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ソニー CLIE PEG-SJ33で考える日本人のPDA
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


CLIE PEG-SJ33を使ってみて

液晶ディスプレイのカバーが非常に美しい。ただし、美しさを保つためには、頻繁に布などでカバーを拭き続ける必要はあるかもしれない
 ソニーCLIE PEG-SJ33を借りて使っている。筆者の場合、自分で購入したCLIEは、PEG-T600C、PEG-NR60、PEG-NR70Vだけなので、細かな部分の差異を楽しんでいるところだ。基本的にはハードウェアのスペックはPEG-SJ30の後継というよりも、PEG-T650Cと同様でデザインが変更されたといった印象だが、なかなか使い勝手は悪くはない。とはいっても、CLIE PEG-NRシリーズやTシリーズとの互換性は、通信アダプタも含めた周辺機器レベルでは高いが、厚みが増したことなどで前のモデルクレードルを流用したりすることはできない。

 デザイン自体は、やや大ぶりだった昔のソニー製ノートPC、VAIO Qなどを思い出させるデザインだ。半透明の液晶カバーは大変美しいが手垢ですぐに汚れてしまうので、汚れが気になる人はカバー拭きの布は必須だろう。メガネ拭きなどがいいかもしれない。SJ30同様、ボディは少し厚みがあるが手に持った時に気になるほどではない。

 SJ30からの変更点のようだが、RESETスイッチがスタイラスに付属するピンではなく、スタイラスの先で直接可能になっている。日本においては、ピンが職場でもそれほど一般的ではないと思うので、この方が使いやすいだろう。

 筐体はデザインはかっこいいと思うが、金属製ではないので、銀色の部分がややチープな印象を受ける。使っている時にぶつけたりすることで、細かな傷などがつきやすそうなので、筐体を大事に使いたいという人にはケースは必須かもしれない。

 POWERスイッチも引くというか下に下げるタイプなので、おそらく慣れることはできるとは思うがかなり押しにくい。ジョグダイヤルももう少し高さがあった方がいいだろう。BACKボタンはかなり押しにくく感じられる。アプリケーションボタンはへこみの中で出っ張っていてなかなか押しやすいと感じるが、上下ボタンはかなり押しにくい。もっとも半円の一番上と下を押すようにすればいいだけなので、これは慣れることができるかもしれない。

 スタイラスなどは、従来のTシリーズ、NRシリーズなどと同様のようだ。押すとかちっといって止まるのでそれほど抜けやすいということもないだろう。取り出す場合には、スタイラスの頭の部分を爪などで引っかけて引き上げる必要がある。

 機能的にも、CPUがDragonball Super VZ 66MHzになり、動作自体もきびきびとしている(ような気がする)。ただし、OSは、日本語版Palm OS Ver.4.1でSJ30やPEG-T650などと同様だ。また、メモリも今時といってはなんだが、16MBのRAMと8MBのフラッシュROM(ユーザーは使用できない)とSJ30などと同様やや物足りなさを感じさせる。SJシリーズとなっているが、どちらかというと形状を除いたハードウェアのスペックなどはオーディオ機能を搭載していることも含めてPEG-T650Cと一緒ということかもしれない。


カバーを上げたところ。カバー自体は2段階に上がるが勢いが足りないので、やや面倒な印象を受ける。邪魔に感じるユーザーもいるかもしれない カバーを取り外したところ。カバーを取り外すには少しコツのようなものがいる。マニュアルを読んでから行った方がいいだろう。はめる方はもう少し難しいが家電の範囲内の難しさといった印象

液晶は色味も自然で悪くはない。半透過型のため、明るいところでも暗いところでも見やすいが、鮮明さでは透過型TFT液晶に一歩譲る印象だ その威力は快晴の下で発揮される。色味は少し薄くなるが見やすく比較的自然な発色が可能だ

 全体的には、実際の使い勝手よりもデザインを優先したような印象も少々ある。十分実用の範囲だが、初めてPalm OS搭載機を使うという人はともかく、以前に他のPalm OS搭載機を使ったことがあるというユーザーは、購入は実機を試してみてからの方がいいかもしれない。筆者は、慣れることができる範囲内だが、人によっては気になるかもしれない。

 なお、カバーも取り外しが可能だ。外すときは上に向けて片方を引っ張る感じだ。慣れないうちはマニュアルを確認しながらやった方がいいだろう。装着する場合は、取り付け部分がへこむので片方を入れてもう片方をやや強引に入れる感じになる。壊さないように注意深くやる必要があるようだ。

 本体のスピーカーは背面にあるが、PDAとしてはかなり大きな音が出るし、また音質もFM音源搭載ということもあってなかなかだと思う。イヤホンが付属してくるが、音量の調整しかできないようだ。音質は一般的だと思う。

 PEG-T650Cなどと同様にATRAC3とMP3の音楽データを再生できる。MP3の再生レートも256bpsまでカバーしているので実用上問題はないだろう。連続再生時間はカタログスペックでは10時間可能ということだが、実際試してみたところ、ディスプレイを消灯してしまえば7時間以上は可能なようだ。十分実用的といえる長さだろう。他機種に比べて全体的にバッテリー駆動時間は延びているようだ。ただし、残念なことにボイスメモ機能などはない。

