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第3回:cdmaOneとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


アメリカ育ちの規格cdmaOne

 現在日本で主流となっているデジタル携帯電話は第1回目で説明したPDC(Personal Digital Cellular)方式と呼ばれているものですが、cdmaOneはそれとは全く違う仕組みを使ったデジタル携帯電話の規格のひとつです。米国標準規格IS-95で代表されるCDMA方式の携帯電話やコードレス電話、無線機などをまとめて「cdmaOne」と呼んでいますが、日本では1998年7月14日からDDI-セルラーグループとIDOがこの方式を使った携帯電話機を「cdmaOne」として発売しています。

 cdmaOne携帯電話には、PDC(personal digital cellular)方式」と比較すると以下のようなメリットがあります。

1)ビルの谷間など従来の電話機ではノイズが多くなったり使えない場所でも使える。

2)音質がよく、データの転送速度が速い。

3)ソフトハンドオーバーなので走行中でも切れにくい。

4)国際ローミングに対応している。


cdmaOneの仕組み

 PDC方式では、基地局と端末が信号を電波でやりとりするのに「FDMA(Frequency Division Multiple Access:周波数分割多重アクセス方式)」、「TDMA(Time Division Multiple Access:時間分割多重アクセス方式)」という方式を使っています。

 「FDMA」とは簡単にいうと、複数の端末と基地局が交信するために、周波数を分けるやりかたです。たとえば、ラジオであれば、「FM」というバンドの中にいくつか放送局があるわけですが、これを周波数で分けていますね。ある放送局の放送を聞きたい人は、ラジオのつまみなどで聞きたい曲の周波数に合わせることで放送を聞くことができるようになるわけです。

 「TDMA」というのは「時間分割」という言葉の通り、ひとつの周波数の電波を時間で分けるやりかたです。たとえば1秒を3分割して、最初の1/3秒は1番目の放送局、次の1/3秒が2番目の放送局……とするわけですね(それでは1秒のうちの1/8秒ずつプチプチと音が出てくるんじゃないか、と思われるかもしれませんが、ここでは音をデジタルデータにする際に「データ圧縮」と言って、音の特徴的な部分だけを取り出してデータを縮めているので、データでは1/3秒分でも電話では1秒間音が聞こえます)。電波を受信する側はあらかじめ「制御信号」という、送信する側と電波を受ける側でとりきめておいた手順で電波の中の必要な信号を受け取って、つなぎあわせてデータを音声に戻します。

 cdmaOneではさらに電波の効率よく使える「CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多重アクセス方式)」という通信方式を使っています。この方式では、FDMA、TDMAを組み合わせて使うのと違って、はじめから携帯電話ではいくつもの周波数を使えるものと考え、「スペクトラム拡散」といって、送信側は音声信号にある特定のデータを掛け合わせて、その結果によって非常に広帯域(たとえばcdmaOneの場合、1.25MHz)の範囲に電波をばらまきながら通信します。

 そして受信側はRAKE(英語で「くまで」の意味)受信といって、すべての周波数の電波、をごっそりかき集めてきます。そして、送られてきたデータの中から、自分あての信号を「制御信号」という、送信側と受信側でとり決めておいたヒントをもとに必要なものだけを拾い集めて、音声に戻します。

 電波を幅広く使える、ということは大量のデータを送れることでもあるので、音質もよくなり、モバイル通信などに使うと高速にデータ通信を行なうことができます。


ビルの谷間などでも使える

 ところで、電波は周波数やタイミング(位相といいます)をうまく決めて送っても、これがずれてしまうことがあります。たとえば、ビルとビルの谷間にいるような場合を考えてください。まず、電波は基地局からあなたの電話に送られていますが、同時に四方八方あらゆる方角に発信されているので、ビルにも電波が当たります。この電波のうち、いくらかはビルで跳ね返ってあなたの携帯に届きます。このビルにぶつかった場合に、マルチパス信号といって、基地局そのものから送られてきたものを受信した信号と、少し送れてきた位相のずれた電波が入ってしまうことがあるのです。

 携帯電話だけでなく、この現象は同じように直進性のある波長の短い電波を使うものには起こりがちな現象です。たとえばテレビ放送で、画像が二重三重に見えてしまう「ゴースト」という現象があります。あれは、テレビ放送の電波が何かに反射するなどして位相のずれた電波が受信されてしまうために起こります。

 この現象が起こるような条件では、PDC方式も対策はしているのですが、この周波数や位相のずれてしまった場合、あるいはデータが音声に復元できなくて無音やノイズとなってしまったり、最悪、基地局からの制御信号も見分けることができなくなって、接続が途切れてしまうことがあります。

 CDMAでは全ての周波数の電波から正しいものを選んできますので、このようなことはおきません。もし、位相のずれた信号でも、同時に送られている信号を復元するための「積算データ」自体もずれているので、端末には正しいデータがわかります。さらに、CDMAでは正しいデータと位相のずれたデータの両方が入ってきた場合、「パスダイバシティ」と言って、両方の信号を足して、1つの強い信号として使うことができるようになっています。

パスダイバシティ パスダイバシティ
従来のPDCでは通信品質劣化の原因となる反射波だが、cdmaOneではこれを逆に利用して電波送信レベルを保つ。1つの基地局からの直接波と反射波を最大3つまで、レーキ(RAKE、“くまで”の意)受信機で受信。複数波の時間的なずれを補正して合成する


移動中も有利なCDMA方式

 さらに、CDMA方式には「ソフトハンドオーバー」と言って、ハンドオーバーがスムーズで切れないという特徴もあります。FDMA、TDMAではエリアとエリアの境目では2つ(あるいはそれ以上)の基地局から電波が入ります。当然、同じ周波数で同じように、2つの基地局が違う電波を送信すると混信して使えなくなってしまいます。ですので、基地局同士、隣り合う基地局では混信しないように周波数をずらします。

 この基地局のエリアから別に基地局のエリアに移動する場合、携帯電話はまず、最初の基地局から接続を切って、次の基地局を探して、その制御信号を受けてから、指定の周波数で通信します。そのため、一瞬電波が切れてしまうために、会話していると「プツ」という耳障りなノイズが入ってしまいます。

 CDMA方式では、電波が混信しても電話には影響がないために、周波数をずらすことはしません。つまり、どの基地局もどの電話も同じ周波数帯域を使っているため、周波数も切り替える必要がなく、電波の途切れも起きないのです。逆に、2つ以上の基地局から電波を受ける場合は、パスダイバシティによって2つの電波を両方利用して、1つの強い電波とみなすことができるので、かえって有利、ということになるわけですね。


ソフトハンドオーバー
ひとつの基地局でカバーする範囲はセルと呼ばれる。このセルの境界付近では、『パスダイバシティ』による直接波と反射波を合成するのではなく、複数の基地局と同時に通信する。基地局制御装置は、複数の基地局からの通信を合成し、交換機に送る

次回予告

 本連載では、毎週ひとつずつ、移動体通信に関する用語を解説していきます。次週お送りする第4回では「パケット通信」を解説します。



URL
  IDOのcdmaOne情報ページ
  http://www.ido.co.jp/cdmaone/index.html


(大和 哲)
2000/07/04 00:00

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