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エンターテインメント性と美しさを追求した「J-SH53」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2003年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


世界初のメガピクセル級カメラ付きケータイ

 カメラ付きケータイの市場を切り開いたJ-フォンのシャープ製端末「J-SHシリーズ」。歴代のモデルで着実に進化を遂げてきたが、世界初のメガピクセル級カメラ付きケータイとなる「J-SH53」が発売された。筆者も端末を購入したので、レポートをお送りしよう。


身の回りのものを次々と取り込むケータイ

J-フォン/シャープ『J-SH53』。サイズ:50×98×24mm(折りたたみ時)、115g。ダークブラック(写真)、スリックシルバー、ジャインベージュをラインアップ
 話すための通信機器としてケータイ。しかし、メールやコンテンツ閲覧サービスの登場により、「使うケータイ」に生まれ変わり、カメラ付きケータイによって、画像付きメールによるコミュニケーションが育まれ、「楽しむケータイ」へと進化を遂げた。

 これらの進化を機に、ケータイはさらに身の回りのものを次々と取り込もうとしている。たとえば、外部メモリカードを利用し、オーディオプレーヤーの機能を取り込もうとしたり、スケジュール機能やアドレス帳をvCard/vCalendar形式に対応させることにより、PDAライクな使い方も可能にしようとしている。ケータイに搭載されている時計で十分ということで、腕時計を使わなくなった人も少なくない。

 そして、この春、各社から約100万画素のカメラを搭載したカメラ付きケータイが登場したことで、デジタルカメラやレンズ付きフィルムの市場を脅かすといった分析も数多く出ている。以前から紹介しているように、カメラ付きケータイにはカメラ付きケータイなりの使い方があるため、すぐにデジタルカメラやレンズ付きフィルムに置き換わるわけではないだろうが、影響は少なからずあるのかもしれない。

 今回紹介するJ-フォンのシャープ製端末「J-SH53」は、世界初の100万画素、つまりメガピクセル級のカメラを搭載した端末として、今年5月22日に発売された。初のカメラ付きケータイ「J-SH04」以来、カメラ付きケータイをリードしてきたJ-SHシリーズがまたしても「初」をゲットしたことになる。NTTドコモの三菱製端末「D505i」が5月23日に発売されることが明らかになっている状況で、5月22日から一部のJ-フォンショップのみで販売を開始したあたりに、やや強引だった印象も残るが、J-SHシリーズの面目を何とか保ちたかったというところだろうか(笑)。

 また、J-SH53は「世界初のメガピクセルケータイ」という部分ばかりが話題になっているが、実はそれ以外にもいろいろと注目すべき点が多い。たとえば、そのひとつが前述の「身の回りにあるものを取り込む」という部分だ。カメラ付きケータイが主流になったことで、メモリカードスロットを標準で搭載する端末が増えているが、J-SH53ではSDメモリカードを単にカメラの画像を保存するためのメディアとして利用するだけでなく、コンテンツなどを保存し、端末上で再生するためのメディアとしても活用しようとしている。カメラ付きケータイを進化させてきたJ-SHシリーズの最新モデルがどこへ進もうとしているのかなども踏まえ、J-SH53の出来をチェックしてみよう。


QVGAサイズのCGシリコン液晶を搭載

 製品のスペックや細かい仕様については、J-フォンシャープの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。


J-SH52に比べ、背面にあったアンテナが内蔵され、スッキリまとまっている ヒンジ部にはJ-SH010と同じ補助用のホイップアンテナを内蔵する

 まず、ボディについては、今年3月に発売されたJ-SH010とほぼ同じコンセプトの折りたたみデザインを採用している。メインアンテナを背面のトップ側に内蔵し、補助的に利用するホイップアンテナを背面側に格納する。内蔵アンテナとホイップアンテナで、従来モデルと変わらない特性を確保している点は、J-SH010と同様だ。全体的にも従来のJ-SH52と比べると、かなりスッキリとまとめられている。

