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第178回:OFDM とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 OFDMは、デジタル変調(デジタルな情報を、情報を載せる電波や光(搬送波)に載せる技術)方式の1つで、現在注目されている方式です。既に製品やテスト運用などの形で実用化されているものとして、デジタル地上放送や無線LANのIEEE802.11aなどに採用されています。

 また、最近本誌でも「フラリオンとボーダフォン、都内でFlash-OFDMのフィールドテスト」というニュースが掲載されました。

 このフィールド実験で検証される「Flash-OFDM」は、OFDMを応用し、米フラリオンテクノロジーズが開発したデジタル移動体通信のための通信方式です。開発元から配布されているホワイトペーパーなどによれば、この方式は上り下りそれぞれ1.25MHz幅に113の搬送波を周波数ホッピングしながら使うことで、有線のADSLに匹敵する下り最大3Mbps(平均1~1.5Mbps)という通信速度を実現し、しかも同じ周波数で複数台の機械が同時に通信することも可能とされています。


OFDMの仕組みと特徴

 デジタルなデータを電波に載せる、つまり「デジタル変調をかける」ためには、いくつか代表的な方法があり、たとえばASKやFSK、PSK、QPSK、DS-SS、そしてOFDMなどが知られています。

 OFDMとは、“直交周波数分割多重”を意味する「Orthogonal Frequency Division Multiplexing」の略で、多数の搬送波を用いるマルチキャリアデジタル変調方式の1つです。

 複数の搬送波を一度に用いると、通常、周波数が近すぎるとそれぞれが影響しあってしまうため、それぞれの間隔を空けなければなりませんが、これを、周波数の直交性を利用して、互いに影響しない搬送波を重ね合わせていくつも送るので「直交周波数」での多重分割(OFDM)という名前がついています。

 電波は空中を飛んできますが、地上で電波をやりとりすると、まっすぐ送信側から受信側に、届くものだけが届けば良いのですが、たとえば周りに障害物があるような場合、そこを跳ね返って回り道して飛んでくるような電波も受信してしまいます。経路が違えば、受信側に届く時間は遅くなりますから、受信側には、同じ信号がやまびこのように時間がずれつつ、何度も届いてしまいます。いわゆる「マルチパス」の問題です。

 特に高速な通信になればなるほど、このマルチパスは深刻な影響となります。しかし、OFDMは複数の搬送波を使っていますので、全体では高速な通信ではあっても、1つ1つの搬送波の伝送レートは低くなるため、マルチパスによる悪影響が他の方式に比べて低く抑えられています。この「マルチパスに強い」というのが、OFDMの特徴です。

 ちなみに、たとえば音声のようなアナログ信号をそのまま電波に載せる「アナログ変調」の代表的なものには、AM、FM、PMというようなものがあります。これらはそれぞれ振幅変調(Amplitude modulation)、周波数変調(frequency modulation)、位相変調(Phase modulation)の略でそれぞれ、信号を載せる波(搬送波)を


αsin(ωt+φ)
α…振幅
ω…周波数
φ…位相


として、どの部分を変化させるかが違います。

 アナログ変調は、旧来からある放送や通信によく使われています。ラジオ放送では、AM放送、FM放送がありますが、それぞれAM方式、FM方式で変調して音声信号を電波に載せて送っています。

 現在のデジタルな放送や通信では、音声や映像は、0/1の形のデジタルデータに一度変換されます。たとえばパソコンなどのデータもデジタルデータです。そのため、デジタル変調が使われます。

 ASK、FSK、PSKがそれぞれ、アナログ変調のAM、FM、PM同様に搬送波の振幅、周波数、位相のいずれかを変調させて信号を電波に載せます。さらに、PSKに関しては、一度に2倍の情報を送れる「BPSK」、あるいは4倍の情報を送れる「QPSK」などのように改良したものもあります。

 搬送波に情報を乗せるのが変調ですが、最近の移動体通信などでは、この変調を1次変調、2次変調と2回行なうことがあります。たとえば、1次変調はQPSKで、そして2次変調はOFDMということであれば、QPSKによってデジタルデータを持った複数の搬送波が、直交する周波数でお互いに影響しないような間隔で重ね合わせて、送信されているということになります。


直交する周波数で複数の搬送波が多重して送信されるOFDM。QPSKやQPSKなどによる1次変調、OFDMによる2次変調といった変調方法は実際に高速な無線LAN(IEEE802.11a)などでも使われている

 現在のデジタル通信は、限りある電波を有効に使いながら、障害物や移動しながらの通信によって起こる悪影響(マルチパス、フェージング)へ対処し、信頼性を持たせつつ、かつ高速に通信ができるように、さまざまな原理や技術を駆使して開発され、利用されているのです。


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(大和 哲)
2004/05/12 15:16

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