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第161回:骨伝導 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


骨伝導の仕組み

骨伝導は空気の振動で鼓膜などの伝音系を振動させて音を感じる感音系に伝えるのではなく、頭蓋骨を振動させて感音系に直接働きかけて音を聞かせる技術だ
 骨伝導は、骨を振動させて音を伝える技術です。音は空気が振動することによって伝わります。たとえば、スピーカーから音が鳴った場合、スピーカーの表面が電磁石などの力でぶるぶると振動します。携帯電話のような小さいスピーカーでは、それを目で確認することは難しいかもしれませんが、この振動は周りの空気も振動させて、聞いている人の耳に伝わります。

 普通に人が音を聞く場合には、空気の振動が耳の中にある鼓膜に届き、振動します。この振動で耳の中にある3つの骨、耳小骨と筋肉が、てこの原理でさらに振動を大きくします。耳のさらに奥、内耳と呼ばれる部分には蝸牛と呼ばれる器官があります。このリンパ液のつまった器官の中の細胞が振動を神経に信号として伝え、聴覚神経を通って、脳に達します。この情報を脳が処理して、人は「音が鳴っている」ということを認識できるわけです。

 ちなみに、耳から聴覚神経脳にかけての部分を2つに分けた場合、鼓膜のように音を伝える部分を「伝音系」、音を感じる部分を「感音系」という言い方をすることもあります。骨伝導は空気を振動させて鼓膜経由で感音系に音を伝えるのではなく、その代わりに頭蓋骨を振動させます。感音系は、この振動を鼓膜が震えたときと同様に感じ取るので、人間には空気が振動しているときと同様に音が鳴っていると感じられるのです。

 人間は、耳を伝わる空気の振動で伝わる「気導音」、頭蓋骨を伝わって内耳に到達して聞こえる「骨導音」の両方を聞いています。ただし、鼓膜のような繊細な器官と違って、頭をがっしりまもっている頭蓋骨を振るわせるほどの振動を外部から受けることは普通はありません。そこで、人間は外部から音を聞く場合は、ほとんど気導音のほうしか聞いていません。普通は、自分が声を発しているというような時にだけ気導音、骨導音の両方を聞くことになります。


骨伝導の特長

 骨伝導は、これまで音が聞き取りにくかった人、あるいは聞き取りにくいシチュエーションにおいて、音が聞きやすくなることがあるという特長を持っています。

 聞こえない、または聞こえにくくなる原因はさまざまなケースがありますが、たとえば伝音系である鼓膜や小耳骨に問題があり、聞いている音が小さく聞こえる、またはほとんど聞こえないというような場合でも、そこから先の感音系はまったく問題なく機能していて、感音系に伝われば音を感じられるという人の場合は、骨伝導を利用したスピーカーを利用すると、音を伝える振動が伝音系を通り越して感音系に直接働きかけますので、今まで聞き取りにくかった音が聞きやすくなります。

 また、周りがうるさくて聞きづらい状況でスピーカーからの音を聞きたいときも骨伝導は役に立つでしょう。空気の振動として音を伝えるのですから、周囲に雑音があると耳はその音も拾ってしまいがちです。しかし、骨伝導であれば外部からの音はほとんど拾わないわけですから、クリアに目的の音だけを聞きやすくなるのです。


骨伝導を使った携帯電話が登場

ツーカーの骨伝導ケータイ「TS41」。写真のように端末を閉じた状態で頬の下などに触れると、骨伝導によって音を直接内耳に送り込む。これで、騒音の中でも、通話相手の声を容易に聞き取ることができる
 これまでに、骨伝導を利用した製品は、既にいろいろな分野で使われています。代表的な製品としては、補聴器やヘッドホンがあります。耳にスピーカーが乗るのではなく、耳の前や後ろで頭に接触するようになっており、その部分から骨伝導で音を伝えます。電話機の機能として発売されることもありますし、雑音が多い野外での特殊作業用ヘルメットなどに利用されている場合もあります。

 また逆に、骨伝導マイクという製品も存在します。マイクは口のどんなに近くにおいても、声を空気の振動として捕らえる以上、周りに発生している音も拾ってしまいます。しかし、骨伝導では外部の音はほとんど伝えませんから、本人の喋った声だけを拾いたいというケースに向いているわけです。

 携帯電話では、ツーカーグループが世界で初めて骨伝導機構を搭載した「TS41」を12月下旬以降に順次発売すると発表しています。「TS41」は、通話するときに端末を閉じて、携帯電話を顔のほほの下などに押し付けます。するとスピーカーの代わりに背面のサブディスプレイ上部に位置する「Sonic Speaker」という装置が振動して、骨伝導によって音を伝えるようになっています。

 これによって、難聴のお年寄りや感音系は問題なく機能している聴覚障害者にとって携帯電話での通話がよりスムーズになるでしょう。また、一般のユーザーにとっても、雑踏の中で相手の声が聴き取りやすくなるといったメリットがあるとされています。


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(大和 哲)
2003/12/16 11:45

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