 背面側にはJ-SH53の売りのひとつである約100万画素のCCDを採用したモバイルカメラを内蔵し、右側面には撮影時に通常モードと接写モードを切り替える接写スイッチを備える。カメラについては、J-SH52が背面のトップ側にカメラを装備していたのに対し、J-SH53ではヒンジ部側に移動している。おそらく高画素化による手ぶれを抑えるための措置ということだろう。背面ディスプレイの隣にはモバイルライトとJ-SH53から新たに装備された赤外線通信ポートを備える。

 J-SH52で背面ディスプレイ側にSDメモリカードスロットは、テンキー部の本体左側面に移動している。ただ、その割にはテンキー部が厚くなっておらず、全体で見てもJ-SH010に比べ、わずか1mm増えただけの厚さ24mmに抑えられている。


カメラはヒンジのすぐ隣に装備される。背面ディスプレイ横にあるのはモバイルライトと赤外線通信ポート SDカードスロットは側面に装備される。付属のSDメモリカードは8MBだが、筆者は早速、128MBのものに交換した。さらに大容量のものも認識はするが、動作保証は128MBまで。256MB以上のSDメモリカードを装備すると、動作が遅くなってしまうそうだ

 メインの液晶ディスプレイは最大320×240ドット/26万色表示が可能な2.4インチTFTカラー液晶を採用する。J-SH010にも採用されているCGシリコン技術を利用したシステム液晶と同じもので、非常に高精細な表示が可能だ。送受信メールもフォントサイズを変更することにより、最大20文字×20行の400文字表示に対応する。ちなみに、フォントはシャープ製端末でおなじみだが、液晶表示用に開発されたLCフォントを採用している。背面に装備されたサブディスプレイは64×96ドット/65,536色表示が可能な1.2インチGFカラー液晶を採用し、自分撮りや端末のステイタス表示(着信やメールの有無、電波状態)を可能にしている。また、一部のJavaアプリはサブディスプレイの表示にも対応している。

 ボタン類は方向キーと決定ボタンを組み合わせた[マルチガイドキー]を中心にレイアウトし、右上にユーザーショートカットを呼び出すための[ダイレクトキー]、左上に[J-スカイ]ボタン、左右したに[開始]ボタン(発話)と[終了]ボタン(終了)をレイアウトしている。テンキー部との間に[クリア]ボタン、[メモ]ボタン、[マナー]ボタンが並ぶ構成も従来のJ-SH52と同じだ。液晶ディスプレイ部の左側面には[サイド]キーが備えられているが、簡易留守録の応答や写メールモードでのカメラ起動などの機能を割り当てることができる。

 全体的に見て、今年3月にJ-SH010が発売されていたため、ボディ周りから受けるインパクトはそれほど大きくないが、従来のJ-SH52と比べると、背面ディスプレイ横からアンテナがなくなり、液晶ディスプレイがQVGA化されるなど、大きく印象の変わる端末に仕上げられていると言えるだろう。


メインディスプレイはJ-SH010と同じCGシリコン技術を利用したシステム液晶を採用。320×240ドットのQVGAサイズの表示が可能 背面ディスプレイはJ-SH52の0.9インチよりもひと回り大きい1.2インチのGFカラー液晶を採用 ボタン類はマルチガイドキーを中心にレイアウト。キーの周囲に凹みをつけて、全体的にフラットに仕上げている

MPEG-4形式のムービーにも対応した内蔵カメラ

デジタルカメラモードのサブメニュー内で選択できる機能。設定内容は最上段に表示される

写メールモードのサブメニュー内で選択できる機能。撮影サイズによって、選択できる機能が異なる。設定内容は最上段に表示される
 次に、J-SH53の内蔵カメラについて見てみよう。すでに他事業者からも端末が発売されているが、J-SH53は前述の通り、世界初のメガピクセル級カメラを搭載したケータイだ。メガピクセル化されたことでプリントなどにも利用できるだろうが、やはり、気になるのはカメラ付きケータイとしての基本的な性能だ。

