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SL-C700ファーストインプレッション
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


 SL-C700の試作機を借りることができたのでご紹介したい。ただし今回は試作機であること、利用時間が短く、PCとの同期なども試せていない。短時間の使用に基づくファーストインプレッションである。以下の情報はすべて試作機の物であるため、実機では異なっている場合があることをまずお断りしておく。また、筆者の勘違いの可能性もないとはいえない。そういった点を割り引いて読んでいただければと思う。


ハードウェアなど

ザウルス SL-C700
店頭価格は59,800円前後だが、発売から品薄で入手が難しい状態が続いている
 液晶ディスプレイは非常に美しく、写真画像を表示させると従来のPDAとは一線を画した高解像度液晶を堪能できる。SDカードスロットとCFカードスロットを搭載しており、そのまま写真データをカードごと入れれば写真画像の閲覧ができるため、デジタルカメラなどのブラウザとしても使い勝手が良さそうだ。

 ただし、ディスプレイの角度は安定感のある角度が決まっている。ノートPCのように液晶部を立てて使用することもできるが、最も安定感があるのは目一杯液晶を後ろ側に倒し、キーボード部と水平に近いくらいの角度だ。実際にはこの状態で使用することが多くなると思われる。縦・横の画面が自動で切り替わるのもSL-C700の特長のひとつだが、表示が切り替えるまでには、何秒もというほどではないが、ひと呼吸待つ必要がある。

 晴天下、外へ運び出し、直射日光の下で液晶を比較してみた。最近流行の半透過型(微透過型)液晶ではなく、透過型のTFT液晶のため、直射日光の下では見えにくい場合もあるかもと思ったからだ。比較のために、半透過型TFT液晶を搭載したクリエPEG-NR70VとiPAQ Pocket PC H3850も並べてみた。完全に直射日光があたった状態だと、さすがに透過型液晶のSL-C700は少しきびしいが、それでも見えないことはない。写真よりも肉眼の方がより見えやすいと思う。また、少しでも影に入ればもっとも美しく見やすい(ただし、最大輝度時)。

 日陰だったらはっきりとわかるくらいSL-C700のディスプレイが美しい。こうなってくると、直射日光下でも日陰でも屋内でも美しい半透過型のTFT液晶ディスプレイを搭載したiPAQ Pocket PC H3900シリーズと比べたかったところだ。

 本体の奥側にあるPowerボタンは小さく奥まったところにあり、少々押しにくい。アプリケーションボタンを押せば電源が入るので、あまり気にする必要はないのかもしれないという気もするが、Powerボタンで電源を切る必要があるので、やはり押しやすいに越したことはない。

 キーボードは、筆者の好みに合うもので気に入っている。FキーとJキーの手前にホームキーを示すかすかな突起もある。ただし、英字キーと数字キーしかないため、ややキーボード全体が左側しかない印象がある。親指で入力するのには大変適したキーボードだと思うが、筆者はタッチタイピングは無理だろう。ただし、インプットスタイルでは、液晶右側のアイコンを間違ってタップしてしまうことが多く、やや煩雑に感じられた。ビュースタイルの場合は便利なのだが。

 ただし、ビュースタイルの場合は、少し裏面が滑りやすい気がしないでもない。落としてしまうほどではないが、つるつるしているので緊張を強いられる気がする。また、底面にCFカードスロットが目立つほどあり、両手で持った場合、多少左右のバランスが悪い気がする。

 また、ビュースタイルとインプットスタイルの切替は、液晶を手前に倒した後で回転させるわけだが考えているよりも力がいる気がする。逆に簡単に揺れたりしない配慮かもしれない。


箱は本体から見てわかるようにかなり小さい インプットスタイルでの入力は立っている場合に親指を使っての入力が多いものと思われる。キートップの感覚が空き、クリック感もありなかなか入力しやすいキーボードだ

ビュースタイルは、本来片手でWebサイトを見たり、テキストを読んだりする時に利用すると便利だろう インプットスタイルではかなり開いた状態でないと液晶はかちっと止まらない。高級感

