ケータイ Watch
連載バックナンバー
速報「着実な進化で一段と完成度を高めたiPhone 3GS」
[2009/06/24]

「去年と違う夏。」を体験させてくれるau2009年夏モデル
[2009/05/26]

19機種61色でコンテンツ利用拡大を狙うソフトバンク夏モデル
[2009/05/21]

「ひとりひとりのあなたへ」で幅広い期待に応えるドコモ夏モデル
[2009/05/20]

速報レポート~Windows Mobileの新時代を切り開く東芝「T-01A」
[2009/05/19]

決算会見で見えてきた三社三様の「ケータイのこれから」
[2009/05/12]

家庭のひかり電話でFMCが実感できる「SIPクライアント」
[2009/04/22]

ネットワークと連携するスマートフォン「BlackBerry Bold」
[2009/04/10]

デザイン力を柱にライフスタイルをデザインする「iida」
[2009/04/08]

データ通信サービスで見えてくる各社のネットワーク事情
[2009/02/26]

インターネットマシンの次を探るソフトバンク春モデル
[2009/02/02]

生活に溶け込むモデルを新名称で展開するau春モデル
[2009/01/30]


2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

2002年

2001年

2000年

モバイルセントラル
モバイルセントラル一覧へ
モバイルCatchUpタイトルGIF
『録って』『観て』『楽しむ』モバイルムービー対応「A5404S」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2003年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


AV指向を狙った「脱・着せかえケータイ」

 昨年末に相次いで発売されたauの新ラインアップの内、特徴的なフォルムを採用しているのがソニー・エリクソン製端末「A5404S」だ。同社製端末でおなじみの「着せかえケータイ」とは別のコンセプトで開発されたAV指向の強い注目端末だ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。


ポスト「カメラ付き」最右翼の「モバイルムービー」対応

au/ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ『A5404S』。サイズ:48×98×26mm(折りたたみ時)、127g。ブラック&シルバー(写真)、エアーホワイトをラインアップ
 昨年末、多くの家電量販店で、あるコーナーが予想以上の盛り上がりを見せていたのをご存知だろうか。PS2機能を搭載した「PSX」やボブ・サップのCMでおなじみの「DIGA」などが並ぶHDD/DVDレコーダーのコーナーだ。読者のみなさんの中にもいずれかのメーカーのHDD/DVDレコーダーを購入した人がいることだろう。HDD/DVDレコーダーの利便性についてはここで詳しく述べないが、実際に使ってみると、非常に便利なものだ。VHSのようにビデオテープを用意する必要もないし、見終わった番組はすぐに消すことができる。保存しておきたい番組は編集して、録画用DVDメディアに出力することも可能だ。受信できるソース(チャンネル)が多ければ多いほど、HDD/DVDレコーダーのメリットは大きくなる。

 ただ、こうしたHDD/DVDレコーダーで録画してもなかなか見る時間がないという声も多い。かく言う筆者のHDD/DVDレコーダーにも未消化の番組が数十時間は残っている(笑)。では、そのため込んだ番組をどうやって消化すれば、いいのだろうか。そのカギを握っているのがケータイなのだ。

 ケータイは元々、通話をするためのものだが、ユーザーが通話に費やす時間は限られている。そこで、待ち時間や移動中などの空き時間(パートタイム)にもケータイを有効活用することで、利用時間を伸ばしてきた。「コミュニケーション」という核はあるものの、コンテンツ閲覧もメールもアプリケーションも空き時間を有効に活用できる手段のひとつとして、支持されてきた。そこで、この手段に「録画した番組の再生」という方法を持ち込もうというわけだ。昨年末にレビューしたパナソニック製端末「P505iS」などもこうした活用方法を可能にしている。

 今回紹介するソニー・エリクソン製端末「A5404S」は、ソニーが打ち出した「モバイルムービー」というコンセプトに対応した端末だ。同社が販売するテレビ「WEGA(ベガ)」やメモリースティックビデオレコーダーなどでメモリカードに番組を録画し、端末上で再生することを可能にしている。残念ながら、現時点ではHDD/DVDレコーダーとの連携が実現できていないが、録画した番組を再生しやすいボディデザインを採用するなど、モバイルムービーを強く意識したコンセプトで開発されている。