 まず、撮影できる静止画サイズはデジタルカメラモードが1,144×858ドットの「メガピクセルサイズ」、1,024×768ドットの「XGAサイズ」、640×480ドットの「VGAサイズ」から選択できる。デジタルカメラモードの場合、いずれもJPEG形式のデータはSDメモリカードにDCF形式で保存される。新たにDPOFにも対応したため、SDメモリカードをプリントショップなどに持ち込んだり、DPOF対応のプリンターに挿せば、目的の画像のみをプリントすることができる。ファイルサイズはメガピクセルサイズで約300~400KBと大きい。

 写メールモードでは320×240ドット「QVGAサイズ」、160×120ドットの「QQVGAサイズ」、128×120ドットサイズ、96×64ドットの「サブディスプレイサイズ」の4種類から選ぶことが可能だ。このうち、QVGAサイズの画像をスーパーメールで送れるのは同一機種のJ-SH53、パソコンなどの一般的なインターネットメールの他、ほぼ同等のスペックを持つJ-SH010にも送ることができる。J-SH010にQVGAサイズの画像を送りたいときは、QVGAサイズの画像を4分割して送信する「画像分割メール」を利用する。ちなみに、同じQVGAサイズの液晶ディスプレイを搭載した端末が他事業者でも販売されているが、J-フォンが提供する「@写メール」のサービスを利用することで、J-SH53からQVGAサイズの画像を同サイズのまま、送ることができた。

 写メールモードで撮影した画像は本体メモリとSDメモリカードのいずれかに保存することができる。ただし、正式なスペックこそ公開されていないが、本体メモリは約4MB程度なので、画像がたまってきたら、SDメモリカードに移動する必要があるだろう。

 画質はデジタルカメラモード、写メールモードのいずれで撮影する場合も「ファイン」「ノーマル」の2段階から設定できる。明るさも5段階で調節が可能だ。デジタルズームについては、128×120サイズ以下で最大7倍、QVGAサイズで3.5倍、VGAサイズで1.7倍のズームが可能だ。4枚、もしくは9枚の連写撮影、2/5/10秒の時間が設定できるタイマー撮影にも対応する。連写撮影では連写スピードを4段階で設定できる上、ユーザーがシャッターを押す度に撮影できる「マニュアル連写」にも設定することが可能だ。撮影距離は通常モード時に約40cm以上、接写モードで約10cm程度が目安になるそうだ。


メガピクセルサイズで撮影したサンプル画像をJPEG回転させたもの。ファイルサイズは約330KB。※リンク先の画像は無加工 QVGAサイズで撮影したサンプル画像。ファイルサイズは約24KB。(モデル:榊原可緒里/所属:スーパーウィング)※リンク先の画像は無加工

VGAサイズで撮影したサンプル画像。ファイルサイズは約130KB。(モデル:篠崎ゆき/所属:スーパーウィング)※リンク先の画像は無加工 撮影した画像はサムネイル表示が可能。写真は本体側のデータフォルダ内。ただし、どのサイズで撮影されたものなのかがプロパティを見てもわからない

 撮影した画像の加工や編集機能も充実している。10種類の画像装飾、20種類のフレーム、10種類のムービングフォトフレーム、10種類のフェイスアレンジが用意される他、パノラマ合成やパラパラマンガ風の簡単アニメの作成も可能だ。ただ、これらの機能を利用できるのは、写メールモードで撮影した場合に限られる。デジタルカメラモードで撮影した画像は、データフォルダにいったん保存して、サイズを変更したり、切り出しをした場合に限られる。

 サイズの変更については、写メールモードの画像であれば、[壁紙用][写メール用][サブディスプレイ用][パワーON/OFF用][着信時表示用][アラーム時表示用]に変更でき、[自由切出]で好きなサイズに切り出すこともできる。デジタルカメラモードで撮影した画像については、[データフォルダに保存]を実行し、QVGAサイズに変換した上で写メールモードと同じようにサイズ変更をすることになる。ただ、デジタルカメラモードの撮影直後であれば、[機能]メニューから[サムネイルメール添付]を選べば、QVGAサイズに変換した画像を添付したメールをすぐに作成することが可能だ。

