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リボルバーでケータイのスタイルに革命を起こす「A5305K」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2003年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


ケータイの新しいスタイルを模索した注目端末

 ムービーメールのラインアップを拡充するauに、今までのケータイとは明らかに異なるスタイルを実現した端末「A5305K」が登場した。「リボルバースタイル」と呼ばれるボディは、フロントディスプレイのボディを回転させるというユニークな機構によって実現されている。筆者も機種変更で端末を入手したので、早速レポートをお送りしよう。


カメラが付いたことによるボディの変化

A5305K

 au/京セラ『A5305K』。サイズ:50×100×22mm(クローズ時)、108g。フォーミュラレッド(写真)、チタニウムゴールド、スーパーホワイトをラインアップ
 iモードをはじめとするモバイルインターネットが普及したことにより、国内で販売されるケータイは、ご存知のようにストレートやフリップなどのデザインから折りたたみデザインが主流になっている。今やストレートデザインの端末は、各社とも数えるほどしかラインアップしていない。

 しかし、昨年あたりからカメラ付きケータイが急速に普及したことにより、ケータイのボディにも少しずつ変化が見えてきている。「せっかくカメラが搭載されているのだから、カメラとしての使いやすさを考えたい」「写真の撮りやすいデザインはどんな形」といったことが考えられているわけだ。

 たとえば、本連載で紹介したパナソニック製端末「P2102V」による『ムービースタイル』もそのひとつだ。ムービースタイルは折りたたみデザインを採用しながら、開いて液晶ディスプレイ部を回転できるようにして、ビデオカメラのようなスタイルで端末を使えるようにしている。しかし、ムービースタイルは基本的に折りたたみデザインの進化形であり、カメラ付きケータイとしてのまったく新しい形というわけではない。

 今回紹介する京セラ製端末「A5305K」は、ムービーや写真を撮るカメラ付きケータイとして新たに考えられた「リボルバースタイル」を採用した端末だ。液晶ディスプレイを前面にレイアウトしながら、液晶ディスプレイ部ごと、グルッとまわしてしまうという大胆なメカニズムを持つ。折りたたみデザインの進化形でもなければ、ストレートデザインの変身でもない、まったく新しいコンセプトのデザインと言えるだろう。

 ちなみに、リボルバーは「Revolve(回転する)」から派生した単語で、直訳すれば、「回転するモノ」という意味になるだろうか。同様の回転式デザインは、先日公開されたNTTドコモの「SO505i」でも採用されているが、回転する機構や割り当てられている機能などに大きな違いがある。ボディ全体のデザインも非常にスタイリッシュかつシャープな印象に仕上げられており、最近の端末のなかでもデザイン的な注目度は群を抜いている。実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


片手でも回せるリボルバースタイル

 製品のスペックや細かい仕様については、auや京セラの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは前述の通り、「リボルバースタイル」と呼ばれる回転式ボディを採用している。構造は現在の折りたたみデザインの端末をヒンジ部で切り離し、スピーカー部付近を固定することにより、そこを中心にくるりと回して開くようになっている。イメージとしては、トランプで2枚のカードを開いたり、折りたたみナイフを開くような印象に近い。回転操作は非常にスムーズで、慣れてくれば、片手でも回して開くことが可能だ。ちなみに、筆者が出演しているimpressTV「ケータイならオレに聞け」の4月29日放送分と5月20日放送分で、実際に回す動作を紹介しているので、動きを見たい人はそちらを参照していただきたい。唯一、気になる点があるとすれば、回転部分の強度や耐久性だが、京セラに寄れば、「折りたたみデザインのヒンジ部以上の強度を確保している」とのことだ。


閉じたとき 回転
 閉じたときのサイズは通常の折りたたみデザインの端末よりもコンパクト  反時計回りにディスプレイ部が回転する。75度あたりからディスプレイ表示も切り替わる。ミラーはやや小さめの印象

