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【CEATEC JAPAN 2008】
KDDI伊藤氏、FMBC戦略を語る

KDDIの伊藤氏
 IT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2008」のキーノートスピーチセッションで、KDDIの代表取締役執行役員副社長の伊藤泰彦氏は、「KDDIのFMBC戦略」と題した講演を行った。

 KDDIでは、一般的なFMC(Fixed Mobile Convergence)に放送のB(Broadcast)を加え、FMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)として通信の今後の進化を定義づけている。そのFMBCを講演のテーマとした伊藤氏は、まずは固定通信と放送の現状について紹介する。


固定通信市場の変化

増える動画トラフィック
 伊藤氏は日本の固定通信の現状について、ADSLが純減となり、FTTHが順調に加入者数を増やす一方で、「CATVは依然として確固たる力を持っている。アメリカの動きも加えると面白い」と紹介する。そのネットワーク上で通信されるトラフィックについては、「去年のCEATECではP2Pトラフィックがかなりの率を占めていると紹介したが、ここ1年で様変わりをして、ニコニコ動画やYouTubeといった動画系通信の利用率が増加した。この動きは固定通信だけでなくケータイにも広がっている。覚悟していないといけない」と紹介する。

 一方で、「FTTHがどんどん増えているが、果たしてそれが有効活用されているのだろうか。素晴らしい映像・画像を届けよう、というのがFTTHの目的だったが、どうにもそこに到達できていない」との見解も明らかにした。


放送サービス市場の変化

テレビ放送の日米比較
 放送については、新しい周波数に向けMediaFLOを準備していることを紹介しつつ、「一方で放送コンテンツ流通に問題がある」と指摘する。法律的には、IPTVもCATVと同様条件で送信できるが、実際にはいろいろな許可の問題もあって困難が多いことを指摘しながらも、「進めていかなくてはいけない」との考えを語った。

 伊藤氏はアメリカの状況については、「CATVサービスは相当な進化をみせている。そこにAT&Tなどの通信事業者も参入し、かなりのバトルになっていて、さらに面白いサービスも登場している」とし、見逃した番組をオンデマンド配信するといったサービスの実例を紹介する。

 また一方で、積極的に有料テレビサービスを使っているユーザーが、日本では26%なのに対し、アメリカでは75%に達していることを紹介し、「これは面白いというか困った状況。サービスの普及やコンテンツの問題もあるが、それらをどうするかが課題」と語る。

 こうした状況を踏まえ、「これでいいのだろうか、と感じている。もっと活発に動かないと、日本のビデオは前に進まないと危惧している」との考えを述べた。


ケータイにおける端末機能の進化

移動通信市場の変化
 移動通信の状況については、伊藤氏は「最近、激しく動いている」と分析する。まず市場については、「2007年12月に1億契約を突破し、さらに販売方法も変わったことで、買い換え需要が鈍化した。昨年比で2~3割減になる。ここはベンダーを含めて大きなインパクトになる」と指摘する。

 続いて新しいブロードバンド無線が登場することも挙げ、その一例としてモバイルWiMAXを挙げる。伊藤氏は「幸い、KDDIは3分の1の出資だが、WiMAXに参入できる。WiMAXでは、パソコンの組み込みやカメラへの内蔵なども考えられる。ビジネスもインセンティブモデルでやるか、あるいはMVNOにするか、いろいろなことを考えていて、いままでのケータイとは違うサービスになる。来年夏には本格サービスを考えているが、われわれも期待している」と語った。

 さらに最近の状況として、「革新的な端末が増えている」とも指摘する。伊藤氏はiPhoneについて、「売れ行きが鈍っているなどと報道されているが、端末そのもの、操作性を考えると、ひとつのエポックメーキングだと考えている。iPhoneが今後の端末に影響を与える」との考えを明らかにした。さらにAndroidについては、「端末のOS部分をグーグルが無料で提供し、みんなで作ろうという。新しい動きなので、この新しいプラットフォームを使いたいなぁ、と考えている」と語り、さらに「スマートフォンを含め、端末がどうあるべきかを考えるべき時代が来ているのではないか。革新的な端末や素晴らしいと評価される端末が重要。日本のケータイはガラパゴスなどと言われているが、グローバル展開するにあたり、素晴らしい端末を作り続けるべきだ。低価格端末では競争力を失ってしまう。高機能端末を作り、世界と競争するべきだ」との持論を述べた。


パーソナルエージェントの概念

プラグイン化されるエージェント
 続いて伊藤氏は、「パーソナルエージェント」の概念を紹介する。伊藤氏は、「ケータイは、最初はただの電話機で、いまは個人に対する情報の出入り口、パーソナルゲートウェイとなった。今後はそれをさらに進め、お客さまに代わって複合的な処理を行い、提案するようなパーソナルエージェントになる」と語る。さらに「高機能な端末だけではなく低機能な端末も、というニーズはあるが、日本の特徴を活かして競争するためにも、わたしたちは高機能で世界をリードしていきたい」との考えを示した。

 伊藤氏は、パーソナルエージェントの例としてトヨタの車載通信機を使ったコンシェルジュサービスを紹介し、「これをケータイに持ち込む。一歩進んだコンシェルジュ的なサービスを、いま開発してい」と語った。

 その具体的な端末としては、さまざまな機能をプラグイン的に追加できるようにすることを考えていると語る。その上で、「さらに操作性も良くする。さっきのiPhoneではないが、このUIが重要。わたしたちはラストワンインチと呼んでいるが、ここを良くしないと勝負にならない」との考えを示した。


例として挙げられたトヨタのオペレーターサービス ラストワンインチ(UI)の例

 また、FMBCに向けた具体的なKDDIとしての取り組みとしては、発売予定のHTC製スマートフォンやau BOX、研究中の自由視点映像システムや高速の遠赤外線通信、さらにMediaFLOやワンセグを応用したエリア放送や通称「束セグ」、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX事業などを紹介した。


スマートフォン au BOX

自由視点映像技術 高速赤外線通信

MediaFLO ワンセグのエリア放送

マルチワンセグ(通称「束セグ」) モバイルWiMAX

「日本もβ版に慣れないといけない」

講演のまとめ
 伊藤氏は、講演最後のまとめに時間を多めにとり、ここまでの講演内容のまとめに加え、「β版社会への順応」という持論を語る。

 β版社会、というものについて伊藤氏は、「ソフトウェアなどによくβ版(開発途中の公開バージョン)がある。ユーザーとしてはイヤという人もいるが、逆にこれが大きなビジネスのタネになると考えないといけない」と語る。

 伊藤氏は、グーグルをその例として挙げる。「グーグルは検索エンジンを作り、タダで使えるようにした。それも最初はβ版から始まった。その上でグーグルは広告モデルを作り、儲かるようにした。グーグルマップも同様。ストリートビューは最たるもの。街の景色が見られるというもので、これは『あったらいいな』と誰もが思うけど、あまりに大変で、実際に作ろうとは誰も思わない。しかしグーグルはこれを軽々とやってしまった。最初はβ版として提供し、試行錯誤しながら作っている。しかし日本の会社には、こういったことはできない。会社でやろうとすると、必ず『ダメ』と言われてしまう。日本では、相当な完成度を最初から求められる」と指摘する。

 その上で、「日本もβ版をある程度、許容しないと、米国や世界の動きについていけない。β版を改善しながら新しいビジネスを作る、ということに順応しないと、世界に遅れてしまう。こうしたβ版という考えをもっと検討し、世界と競争するべき」との持論を述べ、講演を締めくくった。



URL
  KDDI
  http://www.kddi.com/

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(白根 雅彦)
2008/10/01 19:18

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