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【CEATEC JAPAN 2008】
ドコモ辻村氏、「インターネットのケータイ化」を語る

辻村 清行氏

NTTドコモの代表取締役副社長の辻村 清行氏
 IT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2008」のキーノートスピーチセッションで、NTTドコモの代表取締役副社長の辻村 清行氏は、「ケータイの今とこれから」と題した講演を行った。


加入者数推移

今後の方向性の3つの軸
 まず冒頭で辻村氏は、世界と日本におけるケータイ加入者数の推移グラフを示し、「量的には日本のケータイ市場は成熟期にあるが、質的にはこれからもますます変わってくる。どう変わるかをみなさまと考えていきたい」と語り、これからの市場の方向性を示した。

 ケータイの今後の進化について辻村氏は、「一言でいうとインターネットのケータイ化」と表現する。具体的には、「1999年に始まったiモードの当時のテーマは、ケータイをいかにインターネットにするか、ということだった。しかしこれからは、パソコン中心だったインターネットに、ケータイの特徴が取り込まれることで、インターネット自身がもう一段進化する」との持論を述べた。そして進化の方向性として、「ブロードバンド化」と「リアルとサイバーの融合」、「グローバル化」の3つの軸を示す。

 まずブロードバンド化については、固定通信と移動体通信(ケータイ)の通信速度の変化スピードを比較するグラフを示し、「同じ速度でみると、移動通信は5年くらい固定通信に遅れている。同じ年で比較すると、固定通信は移動通信より10倍くらい速い」と説明する。さらに具体的な今後の展開として、「W-CDMAを2001年や2002年から導入し、いまはHSDPAで3.6Mbps~7.2Mbpsにまで上げた。来年にはHSPAを導入し、アップリンクのスピードも上げたい。次に2010年度にLTEを入れたいと考えている。そのとき、手のひらサイズのコンピュータが、FTTHと同じくらいの速度になる」と語った。さらにその後については、「次は4Gが控えているが、これは周波数も方式も3Gとは異なり、導入はかなり先になるだろうと考えている。2015年度以降ではないか。しばらくのあいだは、3Gの範疇で、HSPAやLTEが主流になると考えている」との見通しを示した。


世界のLTE動向
 世界でのLTEの展開についても、「W-CDMAを使っている欧州はすべてLTEになるだろう。アメリカはW-CDMAを使っているAT&Tだけでなく、CDMA2000を使っているベライゾンもLTEに移ると言っている。日本では、W-CDMAを使っているドコモとソフトバンクはLTEに移る。KDDIはCDMA2000だが、新聞報道ベースではLTEに移るという計画があると聞いている」と紹介し、LTEが広まっていることをアピールした。

 これを踏まえた上で、「世界のほとんどがLTEに向かい、LTEが主流になると考えている。その中で、わたしたちは先頭集団でいたいと考えている。あまり早く行きすぎるのもいけないので、2010年度か2011年度を目安に、世界に先駆けて導入できるのではないかと考えている」と語った。


iモードコンテンツの進化

ブロードバンドコンテンツの例
 通信速度の向上で何が変わるかについて辻村氏は、モノクロ静止画だったコンテンツが通信速度の向上に伴いカラー動画へと進化してきたiモードの歴史を振り返る。この上で、「LTEが2010年以降に入ってくると、さらに高精細かつ長時間の動画が見られると考えている」と述べた。

 また辻村氏は、オンデマンドでコンテンツをダウンロードするケース以外にも言及する。「現状のHSDPAではダウンロードが中心だが、HSPAでアップリンク速度が向上すると、何かのイベントに遭遇した人が、その場でケータイのカメラで動画を撮影し、その場で動画投稿サイトにアップロードすることも考えられる。多数の人が参加するというのがインターネットのパワー。パソコンになかったリアルタイム性をもたらすというのも、HSPAの重要な要素」と持論を述べた。


シンクライアント化するケータイ

フェムト基地局
 さらにLTEでは、「LTEでは速度が上がるだけではなく、通信の遅延が小さくなる。たとえばこれまで、ケータイはたくさんのメモリとCPUを使っていたが、これをかなりの部分、サーバー側に処理してもらい、ケータイ側はIOに特化したチューニングができる。シンクライアントになって、サーバーに重要な情報を預けることができる。LTEにより、移動機とサーバーの負荷バランスが変化する。進化の方向がいままでと若干変わるのではないか」との見方を示した。