 A5305Kはリボルバースタイルを採用したことにより、液晶ディスプレイが常に前面を向き、ボタンが隠れた状態になるが、本体を閉じたままでも通話をしたり、コンテンツを閲覧できるようにしている。ボディ全体は回転式というメカニズムを採用しているにも関わらず、非常にスリムかつスマートにまとめられており、既存の折りたたみデザインの端末とほぼ変わらないか、わずかに薄く見えるほどの出来だ。また、折りたたみデザインの端末では外部接続端子を底面側にレイアウトするのが一般的だが、A5305Kは上面にレイアウトすることにより、底面側のボディシェイプを絞り込み、全体をシャープな印象に仕上げている。全体的にも非常にきれいにまとめられたボディデザインで、筆者の周りの男性からは「おぉ、かっちょえ~」という声が多く聞かれた。

 背面には33万画素のカメラを内蔵し、カメラ部はレンズカバーに隠れている。レンズ部の隣にはミラーを備えており、自分撮りやツーショット撮影が可能だ。構造的にミラーを利用するのはしかたないのかもしれないが、自分撮りやツーショット撮影はカメラ付きケータイならではのニーズなので、もう一歩、工夫が欲しかったところだ。背面のその他の部分は非常にスッキリとまとめられており、特にディスプレイ部の背面はディンプル加工が施されているのみで、ほぼフラットに仕上げられている。


背面 カメラ
 回転したディスプレイ部の背面はスッキリとしたフラットデザイン。外部接続端子もこちら側にレイアウトされている  背面には33万画素のカメラを装備。レンズカバーを開ければ、カメラが起動するしくみだ

ボタン

 ボタン類はカーソルキーとセンターキーを中心にレイアウト。全体的に凹凸感が少ない印象だ。操作性は悪くない
 液晶ディスプレイは「Crystal Fine」と呼ばれるエプソン製の2.1インチTFTカラー液晶パネルが採用されており、132×176ドット/26万色表示が可能だ。最近の端末では標準的なサイズだが、A5305Kのディスプレイにはひとつの工夫が見られる。ディスプレイ部を回転させる機構を採用すると、本体を閉じた状態と開いた状態で表示の天地が逆になってしまうが、A5305Kは回転中にディスプレイの表示も天地が切り替わる仕組みになっているため、開いた状態でも閉じた状態でも同じ向きで使うことが可能だ。同様の回転式デザインを採用した端末として、NTTドコモのSO505iがすでに公開されているが、発表会で見た限り、こうした機構は搭載されておらず、この点はA5305Kが一歩リードしていると言えるだろう。

 また、リボルバースタイルを採用したことで液晶ディスプレイの強度が気になるが、京セラでは液晶パネル部にハードコーティングを施し、通常の約1.5倍の強度を確保している。さらに、液晶パネル部そのものを本体面よりも一段凹んだ位置にセットしているため、液晶パネル面を下にして机などにおいてもキズがつきにくくなっている。もし、気になるようであれば、市販の液晶保護シートなどを貼るといいだろう。

 ボタン類は[センター]キーを組み合わせた[カーソル]キーを中心に、左右上にソフトキー、右下に[EZ]キー、左下に[メール]キーをレイアウトしている。ソフトキーは待受時に右上が[メモ]、左上が[アドレス帳]を割り当てており、中央のセンターキーを押すと、メニュー画面が表示される。キー類は本体を閉じたとき、ディスプレイ部背面と向かい合うためか、全体的にフラットに仕上げられている。本体を閉じたときの左側面には、ディスプレイ部側に[Back]キー、ボタン部側に上下方向操作が可能なシャトルキーが装備されている。ちなみに、閉じた状態でもこの2つのキーを操作すれば、メニュー画面や発着信履歴画面を呼び出せるため、大半の操作を行なうことが可能だ。


待受画面(閉) 待受画面(開)
 本体を閉じたときの待受画面。シャトルキーを押し込んで、メニューを呼び出す  本体を開けたときの待受画面。ソフトキーの表示が閉じたときと異なる

