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第92回:CDMA2000 1xEV-DO(HDR) とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


高速モバイルデータ通信が可能なCDMA2000 1xEV-DOとは

 「CDMA2000」は、IMT-2000として認められた第3世代(3G)移動通信規格のひとつです。このCDMA2000は、今年の4月にKDDI(au)がサービスの提供を開始した「CDMA2000 1x(MC)」や、複数のチャネルを同時に利用することで音声やデータの伝送速度を向上させる「CDMA2000 3x」というような、いくつかの規格を含んでいます。

 「CDMA2000 1xEV-DO」も、このCDMA2000に属する規格のひとつであり、データ通信用に特化されたものです。「EV-DO」とは「Evolution-Data Only」の略で、その名前通り音声通話には対応していませんが、データ通信速度は非常に高速で、下り(基地局から端末方向)で最大2.457Mbps、平均でも600kbps程度でデータのやりとりが可能です。

 日本では、KDDIおよび沖縄セルラーがこの方式に準拠した試験サービスを2003年4月から関東エリアで開始する予定です。


データ通信に特化した新方式

 CDMA2000 1xEV-DOの技術は、米クアルコム社が開発した無線データ通信技術「HDR(High Data Rate)」をベースにしています。

 この技術は簡単に言うと、「移動体通信技術のうち、音声通信でしか必要とされない要求は割りきって無視し、データ通信をできるだけ高速化してcdmaOneのチャネルを使ってデータ通信する」というものです。ベストエフォート型の通信で上り(端末から基地局方向)最大153.6Kbps、下り最大2.4Mbps、平均でも600kbps程度と非常に高速にデータ通信を行なうことができます。

 同じ電波を使ってデータをやりとりする場合でも、電話で音声を使ってスムーズに通話をさせることと、パソコンなどで使うデータをやりとりすることでは、本来は気を使わなくてはいけない部分がかなり異なります。

 例えば音声での通話に利用する場合、通話先の端末に流れるデータはできるだけ遅れが出ないようにしなければなりません。会話では、データの送信に0.数秒でも遅れが出てしまうと、相手との会話の間にタイムラグが発生して会話のタイミングがずれてしまい、とても話しにくくなってしまう、といったようなことが起こるからです。

 しかし一般的に、例えばパソコンでインターネットを利用したりメールを読むような場合は、データの送信が1、2秒遅れたところで誰も気に留めません。相手の反応をリアルタイムに見なくてはいけない、というようなことはないからです。

 そこでHDRでは、通話では必須だった要素をデータ通信と割りきって削ってしまい、その分同じ帯域を使ってデータ通信を高速化しているのです。具体的には、

・遅延(データの送受信の遅れ)の許容
・RAKE受信、ソフトハンドオーバーの廃止
・電力制御などの機能を省略


といったあたりで、通信時のオーバーヘッドを減らしています。

 また、一般のcdmaOne、CDMA2000では、基地局は端末と通信する際にMSの受信電力が一定になるように無線基地局の送信電力を調整し、常に一定の伝送速度と品質を保持していますが、HDRでは常に出力を最大にしておき、搬送波に対する干渉を常に測定します。そして、調子よく通信できる場合は高速に、そうでない場合は低速でも確実にデータを送るようにシンボルレートを落として変調し、瞬時瞬時にデータ速度を調整します。

 さらに、「スケジューリング」といって、複数の端末が同時に同一基地局へアクセスしている場合は、電波の状態がよい端末への通信を優先的に行ない、そうでない場合はあとにまわす、というような操作も行なわれます。これは、利用しているのが電波であるため品質の良し悪しは一定しないことから、今状態が悪くてもあとで調子がよくなったときに送るほうが、全体としてはパフォーマンスが向上するだろう、という発想に基づいています。

 CDMA2000 1xEV-DO(HDR)は、このようにして従来とは次元の違う超高速なデータ伝送を、cdmaOne/cdma2000 1xに近い設備で実現できるのです。


CDMA2000 1xEV-DOの使われ方

 またCDMA2000 1xEV-DOは、既存のcdmaOne/CDMA2000 1xと同じ1.25MHz幅の電波を使ってデータ通信を行ない、システム的にはcdmaOne/CDMA2000 1xから引き継いでいる部分も多いので、これらの設備との共存も容易になっています。既にこれらの設備があれば、通信事業者にとっての変更箇所は、PDCからW-CDMAへの移行などと比べるとはるかに少なく、設備投資を抑えることができると言われています。

 基本的にCDMA2000 1xEV-DOは、データ通信にしか使うことはできません。ユーザーにとってこのサービスは、データ通信専用となるため、専用端末などを購入してデータ通信のみで使うことになるかもしれません。同様に、街中で使えるブロードバンド通信機器として無線LANなどがありますが、移動しながらでも通信できることがCDMA2000 1xEV-DOの利点となるでしょう。

 なお、KDDIおよび沖縄セルラーが2003年4月から関東エリアで行なう試験サービスは、2GHz帯の帯域を利用しており、これは従来と違う周波数帯となります。ただし、800MHz帯でも同方式を用いたサービス提供を検討しており、2GHz帯におけるサービスはハイエンドの高速データ通信に主眼を置いたもので、800MHz帯ではEZwebなどの現行サービスの低料金化の下地として同方式を利用していくことが検討されているようですので、こちらの方は、内部的にはcdmaOneとHDRの両方の受信機がひとつの機械になったデュアル対応機のような仕組みで提供されるのかもしれません。


・ ニュースリリース(KDDI)
  http://www.kddi.com/release/2002/0510/index.html

KDDI、2.4Mbpsデータ通信の試験サービスを来年4月から開始
第86回:CDMA2000 1x とは
第7回:cdma2000とは


(大和 哲)
2002/05/14 12:55

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