 ネットワーク進化の一例として、辻村氏はフェムトセルについても、「すでに屋内などでフェムト基地局を置いている。しかし早晩、お客さまの加入する固定網を使ったフェムトセルも導入される。こうしたフェムトセルもこれからの重要な基盤技術になる」と紹介した。


リアルとサイバー融合

 続いて辻村氏は、ケータイの進化の方向性として「リアルとサイバー融合」に話題を移し、その一例としておサイフケータイのモバイルSuicaなどを紹介する。その中で、エールフランスが搭乗手続きにバーコードを導入するという例を紹介し、「海外でFeliCaが入るかNFCになるかわからないが、ケータイをチケットなどで使うのは、日本だけの動きではなく、世界の動きになると考えている」と語った。


ドコモとマクドナルドの提携

かざすクーポン
 おサイフケータイの一例として、マクドナルドの事例も紹介する。マクドナルドは日本全国に約3800の店舗を持ち、年間来客数がのべ約14億人に達することを紹介し、「14億人が来客しても、誰がいつ何を買っているかがわからない。これまではクーポンで客を呼び込んで情報を得ていたが、ケータイで何かできないか、ということで、2007年にドコモとマクドナルドでジョイントベンチャーを設立した」と語った。

 具体的なマクドナルドの取り組みとしては、街頭や新聞折り込みで配っていた紙のクーポン、ケータイの画面を見せるタイプのクーポンを紹介し、「これまでのクーポンだと、お客さまの細かい情報がわからない。同じクーポンを使い回せてしまうので、大胆な割引もできない。そこで、かざすクーポンが登場した。事前にアプリ上でクーポンを選択しておくと、お店に行ってリーダーライターにかざすだけで、すぐにレジがクーポンからオーダーを認識する。支払いもそのままiDでできる」とかざすクーポンについて紹介する。

 このかざすクーポンのメリットについては、「紙の時代にはクーポンの内容を企画してから配るまで、1カ月かかったという。ケータイのクーポンなら1週間になった。そうなると、土日の売り上げを見て、次の週のクーポンをどうするかを決められるようになった」と紹介する。さらに「かざすクーポンでは単純にかざすだけなので、店員の手間や処理時間が省ける。さらに会員番号付きの購入データ履歴のマーケティングデータが得られる。このデータをどう生かしていくかが、今後のマクドナルドとドコモの課題」と語った。


 辻村氏はこれまでのケータイについて、コミュニケーションから情報アクセス、生活支援に進化してきたことを示し、「次は行動支援、エージェントをやりたい」と語る。その具体例として、「たとえば通勤経路をエージェントに示しておくと、運行情報を自動的にケータイが教えてくれる。こういった秘書代わりにケータイを使い、リアルの行動に合わせてサポートしてくれるエージェント機能、これを早晩、提供したいと考えている」と語り、こうしたケータイならではのリアルとサイバーの連携機能が、インターネット全体を進化させていくとの持論を述べた。


ケータイの進化 モバイルによりもたらされる「Web3.0」

プラットフォームが重要になるグローバル化

 最後に辻村氏は、ケータイのグローバル化について、国際ローミングが一般的になっている状況で、「端末がグローバルを視野に入れてどう変わっていくか」という課題を提起する。


OSの構造
 まずケータイのプラットフォームソフトウェアについて、図を示しながら、グローバルな共通仕様とオペレーターの独自仕様を切り分けつつも組み合わせた構造になると紹介する。そして「こうした工夫により、国内端末が海外に出やすく、逆に海外メーカーも国内に入りやすくなる。この新しいソフトウェア構造を、来年後半くらいから投入したい」と語った。


端末プラットフォームへの参加
 ソフトウェアのプラットフォームについては、SymbianやLiMo、Androidの3つを挙げ、「パソコンのWindowsのようなオープンなOSがケータイにも普及する。これら3つにWindows Mobileも入れて4つあるとも言える。どれが主流になるかわからないが、どれが発展してくれてもかまわないので、それぞれの端末を投入したい」との方針を語った。



URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/

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(白根 雅彦)
2008/10/01 19:05

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