 また、ソニー・エリクソン製端末と言えば、昨年6月に発売されたA5402Sまで「着せかえケータイ」をセールスポイントのひとつとしていたが、A5404Sではついに「着せかえ」をやめている。ユーザーとしてはやや残念な気もするが、今回のA5404Sも着せかえケータイに負けない個性的な端末に仕上げられている。実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


ムービーのための「120度クリックメカニズム」

 製品のスペックや細かい仕様については、auソニー・エリクソンの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくと/して、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。


ボディを1段目まで開いた「デスクトップスタイル」。モバイルムービーの再生に適した状態だ 背面にはモバイルムービー再生を考慮し、20mmの大口径スピーカーを装備。中央にあるのは海外向け端末でおなじみのソニー・エリクソンのロゴエンブレム

 まず、ボディは折りたたみデザインを採用しているが、他の端末とはひと味違い、2段階で開く「120度クリックメカニズム」と呼ばれるボディとなっている。1段目は約120度まで端末が開き、もう1段、開いた状態が全開となる構造だ。1段目の状態で机などに置くと、ちょうど液晶ディスプレイが見やすくなり、ムービーの再生に適した環境になる。この状態をソニー・エリクソンでは「デスクトップスタイル」と呼んでいる。また、1段目の状態でケータイをペンのように片手で持つ状態を「ペングリップスタイル」と呼んでおり、カメラでの撮影に適した状態になるとしている。ペングリップスタイルについては手ぶれのことなどを考慮すると、今ひとつの感はあるが、デスクトップスタイルは実際にムービーを再生してみると、なかなか見やすく、実用性のあるスタイルと言えそうだ。


メインディスプレイは低温ポリシリコンTFTカラー液晶を採用。高精細な表示が可能で、A5402Sに比べ、表示フォントもQVGAサイズに合わせた適正なものに変更された 背面ディスプレイもTFT液晶を採用。最近の端末としては標準的なサイズ。視認性は良好。バックライトの点灯時間は15秒に固定

 ディスプレイはメインが240×320ドット/26万色相当の表示が可能な2.3インチTFTカラー液晶、背面が96×96ドット/65,536色表示が可能な1.1インチTFTカラー液晶を採用する。メインディスプレイ側は高精細で高品質な表示が可能な低温ポリシリコン液晶となっている。


大きく変更されたキーレイアウト。全体的にキーが小型化され、デザイン優先でレイアウトされたため、操作は慣れが必要 センタージョグは小型化され、ヒンジ部分に埋め込まれている。指の太い人にはやや操作しにくい印象

右側面にメモリースティックDuoスロットを装備。ヒンジ側にある[クイックディスプレイ]キーはシャッターなどに利用。手前側の[カメラ]キーはカメラの起動などに利用する
 A5404Sが従来モデルと最も大きく変わったのは、ボタンデザインだろう。前述の「120度クリックメカニズム」を実現するため、同社製端末のもうひとつのセールスポイントだったセンタージョグをヒンジ付近に内蔵し、その左下に[メール]キー、右下に[EZ]キーをレイアウトしている。そのもう一段下の列には、[発信/受信]キー、[クリア]キー、[電源/終了/応答保留]キーが並ぶ。テンキー部の左下には[マナー]キー、右下には[メモ]キーがレイアウトされているが、この2つのキーはコンテンツ閲覧時などのページ送りの機能も割り当てられている。本体右側面にはメモリースティックDuoスロットを挟むような位置で、[カメラ]キーと[クイックディスプレイ]キーが装備されている。

 従来の端末ではセンタージョグの中央部分が少し出っ張ったような構造だったが、今回はコンパクトになり、全体的にフラットに仕上げられている。周囲のキーもひと回り小さくなったような印象で、操作性も好みが分かれるところだ。