機能的な意味を持つリボルバーアクション

 リボルバースタイルという特徴的な機構を持つA5305Kだが、機能面ではどうだろうか。まず、各機能を呼び出すためのメニューだが、本体が閉じた状態と開いた状態の2つのメニュー画面を持つ。閉じた状態のメニュー画面はリスト式で、本体左側面のシャトルキーで上下に動かして項目を選び、押し込むとメニューが選択されるしくみだ。本体を開いたときのメニュー画面は、A5302CAやA5303Hなどで採用されているアイコン式となっており、カーソルキーで選んで、センターキーで決定操作を行なう。ちなみに、アイコン式メニューをはじめ、本体を開いたときの各画面はA5303Hに非常によく似ている。


メニュー(閉) メニュー(開)
 本体を閉じたときのメニュー画面はリスト式。機能設定以外の基本的な操作はシャトルキーとBackキーのみで行なえる  本体を開いたときのメニュー画面はアイコン式。機能設定やアクセサリなど、テンキーを利用する機能はこの画面から呼び出す

 また、A5305Kで非常にユニークなのが閉じたときの画面で行なう操作に、本体を開く「リボルバーアクション」を割り当てている点だ。たとえば、待受時にシャトルキーを上下方向に操作すると、発着信履歴が表示されるが、ここでリボルバーアクションを行なうと、カーソルキーにある発着信先に発信する、受信メールの画面でリボルバーアクションを行なうと、相手への返信画面が表示されるといった具合いだ。つまり、リボルバースタイルはただ単に回転させているのではなく、回転させることに機能を割り当て、意味を持たせているわけだ。外見的にデザイン先行と見られてしまいそうだが、きちんとデザインと機能を融合させている点は高く評価できる。

 メールはフォルダ管理に対応しており、振り分けを設定することも可能だ。振り分けのキーワードはメールアドレスに限られているが、メモリダイヤルに登録していないものも設定することが可能だ。フォルダ管理は後述するカメラ画像やEZwebのお気に入りなどにも採用されている。

 次に、本体背面に装備された33万画素カメラについてだが、ここにもリボルバーアクションをはじめとする「操作と機能の連携」が活かされている。まず、カメラの起動は本体を閉じた状態でも開いた状態でも背面のカバーを開ければ、自動的にカメラモードに切り替わる。本体を閉じた状態で撮影したときは、直後にプレビュー画面が表示されるが、ここでリボルバーアクションを行なうと、データを保存し、すぐにメールに添付して送信することが可能だ。


受信画面 フォルダ
 本体を閉じた状態のメールの受信画面。この状態でリボルバーアクションを行なうと、返信画面が表示される。右下のアイコンに注目  メールはフォルダによる管理に対応。振り分けはアドレス帳、直接入力などが選べるが、いずれもメールアドレス単位で設定する

サムネイル

 撮影した画像はサムネイル表示が可能。ボディの構造上、サムネイル表示の天地が逆になってしまうこともある
 撮影モードは640×480ドットの「PCモード」、120×160ドットの「ケータイモード」の2種類が用意されており、PCモードで撮影した画像をケータイモードに変換することができる。ムービーについては最近のau端末でサポートされている「Mサイズ」には対応していないものの、アプリケーションプロセッサのSH-Mobileを搭載しているため、撮影から保存までのタイムラグも非常に少ない。その他の撮影時の機能としては、5段階4倍ズーム(ケータイモード時)や露出補正、フレームの追加、セピアやモノクロなどの画像効果、セルフタイマー、シャッター音の設定などが用意されている。

 実際の撮影についてだが、ホワイトバランスの調整がやや遅く、夜間の撮影などでは構えてから画面が落ち着くまでに少し時間が掛かることが気になった。追従性もやや遅い印象なので、動きの速いものを撮影するときは、注意が必要だろう。また、閉じた状態で撮影する「デジカメスタイル」で構えた場合、カメラ位置の関係上、指が入ってしまうことが多い。指が掛からないように、手を開き気味に撮影するなどの工夫が必要だ。