 これらのことからもわかるように、J-SH53の画像変換・編集機能はQVGAサイズを境に、扱い方が異なる。写メールモードには各サイズへの変換や自由切出という便利な機能が豊富に用意されているが、デジタルカメラモードで撮影した画像に対してはこれらの機能を直接、利用できない。たとえば、デジタルカメラモードで撮った画像の一部を切り抜き、それを待受画面に設定したいことがあるが、J-SH53ではいきなり壁紙サイズのQVGAになってしまうわけだ。機能的には申し分ないのだが、せっかくのメガピクセルが活かし切れていない印象が残る。

 一方、ムービー写メールについては、J-SH52などでサポートされてきた「Nancy」コーデックによる動画に加え、MPEG-4形式のムービーも最大10秒まで撮影できるようになっている。J-SH53で新たに採用されたMPEG-4形式は次世代携帯電話の標準的な動画フォーマット「.3gp」形式で、FOMAのiモーションメールなどでも採用されている。MPEG-4形式で撮影可能なサイズはNancyモードと同じ80×60ドットに加え、128×96ドットというひと回り大きいサイズも設定できる。さらに、同じMPEG-4形式を利用した「モーションカメラ(MPEG)モード」と呼ばれる動画撮影モードも用意されている。モーションカメラ(MPEG)モードでは128×96ドット、176×144ドットの動画を撮影することが可能で、画質もノーマルとファインの2段階で設定ができ、撮影時間の制限も最大30分(付属の8MBのSDメモリカードでは約16分)と長い。モーションカメラ(MPEG)モードで撮影した動画は、スーパーメールでそのまま送信できないが、ムービー写メールのMPEGモードと同サイズに切り出せば、ムービー写メールとして送信することが可能だ。ただ、MPEGモードをサポートしたムービー写メール対応端末はJ-SH53しかないため、J-SH53以外ではパソコンに送るしかない。ちなみに、.3gp形式は先日、ニュースでも紹介されていたように、QuickTime 6.3にモジュールを追加することで、パソコン上で再生することが可能だ。


デジタルカメラモードで撮影した画像はサムネイル(QVGAサイズ)を本体側のデータフォルダに保存可能 写メールモードで撮影した画像やQVGAサイズの画像は、いろいろなサイズに変換できる

SDメモリカードをフル活用せよ

 J-SH53はメガピクセル化されたカメラが注目されているが、それ以外にも注目すべき機能が数多く用意されている。


メニュー画面は上下方向に項目を選択する方式。QRコードや赤外線通信は画面左下の[USEFUL]内のメニューから選ぶ QRコードは端末上で作成したり、端末に表示した画像を認識させることが可能。この状態で[作成]を押せば、簡単に作成できる

筆者のJ-スカイ用ホームページをQRコード化したもの。うまく認識しないときは、接写モードと標準モードをそれぞれ切り替えて試してみて欲しい

意外に面白い電子ブック。筆者も早速、こんな電子ブックを購入してみた。短いが値段も50円と安いので、気軽に購入できる
 まず、従来モデルからサポートされていたバーコード(QRコード)読み取り機能は、新たに読み取りデータを保存できるようになり、QRコードを端末上で作成したり、作成したQRコードを画像データとしてメールに添付して送ることも可能にしている。たとえば、自分の電話番号やメールアドレスなどの情報をQRコードの画像として保存しておけば、相手にその画像を見せるだけで、必要な情報を受け渡せるようになるわけだ。もちろん、相手がQRコード対応端末である場合に限られるが、上手に利用すれば、ある程度、秘匿性のある情報の受け渡しが可能だろう。

 SDメモリカード周りではJ-SH52でサポートされていたミュージックプレーヤーやボイスレコーダーがJ-SH53にも受け継がれているが、ボイスレコーダーについては新たにファインモードでの録音を可能にしている。ちなみに、J-SH52でもオプションでマイク付オーディオリモコンが用意されていたが、J-SH53では液晶付きになり、さらにグレードアップしている。

