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第189回:HSDPA とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


3.5Gの高速パケット通信技術

ドコモが3月に公開したHSDPAの試験端末。将来的にはこれが携帯電話サイズになる
 HSDPAとは、第3世代携帯電話の技術をベースにした、さらに高速なパケット通信を実現する技術で、3.5世代(3.5G)とも呼ばれる技術です。第3世代携帯電話の標準を定めている3GPPによって標準化されています。

 高速なダウンリンクパケット接続を意味する「High Speed Downlink Packet Access」の略で、NTTドコモなどが研究を進めており、下り最大14Mbps、平均でも2~3Mbpsの通信が可能であるとされ、この技術を使った高速モバイル通信サービスの開始が期待されています。

 この方式は、従来の移動通信網にあまり多く手を加えずに、高速なパケット通信を行える点が特徴とされています。NTTドコモでは、現状のW-CDMAで使われている設備、特に現行のFOMAの基地局設備において、ベースバンド部のボードとソフトウェアを変更するだけでサービスが実現できるとしています。実際にサービスが始まると、すばやくエリアが拡大すると期待されています。


基地局との距離で速度が違う

 HSDPAによる通信は、これまでの携帯電話に比べて非常に速くなりますが、いくつか使い勝手が異なる部分も出てきます。たとえば、従来のW-CDMAでは、電波が届く範囲であればどこでもパケット通信は384kbpsの速度を出すことができましたが、HSDPAでは、同じ基地局の圏内でも基地局からの距離などの条件で通信可能な速度が変わる、というようなことです。

 HSDPAの技術的な特徴は、「変調方式」にあります。HSDPAでは、いくつかの高速なデータ変調方式が利用できるようになっており、その時々で電波状況を判断して、現在使える一番高速な変調方式が利用します。

 変調とは、データを、電波に載せる際にどのように乗せるか、その方法のことです。同じ周波数の電波で通信していても、変調方法によって、伝えることができるデータの量は大きく違ってきます。

 たとえば、電波の波形が、「0」「1」という2通りのパターンがあると決めた場合と、「0」「1」~「15」と16通りのパターンがあると決めた場合があるとしましょう。2通りしか決めてない場合と比べて、16通り決めた場合のほうなら同じ時間で8倍高速に通信できることになります。

 ただし、電波が空中を伝わるときには、ノイズなどの問題がありますので、必ず送信側が意図したように受信側に伝わるわけではありません。たとえば距離によって電波が弱くなってしまったり、あるいはマルチパスによって同じ波が位相がずれて加えられてしまったりするなど、なんらかの形でこの波形が崩れる可能性があります。

 もし崩れてしまった場合に、同じ波形から2通りしか正解がない場合にはそのどちらかを判別するほうが、16パターンから正解を選ぶ場合に比べて判別しやすくなります。つまり、高速な変調方式になるほどノイズに弱くなる、ということになります。


大量のデータを変調できる方式になるほど、弱まったり混信している電波から、「その波が本来どのデータを意図して送られたのか」を判断するのが難しくなる

 一般的な移動体通信(携帯電話も含む)では、変調方式は低いほうに一定で、電波状況が良い場合には電波の出力を下げて節電する、というような制御を行なっています。

 HSDPAでは、これを逆の発想にして、出力を最大で一定にして、電波状況が良い場合には高速な変調方式を、そうでない場合には速度を下げるようにしており、電波状況の良いときには高速通信ができるようになっているのです。

 実際に、HSDPAではこれまでW-CDMAで使われていた、1つの波で4種類のパターンを送れる「QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)」に加え、8種類の「8QAM(8 Quadrature Amplitude Modulation)」や、16種類の「16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)」という変調方式を切り替えて使用します。

 さらにHSDPAでは、複数ユーザの中から無線状態が良好なユーザーのデータ通信を優先する「適応スケジューリング」や、通信時にエラーが起きた場合、過去に受信したデータを合成することで電波状態が悪い場合にも受信状態を良く見せる「ハイブリッドARQ」なども利用しており、さらに効率よく高速にデータ通信が行なえるような工夫がされています。


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(大和 哲)
2004/07/27 12:11

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