 撮影した画像は他のau端末同様、日付単位でフォルダに保存され、サムネイル表示で閲覧することが可能だ。サイズ変更については前述の通り、PCモードからケータイモードへの変換が可能だが、ケータイモードの画像についてはスタンプやテキストの挿入、画像の回転、画質の調整など機能で編集することもできる。画質の調整は明るさとソフト/シャープの調整ができる。


ケータイモード 自分撮り
 ケータイモードでの撮影。少し離れた方がいいが、この向きでは待受画面に使えない。(モデル:篠崎ゆき  ケータイモードで自分撮り。身長180cmの筆者が腕をめいっぱいに伸ばして、このサイズ。自分撮りやツーショット撮りはもう一息の印象

VGA
 夜間のネオンをVGAサイズで撮影。ケータイの画面では十分だが、PCで見ると、ちょっとツラい

ケータイのスタイルに新しさを求めるなら「買い」

スタンド

 スタンドは縦置きを採用。机の上に置いておけば、卓上時計のように使える。欲を言えば、背面側のコネクタ部の突起をなくして欲しい
 さて、最後にA5305Kの「買い」について考えてみよう。リボルバースタイルという新しいケータイのカタチを模索したA5305Kは、従来の折りたたみ式にはない独特の個性を持つ。しかも、ただ単に本体を回転させるだけでなく、リボルバーアクションそのものに機能を割り当て、回転させることにきちんと意味を持たせており、閉じた状態でもほとんどの操作をできるようにしている。つまり、「格好だけじゃない」ところがA5305Kの隠れた魅力でもあるわけだ。カメラについてはすでに100万画素クラスの端末が登場していることを考えると、今後は30万画素クラスも普及モデルという位置付けになるが、撮影してからメールに添付して送信するところの動作にもリボルバーアクションを活用するなど、独自の工夫を凝らしている。欲を言えば、もう一段、クオリティの高い画像を撮れるようにし、自分撮りやツーショットのニーズをミラー以外の手段で可能にしてもらいたい。もちろん、京セラの社長会見などでも公言されているので、今後は100万画素クラスのカメラを搭載したモデルも期待したい。

 これらの点を総合すると、A5305Kは新しいカタチのケータイに興味があり、スマートに使ってみたい人向けということになる。折りたたみデザイン全盛の現在、新しいケータイのスタイルを求める声は多く聞かれるが、リボルバースタイルはその期待に応えられるだけの可能性を持っている。購入した人はぜひスマートにカッコ良くリボルバーアクションをできるように練習したいところだが、くれぐれも「無茶な開き方」をしないように心掛けたい。

 カメラについては「ないより、あった方がベター」というレベルになるが、VGAサイズの撮影ができ、ムービーも撮れるので、手軽にカメラ付きケータイを試してみたい人におすすめだ。あとは常に前面にさらされる液晶ディスプレイや頻繁に回すことが予想される回転機構の耐久性が気になるが、前述の通り、京セラ自身も十分に考慮して開発している。乱雑に扱えば、トラブルが起きる可能性もあるが、常識的な利用であれば、問題ないと考えて良さそうだ。もちろん、大事に使うに越したことはないが……。

 折りたたみデザイン全盛のケータイだが、ようやくここに来て、新しいスタイルへの取り組みが見えてきて、今後が楽しみな展開になってきた。京セラとauには、リボルバースタイルをこのモデルだけで終わらせることなく、ぜひ着実に育てていくことをお願いしたい。



URL
  ニュースリリース(au)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2003/0422/
  製品情報(au)
  http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a5305k/
  製品情報(京セラ)
  http://www.kyocera.co.jp/frame/product/telecom/keitai/au/a5305k/

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(法林岳之)
2003/06/02 12:06

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