130万画素CCDカメラを搭載

 次に、機能面について見てみよう。各機能を呼び出すためのメニュー画面は、従来のソニー・エリクソン製端末同様、センタージョグ中央でメニューを呼び出し、右方向を押すことで、次の階層が選択できるという構造だ。メニューの背景のカスタマイズや着せかえメニューなどの機能も用意されている。最近では画面を9分割、あるいは12分割したアイコン表示のメニューが一般的だが、センタージョグという独特な操作デバイスを持つ端末だけに、この独特のメニュー構造を採用しているようだ。


メニューは同社製端末でおなじみのセンタージョグに合わせたデザインを採用 基本的な機能は[セットアップ]メニューで設定が可能

メールはフォルダ管理に対応。[EZ]キーで切り替えれば、格納数を各行に表示することも可能 メールはメールアドレスによる自動振り分けが可能。振り分けの設定時にアドレス帳や送信履歴、メモ帳などを参照可能。受信したメールを表示した状態からも振り分け設定ができる

 メールはフォルダ管理に対応し、メールアドレスによる自動振り分けも可能だ。題名(Subject)やキーワードでの振り分けができないのは残念だが、届いたメールから振り分けの登録をしたり、フォルダでの振り分け登録時にアドレス帳や送信履歴、メモ帳を参照できるなど、登録そのものについては非常にわかりやすい。設定後に、フォルダ内のメールを再振り分けすることも可能だ。ただ、最近の他機種に見られる特定のフォルダのみの存在を隠す機能がなく、シークレットモードでメール機能そのものに制限することでしかセキュリティを掛けることができない。


日本語入力はおなじみの「POBox」を採用。快適性は相変わらずだが、文字種の切り替えが面倒なのは今後の課題。他機種も追随しているので、そろそろ大幅なバージョンアップを期待したい カメラは先端部分に装備。側面の[マクロ]スイッチで接写も可能

 日本語入力はおなじみの予測変換「POBox」を搭載し、ダウンロード辞書にも対応する。「スピードメーラー」と呼ばれるPOBoxとセンタージョグの組み合わせは、マッチングが非常に良く、従来モデルから高い評価を得ていたが、A5404Sはセンタージョグが小さくなったうえ、周囲のキーも小さくなってしまったため、ユーザーによっては従来のような軽快感が得られない。スピードメーラーはここ数年の日本語入力システムの高機能化の先駆者的存在だが、最近は他機種の予測変換機能もかなり充実してきており、そろそろもう一歩進んだ日本語入力環境の提案を期待したいところだ。文字の表示については、従来のA5402Sで非常に粗いフォントが不評だったが、A5404Sではこれも改善され、メール、EZwebともに2種類の表示フォントを選べるようにしている。

 カメラは130万画素CCD、高解像度のガラスレンズを採用し、切替えスイッチによる接写にも対応している。CCDはソニーと共同開発された低消費電力のものを採用しており、通話時間や待ち受け時間への影響を抑えているという。実際に使ってみた範囲でもA5402Sのときほど、バッテリーが減る印象はない。ただ、ケータイのCPUであるベースバンドチップや周辺回路の仕様も異なるため、一概にCCDだけで低消費電力化が実現できたとは言えないようだ。

 撮影できる静止画サイズは、1,280×960ドットの「SXGA」、640×480ドットの「VGA」、240×320ドットの「壁紙サイズ」、120×160ドットの「ケータイサイズ」の4種類となっており、カメラ起動時に[メール]キーを押して表示される[機能]メニューから切り替えることが可能だ。接写については前述の通り、カメラ部横にある[接写/標準切り替えスイッチ]で切り替えることが可能だ。


 ムービーについては、従来のA5402Sでサポートされていた「S(メール用)」「M(メール用)」「Sロング」「Mロング」「L」に加え、320×240ドット/10秒の「LL」にも対応している。メールで送れるのは2種類のみだが、LLはメインディスプレイのフルサイズで撮影できるため、ケータイとしては最も高画質のレベルで撮影できるということになる。ちなみに、Sロング、Mロング、Lロングについては、撮影したムービーから静止画を切り出してメールに添付することができ、SロングとMロングについては最大15秒までのムービーを切り出し、ムービーメールで送信することが可能だ。