 そして、SDメモリカードで最も期待されるのが電子ブックへの対応だ。XMDF形式と呼ばれるフォーマットの電子ブックをSDメモリカードに保存しておけば、いつでも好きなときにケータイで読書ができるわけだ。XMDF形式の電子ブックはシャープスペースタウンで提供されているが、なかには一般の書籍よりも安価なタイトルや試読(立ち読み)できるタイトルもあるので、端末を購入した人は試読だけでもしてみるといいだろう。好き嫌いはあるかもしれないが、意外に読めるので、筆者も驚いたくらいだ。ちなみに、シャープが運営するオンラインショッピングサイト「kutikomi」では、J-SH53で利用できる電子ブックや電子辞書を保存したSDメモリカードを販売している。電子ブックや電子辞書のために、SDメモリカードを購入する予定がある人は、こうしたサービスを利用するのも手だろう。

 また、サービスに関係する機能としては、ブラウザが新しいものに変更され、Javaアプリも最大256KBのものに対応した。ブラウザについてはJ-N51同様、Openwave Systemsのものに変更されているようで、J-SH52のときよりも快適にコンテンツを閲覧することができる。ただ、速度という点についてはJ-N51の方が速かった印象もある(同時に並べて比較したわけではない)。

 Javaアプリについては、大容量化により、一時の家庭用ゲーム機に匹敵する高度なゲームも楽しめるようになった。ただ、256KBという容量は、単純に計算してダウンロードだけで600円近くパケット代が掛かることになるため、その部分もよく考慮して、Javaアプリをダウンロードした方がいいだろう。もちろん、ダウンロードしたJavaアプリがSDカードに登録可能であれば、念のため、移動しておくのも手だ(本体メモリよりもSDメモリカードが安全とは一概に言えないが……)。


メールはフォルダ管理が可能だが、メールを表示した状態では他のフォルダにコピーできない。一覧表示の場合のみコピーが可能
 また、本体背面には赤外線通信ポートが用意されているが、パソコンなどの赤外線通信ポートとデータのやり取りが可能だ。ちなみに、iモード端末ではカメラで撮影した画像を赤外線通信でパソコンに転送するのに、専用のユーティリティ(オンラインソフトとして、いくつか公開されている)を必要としたが、筆者が試した限り、J-SH53ではJPEG画像がダイレクトに転送できた。ただ、他事業者端末との赤外線通信による画像転送はできないようなので、注意が必要だ(メールなどは可能)。

 赤外線通信ポートを利用したリモコンJavaアプリなども提供されており、筆者も早速、試してみたが、正直に言ってしまうと、今ひとつという印象だった。今回はJ-スカイ公式サイトでアイラテが提供している「Jテレビ/番組サーチ」の「アプリモコン」を試したが、筆者の所有するAV機器は操作できなかった(同じ機器は他社のケータイによるリモコンで操作できている)。J-SH53そのものの問題ではないのだろうが、せっかく赤外線通信機能を搭載し、リモコンも実現できるのであれば、シンプルな機能のものでも構わないので、標準で搭載して欲しかった。せっかく有料コンテンツの契約をして、Javaアプリをダウンロードしたのに、使えなかったではユーザーの落胆も大きい。この点については、また別の機会に説明したい。

 メール周りについては従来通り、フォルダによる管理、メールアドレスや件名による自動振り分けなどをサポートしているが、メール一覧画面とメールを表示した状態で、メールのフォルダ移動の動作が違うなど、細かい部分に不満が残る。新たにサポートされた機能としては、「簡易メール宛先呼出」が挙げられる。よくメールを送る相手を最大9人まで登録しておき、アドレス帳を参照しなくても簡単にメールアドレスを呼び出すことが可能だ。日本語入力は「ケータイShoin2」が搭載されており、従来同様、50音の各行のボタンを押すだけで、簡単にかな漢字を変換できるようにしている。J-SH53ではこれに加え、ひらがなを1文字入力するごとに変換候補が次々と表示される「近似予測変換」、過去の文字入力や変換履歴から推測する「連携予測変換」がサポートされ、ダウンロード辞書にも対応している。日本語入力環境については、申し分のない出来と言えるだろう。