640×480ドットのCGシリコン液晶は非常に美しくまた明るくすることができる。写真のブラウズやWebブラウズなど見る用途には非常に適している 筐体の大きさの比較。左よりSL-C700、クリエPEG-NR70V、iPAQ Pocket PC H3850。大きさはさほどではないが閉じた時には少し厚みがある

液晶部を開いて並べてみた。iPAQ Pocket PCにはキーボードを取り付けてある。それぞれかなり特徴的であることがわかる 液晶を閉じた外観は超小型のノートPCを思わせる。デザインも筐体の手触りもなかなかいい

晴天下の液晶の見え方。左からiPAQ Pocket PC H3850、SL-C700、PEG-NR70V。半透過型の他2機種には負けるが、直射日光下でも見えないことはない。こういった状況で使う機会はかなり少ないと思えるし、影に入った場合はSL-C700が見やすい 筐体の奥側。左からストラップ穴、AC電源用コネクタ、SDカードスロット、IrDA、ジョグ風ダイヤル、Cancelボタン、OKボタン、Powerボタン。開いた状態だとPowerボタンは少し押しにくい

キーボードは親指で入力しやすい。数字キーが独立しているのは意外に嬉しい配慮だ。日常的によく利用する記号もFnキーなどとの併用で簡単に入力できる。Calenderなどのボタンはアプリケーションなどの割り付けを変更できる 筐体の裏面はCFカードの出っ張りが目立つ。両手で持った場合は、高さが違うので最初は違和感を感じる。割と筆者はすぐに慣れてしまったが。取り外し式のバッテリはMI-E21用と同じものを利用する

DDIポケットのAirH"端末AH-N401Cを使いprinでWebブラウズしてみたが非常に快適に可能だった。表示速度もPCと比較すると遅いが、まずまず実用的に感じられた。たまにメモリ不足で画像を表示できないときがあったが、再度読み込めば表示可能だった ビュースタイルでWebブラウズもなかなか快適だ。ジョグでウィンドウの情報が上下もする。CancelボタンやOKボタンも片手で使える

システムやソフトウェアなど

 借りて、まず、最初に行なったことはネットワークの設定だ。外出先から帰りがてら、AirH" AH-N401Cの設定を行なった。ネットワーク設定はよくできていて、PHSカードの種類やプロバイダーを選択していけば、後はアドレスとパスワードを入れる程度で簡単だ。利用しているプロバイダーが選択肢にない場合は設定する項目が増えることになるが、主要プロバイダーについては、設定アシストを利用すれば電話番号からDNSまですでに設定されている。

 Webブラウズは、PDAとしてはかなり快適な方だろう。VGA(640×480ドット)表示が可能で表示エリアが広いことが大きいが、それなりに高速だとも思う。もちろん、PCと比較しての話ではなく、PDAとしてはという条件は付く。画像については比較的ゆっくりと表示されるような気がする。一度画面から消えると、再び表示する場合は再度描き換えているようだ。

 ただし、総合的に、細かな切り替えや動作については、かなりゆったりとした印象を与える。Palmなどを使い慣れて、SL-C700をPDAとして使おうとすると不満に感じる人もいるかもしれない。

 全体的には非常に気に入っている。やはり液晶の美しさは素晴らしいものがある。キーボードも個人的には好みだ。キーボードを見ないで入力することは不可能ではないだろうが、たぶん筆者の場合はそこまで練習はしないと思う。筐体はそれなりに高級感があってなかなかいい感じだ。


イメージノートではサムネイル表示とリストでの表示が可能だ。サムネイル表示の場合は、デジタルカメラのデータなどの場合、初回はかなり表示に時間がかかるがこれはPCでも時間がかかることなので仕方のないところだろう。2回目以降は高速で表示が可能だ イメージノートでは、非常に美しい写真の表示が可能だ。全画面表示にすることもできる

WebブラウザのNetFrontではそれなりの速度でかなり広い領域の表示が可能だ。メモリに注意していれば特に不満は感じない ビュースタイルで見るというのもなかなかいい。画面幅に合わせた表示も可能だ

細かな疑問点と不満?