カメラ起動時の設定メニュー。VGAサイズ以上の撮影モードではフレームやピクチャエフェクトが利用できない カメラ起動時の設定メニュー。スポット測光にも対応。選択中の撮影モードは画面右上に数字付きアイコンで表示される

 撮影時の機能としては最大8倍14段階のズーム、フレームの追加、ピクチャエフェクト、最大9枚の連写、QVGAサイズの画面を4分割して撮影できる4コマ連写などが用意されているほか、AUTO/屋内/蛍光灯/屋外が選べるホワイトバランス、夜景モード、スポット測光なども設定が可能だ。意外に面白いのが日付表示で、一般的な日付の写し込みだけでなく、郵便の消印のような「スタンプ」やフレームのような「天使の羽」といった遊びゴコロのあるものも用意されている。これらの撮影機能の内、ホワイトバランスは[*]キーと[#]キー、フォトライトについては[メモ]キーで操作することが可能だ。その他の機能はいずれも[メール]キーで表示される[機能]メニューから設定する必要がある。


撮影した画像は撮影日時などとともに、3行表示のサムネイル形式で表示される 3行表示の状態で[EZ]キーを押せば、9分割のサムネイル形式の表示も可能

 撮影した画像はファイル名の一覧形式、3行表示のサムネイル形式、9分割のサムネイル形式で閲覧することができる。それぞれの形式はサムネイル表示の状態で、[EZ]キーを押すことで切り替えることが可能だ。


画像編集メニュー。画像サイズが壁紙サイズ以下であれば、ケータイサイズへの変換、スタンプやテキストスタンプの追加が可能 SXGAサイズの画像をメールに添付しようとすると、サイズを変換するメニューが表示される。この後、画像が添付されたメール画面をキャンセルすれば、小さいサイズの画像を生成可能 最大サイズで撮影した画像をそのまま、待受画面に設定できる。表示する向きも選択できる

SXGAサイズで撮影したサンプル画像。元画像をJPEG回転させている。リンク先は無加工。(モデル:朱野順子サンタ・クローチェ所属) SXGAサイズで撮影したサンプル画像。部屋がやや暗かったため、全体的に粗く写ってしまった。リンク先は無加工

SXGAサイズで撮影したサンプル画像。リンク先は無加工。明るいスタジオ内なら、しっかりと写る。(モデル:篠崎ゆき/スーパーウイング所属)

 画像編集については、やや独特の仕様という印象だ。編集できるのは壁紙サイズ以下の画像に限られ、VGAサイズ以上の画像は基本的に編集することができない。ただ、SXGAサイズの画像をメールに添付しようとすると、ケータイサイズか、壁紙サイズにリサイズされるため、その状態でいったん画像を保存し、送信メールをキャンセルすれば、ケータイサイズや壁紙サイズの画像を生成することが可能だ。ただし、VGAサイズの場合はそのまま添付されてしまうので、この小技(?)を使うことはできない。壁紙サイズ以下の画像については、「フレーム」や「スタンプ」、「テキストスタンプ」の追加、モノトーンやセピアに変換できる「ピクチャエフェクト」、「回転」などの機能が利用可能で、壁紙サイズからケータイサイズへの「ケータイサイズ変更」も用意されている。こう書くと、VGAやSXGAの画像は使い道がないように見えるが、A5404SではSXGAやVGAの画像をそのまま、縮小表示で待受画面に設定することが可能だ。筆者が以前から指摘している「最大サイズで撮った画像を待受画面やメールに使えるか」という点については、一応条件を満たしているのだが、全体的にやや操作が煩雑なうえ、わかりにくい印象は否めない。


手軽で楽しいモバイルムービー

モバイルムービーを録画できるメモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」。録画専用で、地上波のアナログ放送に対応。外部からのビデオ入力での録画も可能
 さて、A5404Sのセールスポイントのひとつである「モバイルムービー」について見てみよう。HDD/DVDレコーダーなどで録画した番組をケータイで再生するという方法については、すでにいくつかの機種が実現しているが、ソニーはAV機器メーカーの強みを活かし、「モバイルムービー」というコンセプトを謳い、同社のさまざまな製品群でこれを実現しようとしている。録画については同社のテレビ「WEGA(ベガ)」やメモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」、モバイルAVビューアー「MSV-A1」、再生については今回紹介しているA5404Sのほか、NTTドコモ向け端末「SO505iS」、モバイルAVビューアー「MSV-A1」、同社のPDA「クリエ」(PEG-UX50/NX80V/NX73V/TG50/NZ90/NX70V/NX60)が対応している。しくみとしては対応機器でメモリースティック(アダプタを装着したメモリースティックDuoなどを含む)で録画し、そのメモリースティックを対応機器に装着して再生するという形になる。

