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第340回:多値技術 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「多値技術」とは、それまで「0」「1」という2つの値で記憶、表現していた媒体で、たとえば「00」「01」「10」「11」や、「000」「001」「010」「011」「100」「101」「110」「111」というように、複数の情報を記憶し、表現できるようにする技術のことです。

 通信でのデジタル変調方式の1つに位相偏移変調方式(PSK、Phase Shift Keying)があります。PSKでは、通信時に使われる搬送波の位相を変化させることでデータを表現します。たとえば、最も基本的な“BPSK”では、0で表現している波を、全く位相反転することで1を表現します。

 この位相の変化をずらす“QPSK”では位相変化を4段階にすることで00、01、10、11という4パターンの情報を、“8PSK”では位相変化を8段階にすることで000、001、010、011、100、101、110、111の8パターンの情報というように多値化します。

 多値技術のメリットは、「有限の資源を使って一度により多くの情報を表現できる」ことにあります。先述したデジタルデータ通信の例では、同じ周波数の電波を使って一度により多くの情報の送受信ができる、つまり、より高速なデータ通信ができるというメリットが生まれてくるわけです。


フラッシュメモリも多値化でより大容量に

 もうひとつ、携帯電話関連で「多値化技術」が大きく貢献している分野にフラッシュメモリがあります。

 フラッシュメモリとは、電源を切ってもデータの消えない読み書き可能な媒体です。携帯電話では、本体内部に内蔵されていますし、多くの携帯電話ではメモリカードスロットが搭載され、microSDカードやメモリースティックDuoといったフラッシュメモリを装着できるようになっています。

 これらのフラッシュメモリには、コンピュータのプログラムや、電話帳・メモなどの個人データ、写真・音楽・動画といったマルチメディアデータなど、さまざまな情報が蓄えられています。

 フラッシュメモリの大容量化を支えているのが、フラッシュメモリの多値化技術です。フラッシュメモリは、メモリ内部にある“メモリセル”と呼ばれる記憶素子にデータを記録します。もともとフラッシュメモリでは、このメモリセル内には「0」と「1」という2つの値を記憶させていましたが、現在では、多値化技術を利用し、ひとつのメモリセルに2bit以上の情報を記憶させることで、より多くの情報を保存できる大容量なフラッシュメモリが作れるようになっています。

 フラッシュメモリの多値化の原理を見てみましょう。まず、フラッシュメモリのメモリセルがデータを記憶する場合、このメモリセル内にある「フローティングゲートに電子が蓄えられているかいないか」で、「0」「1」というデータを表現していました。


フラッシュメモリのデータ記憶の仕組み。メモリセル内にあるフローティングゲートに電子が蓄えられているかいないかでデジタルデータを記憶する
フラッシュメモリのデータ記憶の仕組み。メモリセル内にあるフローティングゲートに電子が蓄えられているかいないかでデジタルデータを記憶する

 そして、「あるかないか」ではなく、フローティングゲートに蓄える「電子の量」を考慮してデータを表現することで、多値化を実現しています。つまり、ある基準を3段階で設定し、最初の基準より少なければ00、それより多ければ01、2番目の基準より多ければ10、基準いっぱいの満タンであれば11というようにデータを表現するわけです。

 基準値をさらに細かく設定すれば3bit、4bitの情報を記憶することも可能でしょう。


フラッシュメモリにおける記録データ多値化の仕組み。フローティングゲートに蓄えられた電子量によって、記憶データを多値化する
フラッシュメモリにおける記録データ多値化の仕組み。フローティングゲートに蓄えられた電子量によって、記憶データを多値化する

 基準を細かく設定すればするほど、書き込みと読み込みのエラーなどが増えるため、より複雑な誤り訂正符号(ECC)回路が必要になります。しかし、メモリセル自体の回路はそれほど複雑にならず、つまりメモリチップ自体はそれほど大きくしないまま、より多くのデータを記録できます。

 多値化技術と、微細化技術の進歩によって、携帯電話内蔵のフラッシュメモリや、microSDカードなどの外部メモリカードも同じ大きさでありながら、より安価に、より大容量になってきたのです。


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(大和 哲)
2007/09/25 12:22

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