メガピクセルでさらなる進化を遂げたが……

 さて、最後にJ-SH53の「買い」について診断してみよう。カメラ付きケータイのトレンドをリードしてきたJ-フォンのJ-SHシリーズ。今年3月にJ-SH010が発売されているが、J-SH53はパケット通信に対応した上位モデルに位置付けられる。カメラはメガピクセル化され、SDメモリカードも撮影した画像を保存したり、バックアップするだけでなく、電子ブックなどの新しい取り組みも見せている。機能の豊富さについては、他を圧倒するほどの充実ぶりだ。通話やメールによるコミュニケーション、コンテンツ閲覧による情報収集に始まり、カメラで撮影、ミュージックプレーヤーで音楽を聞き、SDメモリカードで読書を楽しんだり、辞書を活用、QRコードで情報のやり取りと、日常のさまざまなシチュエーションで活用できるスゴい端末と言えるだろう。

 これらを総合すると、J-SH53を買いと言えるのは、とにかくケータイであらゆることを試してみたい、遊んでみたいという欲張りなユーザーということになる。メールやコンテンツ閲覧だけでなく、カメラからSDメモリカードまで、とにかく遊ぶため、使うための魅力はいっぱいに詰まっている。まさに「遊び倒す」「使い倒す」ほどの意気込みを必要とする端末だ。メガピクセル化されたモバイルカメラもスゴいが、QVGAサイズの液晶ディスプレイとSDメモリカードを活かした電子ブックは、今後の展開が非常に楽しみだ。

 ただ、J-SH53にも不満点がないわけではない。たとえば、前述の画像加工や編集機能もそのひとつだ。せっかくメガピクセル化したのに、デジタルカメラモードで撮影した画像をQVGAサイズにしか変換できないのは残念だ(QVGAに変換後、より小さいサイズには変換できる)。メガピクセルサイズやXGAサイズなどでの切り抜きは、サポートして欲しかったところだ。他事業者の端末と比較するのはあまり正しくないのかもしれないが、この部分については前回紹介したA5401CAや近日紹介する予定のSH505iに一歩譲っている感すらある。また、非常に細かい部分で言えば、薄型化を目指したためか、手で握って操作をしているときなどに、背面のバッテリーカバーの部分がわずかに軋むなど、仕上げの面でも気になる点がいくつかある。

 ここ1~2年ほどの間に、急速に進化した印象のあるJ-SHシリーズ。J-SH53では新たなジャンルの機能も盛り込み、ケータイの可能性をさらに拡げようとしている。しかし、Javaアプリの話でもわかるように、そろそろPDC方式にも限界が見えてきた部分もある。PDC方式の端末で培われた技術を活かし、そろそろ異なるプラットフォームでJ-SHシリーズ(名称は違うかもしれないが……)を見たいと考えているのは、筆者だけではないだろう。



URL
  ニュースリリース(J-フォン、PDF形式)
  http://www.j-phone.com/japanese/release/2003/030424.pdf
  製品情報(J-フォン)
  http://www.j-phone.com/japanese/products/kisyu/j_sh53/
  ニュースリリース(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/corporate/news/030424-2.html
  製品情報(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/products/jsh53/
  「SDカードマネージャー」ダウンロードサイト(シャープ)
  http://k-tai.sharp.co.jp/download/tools/sdmngr/
  「ケータイQRコードマネージャー」ダウンロードサイト(シャープ)
  http://k-tai.sharp.co.jp/download/tools/qrmngr/
  「SpaceTownブックス」(シャープ)
  http://www.spacetown.ne.jp/menu21/books/what/usage_ebook/model/keitai.html
  「kutikomi」(シャープ)
  http://www.kutikomi.ne.jp/

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(法林岳之)
2003/07/08 15:51

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