 A5404Sでモバイルムービーを最も手軽に実現できるのは、メモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」になるため、筆者も実機を購入し、試してみることにした。PEGA-VR100Kは録画のみを行なう専用機で、本体にアンテナを接続し、日時などを設定すれば、あとは録画ボタンを押すだけでメモリースティックに録画できるが、これでは手動録画になってしまう。そこで、メモリースティックに予約録画情報やチャンネル設定を書き込んでおき、それをPEGA-VR100Kに装着して、予約録画が行なわれるというしくみを採用している。


Windows用に提供されている「ビデオレコーダー設定ツール」 PEGA-VR100Kの設定もこのツールでメモリースティックに書き込む

予約情報は日時などを逐次、入力する必要がある。iEPGなどと連携できれば、ベストなのだが…… メモリースティックの空き容量から録画可能時間が確認できる。A5404Sは「長時間2(LP2)」のデータのみ再生可能

 録画予約の情報はPEGA-VR100Kが元々、CLIE用周辺機器だったということもあり、CLIEでしか書き込むことができなかったが、A5404SやSO505iSの発売に合わせ、Windowsで動作するユーティリティ「ビデオレコーダー設定ツール」が同社サイトで公開されている。このツールでは録画する日時や時間、記録モードなどの「録画予約設定」、受信する「チャンネル設定」、PEGA-VR100Kの時刻を調整する「ジャストクロック設定」などを設定でき、設定した情報をメモリースティックに保存することが可能だ。ちなみに、パソコン本体にはメモリースティックを読み書きできる環境が必要になるが、筆者が試した範囲ではメモリースティックDuo用CFアダプタ「MSAC-MCF1」でも設定できているので、おそらくPCカードアダプタなどを利用した場合でも同様に録画予約の情報を書き込めるはずだ(ただし、筆者及び編集部は動作を保証しない)。

 録画予約の情報を書き込んだメモリースティックDuoにアダプタを装着して、PEGA-VR100Kに挿すと、画面上に「r02」(「r」はReserve、「02」は2件を意味する)と予約情報が表示され、[STANBY]ランプが点灯する。あとは予約録画が実行されるのを待つのみだ。ちなみに、A5404Sで再生できる記録モードはWEGAの「長時間」モード、PEGA-VR100Kの「LP2」モードで記録したムービーのみで、録画時間は1件につき、最大2時間までとなっている。PEGA-VR100KのLP2モードは、ビットレートが64kbps、フレームレートが15fps、フレームサイズが176×144ドット、サンプリングレートが24kHz、オーディオのビットレートが64kbpsという仕様になっている。

 A5404Sに装着できるメモリースティックDuoは標準的な「MSA-M32A」「MSA-M16A」に加え、最大128MBまでの「メモリースティックDuo(マジックゲート/高速データ転送対応)」及び「MGメモリースティックDuo」、最大512MBまでの「メモリースティックPRO Duo」が含まれているため、あとは容量の許す限り、何本も録画して、保存しておくことが可能だ。ちなみに、LP2モードで録画した場合、128MBのメモリースティックDuoには約130分、512MBのメモリースティックPRO Duoには約490分の録画ができる。


モバイルムービーも静止画と同じように3行表示。右側に表示されているのは録画した日時。[EZ]キーでリスト表示に切り替えが可能 モバイルムービーの再生画面。センタージョグで音量調節、左右キーで早送りと巻き戻しが可能。再生時間などは表示されない