 フォントは大変美しいのだがどうもVGAというサイズには合っていない気がする。標準フォントでは明らかに小さすぎると思う。これだけ小さな液晶でVGAという解像度は想定していなかったということだろうか。シャープなら、きっと最適なフォントを次世代機種では用意してくれるのではないかと期待している。

 イメージノートは画像の数が増えると表示にかなり時間がかかるようになる。もっとも、これは一概にSL-C700とイメージノートが悪いとは言えないと思う。より高速なCPUを持ち、よりたくさんのメモリとストレージを搭載したPCで画像表示させる場合でも、サムネイルを作る初回は大体どのソフトウェアでもゆっくりなものだからだ。隠しファイルかなにかを残しておくので、次回表示は高速に感じられるだけだと思う。SL-C700でも2回目以降は非常に高速に表示されるようになる。

 日本語は、一度に入力できるのは40文字までだ。短く変換する癖がついている筆者の場合はこれで全く問題はないが、PCでの文章一括変換に慣れた最近のユーザーには、40文字という制限は短いと感じられるかもしれない。

 細かな不満点としては、スケジュールの月表示で前月や翌月の予定が表示されない点は残念だ。つまり、12月を月表示していると、11月30日や1月1日に予定があっても表示されないのだ。フリーウェアやシェアウェアの置き換えソフトウェアが登場してくるかもしれないが、ザウルスショットにすぐ対応できるとはあまり思えないので、筆者は標準を使い続けることになると思う。

 メールが自動折り返ししない点も少し気になった。これは、旧型ザウルスMIシリーズのメーラーで気に入っていた点なので残念なところだ。つまり改行コード通りに表示されてしまうのだが、MIシリーズでは文章を判断して読みやすくしてくれていた。なお、メーラーに記載されたURLをタップしてWebブラウザを起動させるためには、メニューの「表示」「テキスト表示」を外しておく必要がある。


テキストの大きさは5段階から選択できる。どのサイズのフォントも読みやすい 最大フォントの表示。標準とやや大きいフォントの中間くらいのフォントも欲しい気がする

カレンダーはディスプレイの解像度が高いため表示される情報量も多い。月表示では実際の予定をかなり細かくテキストで確認することができる メーラーはマルチアカウントに対応しているが、MIシリーズのようなきめ細かさはまだない。改行を自動修正したり、URLをタップすればWebブラウザを起動するなどの対応がほしいところ

結論にかえて

 細かな不満点をいろいろ書いているが、これらは逆にこういった細部が不満だという程度で製品自体は非常に気に入ったという結果でもある。なんといっても液晶ディスプレイの美しさ、筐体の小ささ、意外に高速なWebブラウズ、ターンスタイルでのWebやテキストの見やすさなどを前提とした上での話だ。筆者がどれだけ気に入ったかというと、すでに、発売日に購入するのは当然として、SL-C700発売後のバッテリーの品薄を見越して、MI-E21用のバッテリーをすでに購入してしまったほど気に入っている。

 今回は試せなかったPCとの同期やザウルスショットなど細かな使い勝手などについては、いずれ機会があれば改めてご紹介したい。

【追記】
 その後、実際に購入して48時間程度利用している。バッテリー駆動時間はネットワーク通信中でも意外に持つかもしれないということがわかった。私鉄、新幹線を乗り継いでいる最中にSL-C700をAirH" AH-N401Cを利用して使い続けたのだが、デフォルトの省電力設定でおおよそ連続2時間半利用することができた。通信ができなくなってからさらに20分以上、テキスト入力などは可能だった。シャープが公表している通信時のバッテリー駆動時間より実際にはかなり持つようだ(シャープで計測に利用したPHS通信カードと筆者の利用しているPHS通信カードの違いによるものかもしれない)。

 また、筆者はまだ実際には試していないが、エナックスの「PowerBattery Half」に5V DC/DCコンバータを利用することで、外部バッテリーも利用可能だそうだ。MI-E21用だったSL-C700用のバッテリを余分に持つのもいいが、バッテリーはかなり大きいが鞄に入れて長いケーブルを利用してこういったバッテリーを持つのも手かもしれない。


・ ザウルス SL-C700製品情報
  http://www.sharp.co.jp/products/slc700/index.html


(山田道夫)
2002/12/25 20:28

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