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第67回:セルとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 携帯電話では、そのシステムを説明する際に「セル方式である」、といったような言い方をすることがあります。この「セル方式」という言葉は、携帯電話などの移動する無線システムにおいて、基地局と電波がどのように利用されているかを説明する用語です。

 一般に、携帯電話に代表される移動体通信システムは、電話機のような「端末」と「基地局」とが互いに電波を使って通信し合っています。基地局から電波の届く範囲を「セル」と呼ばれる小さなエリアに分割し、それぞれのセルに基地局が設置されており、端末がその時通信しているセルの範囲から出て、他の場所へ移動しても、再び次の範囲(セル)にある基地局と通信する方式を、セル方式による移動通信システムと言います。携帯電話もこのセル方式を利用した移動体通信システムです。

 ちなみにセルは英語で「Cell」と書きますが、蜂の巣穴の1つ1つや細胞なども「Cell」と言いますので、この移動体通信システムにおけるセル方式も同様のイメージで、ひとつひとつの小さなエリアを合わせてサービスエリア全体を形成していることを意味しています。


なぜ携帯電話がセル方式を利用しているのか

 セル方式には、いくつかのメリットがあります。一番大きなものは、割り当てられた周波数帯を多くの端末で効率よく使えることでしょう。携帯電話は無線システムの中でも特に電波を発する端末が多い仕組みですが、携帯電話で使える電波の周波数は有限です。このため、電波を効率よく使わないと回線がパンクする事態に陥ってしまいます。

 タクシー無線などの簡易無線では、セル方式ではなく「大ゾーン」と呼ばれる方式が利用されています。この方式は、エリアを細かく分けるのではなく、大きなひとつのゾーンで複数のチャンネルを割り当ててしまうやり方です。この方式は基地局をひとつ作ればよいのですが、基地局と交信できる端末の数はサービスエリア全体でチャンネル数の分しか使用できないことになってしまいますから、携帯電話で大ゾーン方式を利用すると、はじめから「混線OK」とでもしない限りは使えないことになります。

 携帯電話のセル方式では、サービスエリア全体が小さな単位のセルに分割され、エリアによって使えるチャンネルが割り振られます。互いに影響がなさそうな部分では、同じチャンネルを繰り返して割り当てることで、サービスエリア内の同じチャネルで、異なる端末がそれぞれ基地局と交信できるようになるわけです。


携帯電話で使われるセル方式では、サービスエリアを「セル」と呼ばれる小さな単位に区切って、それぞれに複数のチャンネルを割り当てる。これにより、限りがある電波の割り当て周波数を効率よく使うことができる

 副次的なメリットとしては、セル方式では端末が通信する範囲が大ゾーン方式に比べて小さいため、送信出力も小さくて済むといったこともありますし、その分端末も小さくなるため、電池の持ちが良いものを作りやすいとも言えます。

 ただし、セル方式ではサービスエリアがセルによって細かく分割されるため、通信を行なう前に端末がどのセルの基地局と通信しているのかを「位置登録」し、把握しなくてはなりません。また、大ゾーン方式と違い端末がセルからセルへ移動したときには、隣のセルへ通信先を変える(これをハンドオーバー処理といいます)など、通信を制御するための工夫が必要になります。

 この、セルによる電波のエリア方式は、1953年にベル研究所のK.バリントン氏が、1960年に同じくベル研究所のH.J.シュルテ氏が唱えた「エリアを使った周波数の有効利用のアイデア」に基づいたものです。1968年には旧・電電公社の荒木欣一郎氏によって「位置登録」が提唱され、1979年にはベル研究所のV.H.マクドナルドが提唱した「ハンドオーバー」という考えが追加されました。1980年代からは、具体的なシステムが世界的に導入され、現在の携帯電話のシステムでこの方式が利用されるようになったのです。


工夫の蓄積である現在の携帯電話システム

 実際の携帯電話では、非常に多くの端末が移動しながら存在しています。これらをどんな状況においても対応できるように、携帯電話のエリアや基地局、端末の装置には、いろいろな工夫がなされています。

 たとえば、都心の繁華街などでは人が密集するため、地方の人口密度が低いエリアと同じようにセルを分けてしまうと、すぐにセル内で利用できる台数を上回ってしまいます。そのため、人工密集エリアではセルの大きさを小さくした「マイクロセル」や「ピコセル」といったものが設定されています。マイクロセルは半径が数百メートル程度の小さなセルで、おもに都市部の道路などに設定されており、大型テレビ大のコンパクトな基地局設備もあります。


 携帯電話のセル配置は非常に微妙です。設置範囲を大きく設定し過ぎても回線がパンクしてしまいますし、セルとセルの合間を空けてしまうと、エリアに「穴」ができて通話できない区間が発生してしまいます。かといって、基地局を増やし過ぎてセル同士が干渉するようなことになると、システムが使えなくなってしまうのです。

 そこで、各携帯電話事業者はセルの配置に様々な工夫をしています。例えば、ハードウェア的にも基地局側で出力を限定、または電波を発信するアンテナに指向性を持たせて電波を一定方向にだけ出し、互いに干渉しないようにする、といった仕組みです。こうした仕組みを活用してセルを効率よく使い、支障のないように設定しているのです。

 どこでも携帯電話を安心して使うことができるという今日の状況は、こうした様々な工夫とノウハウの積み重ねによって日々作り上げられているものだと言っても過言ではないでしょう。


・ NTTドコモ R&D セル方式
  http://www.nttdocomo.co.jp/corporate/rd/tech/cell01.html
・ 「μ-SBS」の導入について(J-フォン中国エリア)
  http://www.chugoku.j-phone-west.com/news/19990406/apr/0419a.html
・ ツーカーセルラー東京 サービスエリア
  http://www.tu-ka.co.jp/area/page.html


(大和 哲)
2001/11/06 11:26

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