 実際の画質についてだが、最も低いビットレートで録画するため、端末上で観るのにちょうどいいくらいだ。動きの激しいソースは適していないが、ニュースやトーク番組、ドラマなどであれば、観られるといった印象だ。録画したファイルは先日公開された「QuickTime 6.5」でも再生できるが、パソコンでの視聴にはちょっと厳しい。また、二カ国語放送や音声多重放送の番組を録画する場合、A5404S上では主音声と副音声を選択することができないので、録画予約をする段階で、いずれかの音声を優先するように設定する必要がある。

 A5404Sにおけるモバイルムービーは録画環境を整えるのにやや手間が掛かるものの、一度、録画環境が整ってしまえば、非常に手軽に番組を楽しむことができる。気になるバッテリー消費も1時間程度の番組の再生なら、それほど苦にならない。ただ、本質的なことを言えば、メモリースティックへの予約情報の書き込みは端末上でできるべきであり、テレビの番組情報などを掲載しているEZwebコンテンツと連携を図り、端末上で簡単に録画予約をできるようにして欲しいところだ。また、ソニーが販売するパソコン「VAIO」には「Giga Pocket」という便利な録画環境があるので、こちらとの連携(録画データの変換)も期待したいところだが、今のところ、ソニーとしても検討中のレベルだそうで、今後の展開が期待される。


モバイルムービーに興味があるなら「買い」

 最後に、A5404Sの「買い」について診断してみよう。従来の着せかえケータイの路線を捨て、モバイルムービーという新しいコンセプトで開発されたA5404S。内部のソフトウェアはA5402SやA1301Sを踏襲しているが、モバイルムービーを楽しむためのボディ形状を採用するなど、今までになく、意欲的な製品だ。モバイルムービーそのものは録画環境を整えるのに若干、手間が掛かるものの、再生は手軽で快適なものであり、コンテンツ次第ではかなり実用性の高い環境が得られる。たとえば、テレビ番組で語学学習をしている人や月9のドラマは見逃せないといったユーザーのニーズにも応えることができるだろう。

 ただ、モバイルムービーのために、実売で約3万円弱のPEGA-VR100Kを購入するのはちょっと敷居が高いだろうし、誰もが数十万円のWEGAを持っているわけでもない。やはり、PSXやコクーン、Giga Pocketなど、ソニーグループが持つ録画環境をすべてモバイルムービーに対応させるといったアプローチが必要になるだろう。いずれにせよ、ソニーグループとして、積極的にモバイルムービーを推し進める姿勢が出てくるかどうかが今後の普及のカギを握ることになりそうだ。

 これらの点を総合すると、A5404Sを「買い」と言えるのはモバイルムービーの可能性に期待したいユーザーということになる。筆者が試した限り、モバイルムービーはなかなか楽しいものであり、コンテンツ次第ではかなり実用性も高い。対応機器が限られているが、逆にいろいろなフォーマットが混在しているSDビデオの環境に比べてわかりやすいという印象すらある。

 また、モバイルムービー以外の面については、ややクセがあるものの、全体的に見て、及第点に達している。ただ、ボタン類の操作性は従来のソニー・エリクソン製端末に比べ、ややスポイルされた感は否めず、同一メーカーでの乗り換えユーザーも従来のような快適性をあまり期待しない方が良さそうだ。操作についてはやや「慣れ」を必要とする端末に仕上げられたと考えて差し支えないだろう。



URL
  ニュースリリース(au)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2003/1006/index.html
  製品情報(au)
  http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a5404s/index.html
  ニュースリリース(ソニー・エリクソン)
  http://www.sonyericsson.co.jp/company/press/20031006_a5404s.html
  製品情報(ソニー・エリクソン)
  http://www.sonyericsson.co.jp/product/au/a5404s/
  「モバイルムービー」ホームページ(ソニー)
  http://www.sony.jp/products/mm/
  メモリースティックビデオレコーダー「PEGA-VR100K」(ソニー)
  http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/Acc/PEGA-VR100K/

関連記事
au、200万画素CCD搭載の「A5403CA」とビデオ再生対応の「A5404S」
A5404S(エアーホワイト)
QVGAサイズの液晶でムービーを堪能できる「A5402S」


(法林岳之)
2004/01/13 14:39

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2004 Impress Corporation  All rights reserved.