 ディスプレイは320×320ドットの半透過型TFT液晶を採用しており、暗いところでも明るいところでも見やすい。発色はほんの少しねむい印象もあるが、PEG-T600Cなどのように赤味が薄いといったこともなく自然で嫌みがない。PG Pocketによる画像表示もストレスを感じない。ただし、たとえば、メモリースティックに入った画像を見ようとすると、サムネイルを描画はそれなりに高速だが、とくにサムネイルを保存するわけではないようなので、画面が変わるたびに描き換えられ表示に時間がかかる。そのため、デジタルカメラの画像をそのまま見るといった用途では、ややイライラさせられるかもしれない。

 試し程度だが、小型の外付けタイプのキーボード「PEGA-KB20」を取り付けて使ってみたが、問題なく使用可能だった。なかなか高速でストレスのない入力が可能だ。デザイン的にはかっこわるくなるが、十分実用的だといえる。ただし、PEG-SJ33のスタイラス用の穴は、向かって右側なので、スタイラスにストラップをつけてぶら下げるといった使い方は向かなくなった。


筐体の裏面もソニーらしくよくデザインされている。リセットの穴がSJ30同様大型で、スタイラスをそのまま利用できるのは好感が持てる。スピーカーは背面にあるが、音も大きく音質もPDAとしてはなかなかいい ジョグダイヤル、バックボタン、電源スイッチは向かって左側面にある。やや押しにくかったり使いにくく感じるが、たぶん慣れることが可能な人が多いと思う

電源やPCとの接続はSJ30同様USBケーブル用のアダプタを介して行う。クレードルがないのは、Palmデバイスの場合はかなり不便に感じられる。Treo 90などとは異なって、同期用のボタンが付属していないからだろう 小型のキーボードも十分実用的に使えるが、デザインのバランスや持ち運びはあまりいいとはいえない

ソフトウェアは新味は感じないが実用的

 ソフトウェアも新味はあまり感じないが、実用的で楽しいものが多い。ただし、グラフィックソフトのCLIE Paint、地図ソフトのNavin'You Pocket、e-ブックビューワのPook、WebブラウザであるXiino、メーラのCLIE Mail、PCのWordとExcel互換のDocuments to Go Standard Edition、世界時計のWorld Alarm Clock、番組表をWebからダウンロードできるTVscape、英和・和英辞書などがCD-ROMで配布されているので、あまり多くはないRAMにインストールする必要がある。いずれもCLIEでは定番のソフトなので、可能であればROMに搭載してほしかったところだ。

 標準では、一般的なPalm OS搭載機やCLIEのソフトウェアの他に、ゲームソフトのBejewled!、スキンを変えられるAudioPlayer、動画とサウンドを楽しめるKinomaなどが付属している。Kinomaは見慣れててしまった人も多いかもしれないが、Palm OS搭載機でこんなに動画が動くのかと非Palmユーザーを驚かすにはなかなか楽しいソフトかもしれない。


標準のPIMでは機能不足なため、フリーウェアのKsDatebookをインストールしてみた。月表示でも予定の文字表示が可能で便利 KsDatebookの週表示。デフォルトの週表示では帯だけの表示なため、こちらの方が使い勝手はいいだろう

動画と音声を表示可能なKinomaもプリインストールされている。楽しいソフトウェアだ PG Pocketも使い勝手はなかなかの画像ビューワだが、サムネイルを保存しないため、多数画像がある場合の使い勝手は落ちる

結論にかえて――PDAを考える

 PEG-SJ33について、デザイン優先だと揶揄する人もいる。確かに、ジョグダイヤルやバックボタン、上下ボタンがやや押しにくい気もするが、PEG-T600などでのアプリケーションボタンの押しにくさほどではないと思う。ソニーがどういったユーザーを想定しているかわからないが、SJ30よりCPUや音楽の生成機能などは機能向上しているものの、ソフトウェアや使用した印象自体はさほど変わってはいない。ハードウェアスペック的にはPEG-T650と同等なので、正直なところデザインを除いた新味は感じない。

 逆にPDA自体がそういった一般ユーザーを目指しているのだとも思う。ウォークマンやMDウォークマンがさまざまな機能と同時にデザインでも選ばれるように、PDAも機能だけでなく、デザインが従来より重視される時代が来つつあるのかもしれない。そうした点からみると、今少しバリエーションが欲しい気がする。個人的には、バーチャルGraffiti(今後はGraffitiではなくなってしまうのかもしれないが)で320×480ドットの小型のマシンが欲しい。

 PEG-SJ33は、シンプルなPalm OS搭載機で音楽機能付きの製品がいいという人にはいいんじゃないだろうか。使い勝手もこなれていて、Palm OS 5搭載モデルを使用する時のような、まだまだこれからといった期待感はないかわりに、ソフトウェアの互換性に対する心配もない。Palm OS搭載PDA入門には適したモデルではないかと思う。


・ 「CLIE PEG-SJ33」製品情報(ソニー)
  http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-SJ33/index.html
・ PDA Style(SonyStyle内)
  http://www.jp.sonystyle.com/peg/


(山田道夫)
2003/02/14 20:26

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