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第162回:TD-CDMAとは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「TD-CDMA(Time Division Duplex - Code Division Multiple Access:時分割複信による符号分割多元接続)」とは、IMT-2000と呼ばれる第3世代移動通信システム(3G携帯電話)規格の1つです。

 日本で利用されている3G携帯電話といえば、NTTドコモのFOMA、ボーダフォンのVodafone Global Standard(VGS)、それにauのCDMA2000 1x/1xEV-DO(CDMA 1X WIN)ですが、TD-CDMAはこのいずれとも違う通信技術で、現在のところ、この方式を利用した携帯電話は日本ではまだ使われていません。

 しかし、2003年11月28日に総務省主催の「携帯電話等周波数有効利用方策委員会IMT-2000技術調査作業班」が設置され、3G向け周波数として空けられている2.01GHz~2.025GHzという周波数を活用して、国内でのTD-CDMA方式の利用開始に向けて検討が始まりました。

 現在、ADSLでのブロードインターネット接続サービスを事業にしているイー・アクセスがTD-CDMA方式の実験局免許を申請し、2004年1月にも首都圏でこの方式を使った無線通信の実験を開始する予定になっているほか、またソフトバンクも、先月総務省からTD-CDMA方式とCDMA2000方式の実験を行なうための予備免許を取得することを発表しました。このような事情から、TD-CDMAは現在注目されつつある規格となっています。

 ちなみに海外では、南アフリカのSentech社が最大3MbpsでのTD-CDMA方式によるモバイル通信サービスを開始しています。


TD-CDMAの仕組み

 2000年5月にITUで勧告されたIMT-2000の地上無線部分には次の5つの方式があります。

・DS-CDMA
・MC-CDMA
・TD-CDMA
・TDMA Single-Carrier
・FDMA/TDMA


 このうちDS-CDMAがFOMAおよびVGSで使われている技術で、MC-CDMAがCDMA2000で使われている技術です。

 DS-CDMA、MC-CDMA、TD-CDMAともCDMAという多元接続技術(限られた電波や時間を一度に多くの人が利用するために割り振るための方法)を利用しています。

 電話は、通話している2人がどちらも同時に聞き、また話せるようになっています。もし同時に通話できなければ、トランシーバーのようにどちらか一方が話すことになってしまい、自分が話すたびに「どうぞ」と話し終わったことを伝えないと、次の話に移れなくなってしまいます。

 同時に会話できるということは、携帯電話のシステムにおける基地局から携帯電話へのデータの流れとして、端末から基地局への「上り」方向、基地局から端末への「下り」方向がそれぞれある種の複信になっているから実現されていることなのです。しかし、DS-CDMA、MC-CDMA、TD-CDMAの一番大きな違いは、これをどのように実現するかという点にあります。


DS-CDMA、MC-CDMA、TD-CDMAそれぞれの方式における一番大きな違いは複信方式。DS-CDMA、MC-CDMAでは上り下りを別の周波数で分ける「周波数分割」だが、TD-CDMAでは上りのデータに使う時間、下りのデータに使う時間というように時間ごとに分ける「時分割」で実現している

 DS-CDMA、MC-CDMAでは、上り下りはそれぞれ使う周波数を分けることで上下を同時に使えるようにしています。ちなみにDS-CDMA、MC-CDMAのような方式をまとめてFDD-CDMA(Frequency Division Duplex・周波数分割多重CDMA)と呼ぶこともあります。

 一方、TD-CDMAは時分割というやり方になっています。つまり上りのデータが流れる時間と下りのデータが流れる時間を分けているのです。この場合、先述のトランシーバーと同様になってしまいそうですが、時間をミリ秒単位で細かく分けてすばやく切り替えることで、擬似的に上下同時にデータが流れるように見せ、同時会話を成り立たせています。

 TD-CDMAの大元となる技術は、PHSで使われているTDD方式とCDMA技術に着目した慶応義塾大学の中川正雄教授らによって1991年に提案されました。

 その後、3G携帯電話の規格は3GPPという標準化団体によって、標準化が進められました。IMT-2000規格は欧州ETSI、日本のARIBなどの機関が持ち込まれて協議されたのですが、このときARIBでは、当時2Mbpsのデータ伝送実験に成功したNTTドコモのW-CDMA方式を核にし,各企業から提案のあったCDMAベースの4案を折込み、また、同時にTDMA(Time Division Multiple Access)に基づく無線伝送方式を併記した内容で仕様案を提示していました。

 これに欧州ETSI提案のTD-CDMAも加わり、TD-CDMAは現在、正式に第3世代携帯電話システムの規格の1つになっています。


インターネット接続に向いた方式

 技術的なメリットとしては、TD-CDMAは上り下りの制御を時間で分けているため、このタイミングを変えるだけで容易に上り下りの帯域の調整が行なえるということが挙げられます。つまり、電波で送ることのできるデータ容量の上りを絞り、下りに多く配分する、また逆に上りを多く下りを少なくするという加減を簡単に行なえるのです。

 この特性は、インターネットを始めとしたデータ通信を利用する際に、非常に有利に働きます。

 たとえば音声通話やテレビ電話のような使い方では、それぞれの話者が音を流していたり映像を流していたりされることになり、発信されるデータ量がどの時間・タイミングでもほぼ同じになります。

 しかしインターネットにアクセスする場合、携帯電話やパソコンがサーバーに「Webを見たい」「メールを読みたい」をリクエストを出すと、後はひたすらデータを受けるだけになります。つまり、最初のタイミングを除いては、ほぼ下りだけ大量に帯域がほしいような使い方が一般的なのです。

 TD-CDMAならば、下りだけにデータ伝送を多く割り振るのは容易ですから、このような使い方には向いているということが言えるでしょう。


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(大和 哲)
2004/01/06 11:10

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