音なども配信されている
 コンテンツ閲覧については、やや画面の狭さを感じるものの、特に問題なく利用できるが、メモリー容量には若干の不安が残る。たとえば、iショットなどで送られてきた画像は画像保存で端末に保存できるが、preminiでは30件しか保存できず、すぐにいっぱいになってしまう。

 ちなみに、preminiは先日、ネットワーク混雑時に誤った表示になる不具合が確認されているが、8月2日からソフトウェアの改修が開始されている。実用上はあまり問題のない不具合だが、購入したユーザーは最寄りのドコモショップ故障取扱窓口に問い合わせてみるといいだろう。


FOMAのデュアルネットワーク用としても便利だが……

マナーモード

 マナーモードはオリジナル設定が可能。ウィザード形式で設定できるようにするなどの工夫も欲しいところ
 最後のまとめに入る前に、preminiの位置付けについて、少し考えてみよう。現在、国内では8,000万人を超えるユーザーが携帯電話を利用しており、冒頭でも触れた通り、ますます端末の高機能化が進んでいる。そこで、細分化されたニーズに応える端末が求められるようになり、「シンプルなケータイが欲しい」「カメラはいらないんだけど」「もっとコンパクトにならないの?」といった声が生まれてきている。こうしたニーズに応えるために登場したのがNTTドコモの「らくらくホン」、ツーカーの「シンプルケータイ」などであり、今回紹介したpreminiもそのひとつの回答と言えるだろう。NTTドコモよれば、preminiは20~30代の男性をターゲットにしており、「必要最小限の機能を好み、先進的で大人の感性を持つ人」というユーザー像を描いている。

 ただ、こうしたシンプルな端末を考える場合、どの機能を省いて、何を省かないのかという『さじ加減』は非常に難しいものがある。たとえば、シンプルな端末に対して、ある人は「やっぱ、カメラくらいは欲しいよ」と言うかもしれないし、またある人は「液晶なんて、モノクロで十分」と考えるかもしれない。つまり、ユーザーによって、必要とする機能には差があり、機能を絞り込んでいくほど、ユーザー層が限られてしまうわけだ。

 また、実際の利用シーンを考えた場合、preminiには多少、引っかかる部分がある。まず、preminiにはボディデザインの制約もあってか、卓上ホルダが用意されていない。しかし、なぜか車内ホルダなどの車載オプションが一式、用意されている。どの程度のユーザーが車載オプションを必要としているのかはわからないが、少なくとも筆者には卓上ホルダの方がニーズが高いように感じられるのだが……。

 次に、イヤホンマイク端子がないことも気になる点だ。道路交通法が改正され、今後はハンズフリーが必須と言われている現在、イヤホンマイク端子を省いてしまったのはどうだろうか。特に、preminiはボディが小さいため、通話中にきちんと相手に声が聞こえているのかが気になってしまう。高感度マイクを採用しているため、実用上は問題ないとされているが、やはり、安心して通話したいときはイヤホンマイク端子が欲しいところだ。


パッケージ

 パッケージを独創的なものにするなど、プレミアム度を高めた商品コンセプトは高く評価できる
 preminiはボディがコンパクトなため、FOMAのデュアルネットワーク用端末に適しているという声もよく耳にする。preminiの小ささを活かし、「ストラップといっしょに、FOMA端末のアクセサリーとして、ぶら下げるのはどう?」という冗談も出てくるくらいだが、preminiはきちんと整備されたPDC方式のネットワークを利用しており、FOMAの通話エリアをカバーするのに適しているというメリットもある。ただ、preminiにはメモリカードスロットや赤外線通信ポートがないため、FOMA端末との間でアドレス帳やメールを同期させたり、転送するといった使い方ができない。メールについてはiモードの設定である程度、回避できるが、アドレス帳などは自力で入力するか、パソコンなどを利用しなければならない。

 これらのことを見てもわかるように、preminiはデザイン的なアドバンテージがある半面、シンプルな端末であるがゆえの難しさも持ち合わせている。省かれた機能が「今どきのケータイ」のベーシックな機能であるとユーザーが判断すれば、購入を大きく左右することもあるだろう。個人的には赤外線通信やイヤホンマイク端子を搭載しておき、車載オプションなどは思い切って省くべきだったと考えているが、現在の機能で問題ないと考えるユーザーもいるだろう。いずれにせよ、自分にとって、何が必要な機能で、何がいらない機能なのかをハッキリさせることによって、preminiに対する評価は自ずと決まってくるはずだ。

 これらのことを総合すると、preminiを「買い」と言えるのは、ここで紹介してきたpreminiのコンセプトを理解し、機能面などの制約を納得できるユーザーということになる。もう少し具体的に考えると、音声通話を重視し、メールとブラウジングは最小限で十分というユーザーという感じだろうか。ただ、くり返しになるが、その「最小限」の度合はユーザーによって異なるので、自分のニーズをよく見極める必要があるだろう。また、全体的に見て、機能的な制約を受けることも十分に理解しておく必要がある。

 preminiはなかなか評価の難しい端末だが、他の端末にはない個性があり、高機能化が進む今のケータイに一石を投じるものであることは確かだ。ユーザーにケータイの使い方や持ち歩き方、付き合い方も含めて、新しいスタイルを求める端末と言えるのかもしれない。



URL
  ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/04/whatnew0624b.html
  製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/premini/
  ニュースリリース(ソニー・エリクソン)
  http://www.sonyericsson.co.jp/company/press/20040624_premini.html
  製品情報(ソニー・エリクソン)
  http://www.sonyericsson.co.jp/product/docomo/premini/

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premini(ブラック)


(法林岳之)
2004/08/03 12:12

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