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第342回:販売奨励金 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「販売奨励金」とは、販売数量の拡大を目的に、販売店などに継続的に支払われている金銭です。“インセンティブ”とも呼ばれますが、“incentive”とは、「奨励的な」「誘因」「動機」を意味する英単語です。

 携帯電話販売の場合、携帯電話事業者と販売を行なっている販社、代理店との間で交わされており、携帯電話の販売数量や、付加サービスの新規加入に応じて支払われています。

 たとえば、携帯電話を1台、1回線売るごとに販社・代理店にある決まった額が支払われます。額は機種などによっても異なり、新機種などの販売キャンペーン、ある一定の台数を販売した場合は額が増えるボリュームインセンティブ、留守番電話やキャッチホンなど回線の付加機能に契約したり、契約自体を2年間契約にしたりすると、追加で支払われる場合もあります。

 通信事業者にとっては、販売店の収入となる金銭を支払うことで販売に注力してもらい、シェア拡大を狙うことができます。奨励金がすべて販売店の収益になるわけではなく、携帯電話の販売価格に反映して価格を割り引くことが多く、購入者にとっては安価に携帯電話を購入できるようになるというメリットがあります。携帯電話が、電話契約の付加サービスも契約した場合、数千円、店によっては1円というような価格で販売されているのは、この販売奨励金の存在が大きいのです。

 総務省のモバイルビジネス研究会の資料によれば、2006年時点で、ユーザーが新規契約や機種変更を行なった場合、事業者から販社・代理店には1契約あたり平均で約40,000円の販売奨励金が支払われているとされています。


奨励金の原資は通信料、不公平感が問題視される

 販売奨励金が前提となった現在の携帯電話の販売には、さまざまな弊害も出てきています。

 一番の問題と指摘されるのは、販売奨励金の原資のほとんどは、事業者が利用者から得る通信料収入であることです。奨励金によるメリット、つまり携帯電話を安く買うユーザーと、通信料を多く支払うユーザーが一致せず、「ユーザー間に不公平が生じることがある」とされています。

 販売奨励金は、携帯電話の新規契約や機種変更したときに支払われるので、頻繁に端末を買い替える利用者ほど販売奨励金による値引きをより多く受けていることになります(ただし、あまりに短期間であれば奨励金が付かないことが一般的です)。逆に、ずっと機種変更をしないユーザーは、その恩恵を受けることなくずっと販売奨励金の原資となる金額も含めて、携帯電話の使用料、通話料を払うことになってしまうわけです。

 また、販売奨励金がMVNO(仮想移動体通信事業者)などの事業者の新規参入を阻む原因にもなっているという指摘もあります。

 既存の携帯電話事業者には、通話料などで得た収入のキャッシュフローが既にあるため、そこから奨励金を一定額拠出するのは難しいことでありません。しかし、これから参入する事業者では、通話料を徴収する以前に奨励金に使う資金を用意しなければならず、参入が難しくなる、というわけです。

 さらに、MVNOは既存事業者から回線を借りる必要がありますが、回線使用料には、販売奨励金の原資を含む既存キャリアもあり、その分、割高になってしまいますし、新規事業者が既存事業者の拡販費用の一部を負担するという構図にもなってしまいます。

 奨励金によるユーザーや事業者間の不公平性は、総務省の開催する、モバイルビジネス研究会などでも度々取り上げられましたが、同研究会では不公平性よりも、不透明な構図が問題」との分析もなされ、最終報告書では、奨励金回収分と本来の通話料を明確にする「分離プラン」の導入や奨励金減少への期待感が盛り込まれ、この報告書の内容を元に、総務省では「モバイルビジネス活性化プラン」を9月21日に発表するとともに、既存キャリアに対して新プランの検討などを行なうよう要請しています。

 携帯電話事業者側でも、奨励金のない販売、回線契約方法を選択肢として用意してきた会社もあります。auは、11月12日より「au買い方セレクト」として、端末は安く購入できて、従来の料金プランを利用できるコースと、端末は高くなるものの安価な料金プランを選択できるようにすると発表しました。auでは、端末は高くなるが安価な料金プランが選べる「シンプルコース」を「販売奨励金と購入価格・料金プランを切り分けた“分離モデル”」としています。



URL
  モバイルビジネス研究会
  http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobile/

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(大和 哲)
2007/10/09 12:46

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